第2話 恒久の河と無常の砂
ウルフ・ジョーに勝利したイフロは金庫窓口でファイトマネーとしてたくさんの金貨が入った袋を受け取った。そして振り返り部屋に戻ろうとした。しかし戻ることはできなかった、なぜなら目の前に美しいそれはそれは美しいとほか言いようの無い女性が立っていたからだ。
イフロはその美しさに息を飲む。どの記憶を探っても自らの想像する全てをかけてなおその美しさに遠く及ばない女性にイフロはただ見とれていた。
「よお、イフロ・ランオウ初めまして。私の名前はエナマ・ギャロストリフト……少し話に付き合ってくれるかい」
エナマは鏡色の瞳をイフロに向ける。
「ああ……いい……よ」
イフロは少しどもりながらそう答えると
「単刀直入に言おう、私を君のスポンサーにしてくれないかい? 」
少しの間2人の間の空気が停滞する。
「え……? いや、いきなりそんなこと」
イフロは困惑する。
「もしかして私の事を知らないのか? 私はこう見えて最強の剣闘士のみ得られる『スティマ・モノマヒア』の称号を持っているんだぜ」
エナマはその狩人の様な服装に似合わない、派手で豪華なメダルを見せる。
「スティマ・モノマヒア……剣闘士協会が最強と認めなおかつ無敗であるともらえる称号……そういえば、思い出した講習でそんな話があったな確かその時聞いた名前は……エナマ・ギャロストリフト」
イフロはエナマが見つめる。
「君には良い輝きを感じた。それこそいずれ私からスティマ・モノマヒアの称号を奪いる可能生すら考えたほど……こんなことは初めてだ」
「新人潰しか? いつでも相手なるぞ」
イフロはエナマをジッと見据える。
「逆だよ逆、君のサポートをしたい」
「よくわからんな……? 」
「まあ、私が最強すぎるからなここ1年決闘していないんだ、そうなると剣闘士としての意義が揺らいでねやはりライバルが必要だと思ったわけだ、そっちの方が盛り上がるしね。そして剣闘士は盛り上がれば盛り上がるほど儲かるからね」
「ふーん、ならいいやスポンサーになってくれ」
「じゃあ早速住む場所を見せよう」
エナマが指を鳴らすと目の前の光景が変わった。
「そこそこ豪華だな……しかしなぜベットが2つ? 」
「私の部屋だからだ。共同生活しよう」
「ああ、別に……」
イフロは正直、複雑な気分だか考えるのがめんどくさくなったので考える事やめた。
「それじゃあ 、元いた部屋から荷物とってくるわ」
「私も行こう、君の住処が変わった事を教えないとね。じゃあ瞬間移動するぞ」
イフロとエナマはイフロが元いた部屋に瞬間移動した。そして部屋に着いた瞬間にドアノックが聞こえた。
「どうぞ」
イフロがそう言うとメイドが入ってきた。
「次の挑戦状です」
メイドは淡々と言う。
「誰から? 」
イフロの質問に
「ルメン・オーマド……A級No.2の実力者だ」
メイドではなくエナマが答える。
「そうです、挑戦受けますか? 」
メイドの問いに
「もちろん」
イフロはそう答えた
「それでは」
メイドは立ち去ろうとする
「待って今日からイフロは私の部屋で過ごすから」
エナマがそう言う
「はいわかりました」
メイドはそう言って立ち去った。
決闘は3日後である事が後日通達された。
◆◇◆◇〜3日後〜◇◆◇◆
「よく寝れた? 」
エナマがイフロに問いかける。
「普通」
イフロはそう言った直後『無彩の世界』に入り込む。
「さぁーて! まずは青コーナー! A級のウルフ・ジョーを圧倒的な力で難なく打ち破った最強のルーキー! イフロ・ランオォ!! 」
歓声が湧き上がる。イフロは取り敢えず手を振った。
「次に赤コーナー! A級No.2の実力を持ってA級の壁を教えろ! ルメン・オーマドォォ!! 」
瘦せ型で優男風のルメンが慣れた手つきで手を振った。
「レディファイト!!」
