19 木葉と陽花②
「あっ…へ、へぇ〜そうなんだぁ〜…いや、そうなんですかぁ〜…」
私は下手くそな愛想笑いで返す。ま、まじか…確かに大人っぽい雰囲気はあったけど、先輩だったとは…。今日だけで四回の反省。しょんぼり、以下略。
「もう、そんな驚かなくてもいいじゃない!ちょっとショックなんだけど!…それと、敬語じゃなくていいわ。年上とはいえ同じ一年生だもの」
陽花ちゃんは意外と寛容だった。陽花ちゃんの口からそんな言葉が出てくるとは…すごく怒られるかと思った…。そのことでなんだか申し訳ない気持ちになるが、それはそれ。
「そう?じゃあ陽花ちゃんって呼ばせてもらうね!」
笑顔で言う。私はこういう時の切り替えが早いのだ!
「かっ…勝手にすれば!?」
『ちゃん』付けに慣れていないのか、陽花ちゃんは顔を赤くする。どことなく嬉しそうなのが微笑ましい。
なんか、最初の印象と随分違うなぁ…。
あの時は少ししか話さなかったし、私も落ち込んでたからっていうのもあるんだろうけど…意外とかわいらしい子だ。なんて、年上にいう言葉じゃないんだけど。
「……ねぇ貴女のお母さんって、どんな人?」
少しして、陽花ちゃんは唐突に言った。先程とは違って表情は曇っている。意外と表情が豊かなんだな、この子。ますます既視感が…。
「う〜ん。大雑把で、面倒くさがりで、すぐ怒る…かな…でも、いいお母さん」
「いい、のかしら…?それは…」
「うん!優しいし、私の作戦にもひっかかってくれるし!」
私がにしし、という風に笑うと陽花ちゃんはますます分からない顔をした。
「私には貴女が笑っている理由がよくわからないけど……でも、幸せそうね。羨ましいわ」
そう言って、陽花ちゃんは俯いた。なんだか悲しい雰囲気だ…。私は話題を変えようと、
「そ、そういえばこの間スーパーで買い物してたよね!自分で料理とか作ってるのかなッ?!」
…なんか食い気味になってしまった…。
陽花ちゃんは悲しげに微笑むと、
「まぁ、ね。お母さん、入院中だから…一応、二人で自炊してるの」
と言った。また暗い雰囲気に…!と思ったが、陽花ちゃんは先程とは違う笑顔でこう続けた。
「べ、別に、気を使わなくていいのよ!別に入院中で悲しいって訳じゃないから…」
先程とは違う、無理してるような笑顔。
…訳アリとは思ってたけど、思った以上に深刻そうだ。他人と友人の境目のような関係なのに、私もつられて悲しくなってしまう。
「……それより、急いでたみたいだけど、大丈夫?それなら私も勉強あるし、そろそろ戻るわよ」
「ああ、うん……?…って、あ〜〜〜〜〜!!!!!すっかり忘れてた〜〜〜〜〜!!!!!」
ぜ、絶対怒られる〜〜!これこそ今日一番の反省じゃん…!私は勢いよく走りだす。本日2回目の全力疾走。
「ごめん、ありがとう陽花ちゃん!また明日ね〜!」
私は走りながらお礼を言う。
「あ…ううん、いいのよ。…じゃあね!」
遠くで、陽花ちゃんの声がした。
「全く…人騒がせなんだから…」
木葉が去って静かになった教室で、私は一人呟く。
…あの子は、私達を変えてくれるだろうか。
変わりすぎた桜花と、いつまでも変われない陽花を変えてくれるのだろうか。
私は一つ溜息をついて、木葉の机を見る。
弱い私は、結局他人に望んでばかりいる。小さい頃から、ずっと、ずっと………
「って………あの子…」
先程の不安が全て一時的に吹っ飛び、馬鹿らしさで一杯になる。なんと木葉の机の上には、英語のノートがおいてあった。どうやら忘れたらしい。私は眉間を抑えると、先程とは違う意味の溜息をこぼす。
「もう、どこまで馬鹿なの…」
私は急いで帰りの準備をして、木葉の後を追いかけることにした。
最近文字数が私にしては多いです!ていうか、序盤少なすぎる…。




