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 転移ドロップスを白の大地に置いた僕達は、早々に村に戻って砦の建設をはじめる事にした。

白の大地で取れるセメントモドキの運搬はオスタウロス達に任せて、モルタル(水とセメントを混ぜたドロドロ)を作る作業をナナちゃんとユマちゃんが遊びながらやってくれている。

僕がミリアさんと白の大地に行ってる間に、随分仲良くなったらしい。

帰ってきたっていうのにユマちゃんが遊んでくれなくて、内心ちょっと寂しいのは内緒にしとこう。


 それにしても、モルタルを作る作業が随分異世界染みていて見ていて面白かった。

ユマちゃんが集めた砂にナナちゃんが水を垂らして、それにセメントもどきを加えて土魔法でぐちゃぐちゃにかき混ぜるとモルタルもどきの出来上がりだ。

砂を集めてへこんだ地面に出来立てのドロドロを流し込んで固め、その傍にコンクリートブロックもどきを積み上げていけば、堀と壁が同時に作れるっていう画期的な技法なんだけど……。


 この、コンクリートブロックもどきを積むっていうのが難点だった。

ユマちゃんは土魔法でドロドロのモルタルまでならある程度自由に動かせるけど、乾いたコンクリートブロックは魔法で操作しようとすると壊れてしまう。


 非力で幼いユマちゃんに重いコンクリートブロックを持たせるなんて、他の誰が許しても僕が許さない。

そんな訳で、コンクリートブロックを積んでいく仕事は僕がやっていた。

まあ他に出来る事もないし、ハチもどきも手伝ってくれてるし良しとしよう。

[もどきじゃねえ。手伝ってるのは紛れもなくハチだ]

あ、そうなんだ。


 肉体労働に向かない体にこれは堪える。

間違いなく筋肉痛になる手応えを、僕の体は感じていた。

「ご主人様! お疲れなら休んでいても構いませんよ? もし宜しければこのハチめを椅子にして一休みされては……」

「うん、しゃべってないで手動かしてね。手」

迂闊に疲れる様子も見せられないとは、中々の苦行だ。

でも、この作業中に少しでもユマちゃんとの絆を取り戻さないといけない。

僕の心が死んでしまう。



 ちなみにユマちゃんは、

「絶対に汚す」

というエマの意見と共にカッパを着せられ、そして案の定あちこちにドロドロをつけながら遊んでいる。

さすが姉だね、ユマちゃんのお転婆ぶりをよくわかっている。



 壁は、村の背にあった大岩から円形に作るつもりだ。

集落を守る堀と壁。オーソドックスだけど、最初はこれで充分だろうってガイナルさんもどきも言っていた。

[もどきじゃねえって。ありゃ間違いなくこの村の長のガイナルだ]

壁にトゲをつけるとか堀に落ちたらトゲに刺さるとか物騒な相談を魔人さんとしているのが聞こえたから、基本の形が出来たらそこから色々作り足していくんだろう。

それにしてもこのおっさんもどき、うるさい。

[ええ……。お嬢ちゃんに相手にしてもらえないからって八つ当たりはよくないとおじさん思うな]

うるさい。



「おにたん!」

ユマちゃんの可愛らしい声が僕の鼓膜を刺激した。

「そこジャマなの、どいて?」

子供は時に非情である。

にっこりと笑いながらどけと言ってくるユマちゃんの顔は、やはり無邪気でかわいらしい。


 僕は涙を堪えて少し後ずさると地面の砂が見えないスコップで掘られたようにへこんで、どかされた砂が山を作った。

ナナちゃんも大分作業に慣れてきたのか、何も言われなくても砂山に水を垂らしていく。

もう少ししたら、また大量のコンクリートブロックがあのあたりに詰まれるだろう。

酷使に耐え切れず震えだした腕で潤む目を拭いながら、僕はまた作業に戻るのだった。


 ちなみにハチは、頼んでもいないのに四つんばいになって僕が座るのをしばらく待っていた。

腹いせのペインが炸裂した事は、言うまでもない。



**魔王年代記より抜粋**


紀元前二年

緑葉の月


魔王が築いた最古の魔王城は、質素ながらに恐るべき殺意を含んだものであったと言われている。

初代魔王城は最も敵成すものの血肉を喰らった城として有名だが、魔王閣下ご自身も建築に関わったことはあまり知られていない。

閣下の旧ブガニアに対する怒りと憎しみが、そこには表れていたのだろう。

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