ゴングが響いた。
「君……ウルフ・ジョーを軽くひねって自分のことS級はあると勘違いしてそうだから教えてあげるよあげるよ、そしてこれは慈悲でもあるなぜなら逃げるチャンスを君には与えたんだからね……僕の魔力量は32恒河沙……すなわち32の後ろに0が52個分つくこれでわかったかい君が仮にウルフの100億倍の魔力量でも僕には遠く及ばないんだよ」
ルメンの口元を吊り上げながら挑発的な発言をする。
「俺も1ついい事を教えてやろう、お前が俺に魔力量自慢するという事は、あたかも狼が虎に力を自慢する事と同じだぜ。お前の魔力量は凄いがその自慢は別の人にやるべきだな」
イフロはルメンに言葉を返す。
「ふっ……オイオイ今のが自慢に聞こえたのか? この程度で自慢に? 32恒河沙程度の魔力量なんぞA級には何人もいるだぜ、それが誇らしげに語れる自慢に聞こえたと? やれやれお里が知れたな。悪い事は言わない今すぐ降参しなミンチになった自分を晒したくなければな」
「やれやれ困ったもんだ。お前さよく空気読めないって言われない? 」
イフロは首を横にふる
「なんだと……?」
ルメンの言葉に少し凄みが混じる。
「だってあのシタリ顔はどう考えても自慢だろ。お前は文脈や表情で自分が他人にどういう印象を与えるか全く想像できていない……そういうのは空気読めない奴の特徴だぜ」
「ほう……俺は空気が読めます自慢かな? 確かに僕は空気が読むのが比較的ヘタだけど……それが何? 今この場で重要なのは戦闘能力であって空気読む力では無い。君は現実的思考が苦手な様だ」
「あっそ。じゃあ君のご自慢の戦闘能力早速披露してくれ」
「言われなくともやってやるよ!! 」
そう言ったルメンの手に炎と呼ぶにはあまりな凄まじい熱と光の塊が発生した、その熱と光の塊の正体はビックバンレベルのエネルギーを手のひらに収まる様に凝縮したのだ。
「魔法は剣と似ている単純に魔力量で何も考えず圧し潰すより魔力をコントロールし研ぎ澄ませた方がはるかに良い結果を出しもたらす。絶望しろ俺の魔力コントロールによる魔法の強化率は平均的なA級つまりウルフの無量大数倍……1の後に0が68個分つく! 文字通り力の桁が桁違いなんだよ!! 」
ルメンはその膨大という表現すらふさわしく無い絶大な光と熱の塊をイフロにぶつける。
「なんだ? 電気ストーブか? 」
しかしイフロの肉体どころか服にもなんの影響も与えられなかった。
「な……なに!? そんな……バカな!? …………なんて言うと思ったか? 準備運動は終わりだ本気を見せてやる、ありがたく思え。」
ルメンの本気宣言に
「そうだよな」
イフロがうなずく。
「そう言っていられるのも今のうちだけだ……! ハァァアアアアァァァァ!!!! ンンンン!! フゥ……これが僕の本気だ……僕は自分魔力量を10の1000兆乗つまり1の後に0が1000兆個分つく特殊技能があってね疲れるからあまり使いたく無いのだが特別だ君を消し飛ばすために使わせてもらうよ」
ルメンの手のひらにビッグバンすら余波で軽く搔き消してしまうほどの光と熱の塊が発生した。
「またそれ? というかなにそれ? 」
イフロはその光と熱の塊がなんなのか質問する。
「これは『ファイアーボール』小さな火の玉を投げるだけの簡単な魔法……しかし! この僕の手にかかれば! 宇宙創生すら超越する魔法になる!!! 」
「へーそうなんだ、俺も一応できるんだぜ? 」
イフロはなんとなく読んだ魔道書を思い出してファイアーボールを作ってみるとその余波でルメンのファイアーボールとルメン自身が熱で消滅してしまった。
「ありゃ? まだ未完成なのに」
イフロは人の不安定で弱々しいファイアーボールの余波でいつの間にかルメンが消滅してしまったため狐に顔をつままれた気分になってしまった。