永久に渡る風
◇理想の世界
若草萌える丘陵に僕と君がいる。
君の足首にすがる羽虫が飛び去って、
強い風が吹いた。
風の行方を追って僕たちは振り向く。
突然、世界は色彩を失った。
灰色の大地と灰色の空、朽ち果てた木々が点々と立っている。
僕はそれらをあるがままに受け止める。
君はそれが当然のように泰然としている。
どちらともなく、僕と君は歩き出す。
世界に影響せず、影響されず、
不変の二人として、永久に渡る風として。
◇穢された理想の世界
地平線まで続く赤茶けた大地を歩いていた。
僕は左に、君は右に。
隣り合って、歩いていた。
砂粒を孕んだ突風が君だけを貫いた。
君の体の表面が削り取られ、君は大地へ倒れ込んだ。
僕がそれを目で確認し、一歩前進する時間に、君は白骨となり、風景と同化した。
僕は一人きりで歩き出す。
何時の間に、隣を歩く君が居た。
僕はそれらをあるがままに受け止める。
不変の二人として、永久に渡る風として。
役割は不変で、配役は誰でも良く、
終わるまで続き続ける、永久に渡る風。
◇終わる理想の世界
隣を行く君が居なくなって、
僕一人だけがどこまでも歩いていた。
草を除いて出来た、二人分に拓けた道を、
僕一人だけがいつまでも歩いていた。
飛び超えられるほどの小川に、木橋が架かっている。
渡り終えると、小さな木看板。字は読めない。
歩いて程なくすると、街があった。
道行く人々は穏やかな表情をしている。
そこに争いは無かった。
人を蔑む言葉が無かった。
人々は負の感情を持たなかった。
自分とそして自分以外の人に優しさで持って接した。
幾つかの優しさが交錯した時、労りと理解と言葉で、
道を探した。
理想の世界だった。
長き旅路の果てにたどり着いた、結末。
穢れた僕はこの世界に生きられない。
けれど僕は満たされている。
最上の世界を目にできた。
こんな世界があることを確信できた。
僕はせめて邪魔にならぬよう、道を外れ、
木に背を凭れ、終えた。
風は止み、世界は停滞した。