たたずむ、小さく。
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@u_k0223 @Mooooon_third
@nanoske44 の三方に協力してもらいました。
※ファンタジー要素があります。
どうせなら一人で暮らしたかった。
でも来てくれた、そして去った。
「そんなことなら来るなよ・・・」
か細い声で、僕は墓標に声を掛ける。そして再び静まり返る。
深い森の中。
悲しみのあまり、木々を枯らし花や雑草を凍らせた。
原因を無残に亡くした。旅のものだったらしい、きちんと帰してやった。
悲しみ溢れる森にもう流す涙はない。
それから十日と経ったのか、動物たちは小さい物から餓死し始めたころ。
一人の少女、それと・・・ヘビだろうか。光を放つような綺麗な真っ白いヘビ。
「初めまして。あなたの闇と光を『記録』しに来たわ」
そう言うと彼女は片手に持っていた本の最後のページを開き、呪文のような言葉を静かに口ずさむ。
それが終わるまで、僕はたくさんのことを考えることしかできなかった。
「それにしても、貴方。こんなところでよく暮らせるわよね。他の人間と文化的な生活をしたほうが楽しいわよ?」
いつの間にか終わっていた、その呪文の主からの質問。僕は即答できなかった。
「・・・・・・大丈夫」
嘘。
「大丈夫、一人じゃない」
俯きをやめ、堂々と吐く嘘。
それを見て何を思ったか。木を背に弱々(よわよわ)しくしている僕に笑いかけ、そして言う。
「シラヘビさん。やっちゃってください!」
何が起こったかわからないほど、強く優しい光が僕の全てを包む。
幾秒かの短い時間にこれほどのことが可能なのだろうか。
木々は生い茂り、花や雑草は水水しく凜と生きている。動物達は僕に腹を立てず、まるで何もなかったかのようにある者は食し、ある者は獣道を駆けている。
そして彼女はまた本を取り出し、さっきと同じページを開く。それでも先ほどと違い、明るい表情と綺麗な声で同じような呪文を口ずさむ。
そして、シラヘビと呼ばれたヘビが言う。
「私は『白々ノ奈ノ大蛇』。平安時代の物語の、全てを明るく照らすヘビだ。対なる闇を探ることなど造作ない」
老人のような、男声で言う。
「彼女はそれを記録し、それを糧に生きている」
呪文の終わった彼女は自己紹介をする。
「改めて、初めまして貴方。わたしはアシュリィ。啞朱裏って書くけど変な名前よね」
そう言いメモを見せられる、そうとう使い古しているようだ。そして彼女は続ける。
「始にも少し言ったし紹介もあったけど、私は『記録』をし続けている。この世の魔による闇と光を。
貴方の名前は?」
名前を聞かれては嘘を吐けない。大切な名前に。
「ユゥク。自然を糧に生きている。だから文化を信じないし、頼りたくない」
「そうだったの・・・。それは失礼をしたかもね。で、連れは?」
辛い・・・。来ないでほしい。これ以上何もせずに去ってください・・・。
ヘビが言う。
「朱裏、その辺にしておかんと。それとも愚行にはしるか?」
「そうね、世話を焼きすぎるわ。ごめんなさい」
ほっとする。けれど後悔する。
逃げておけば良かったと。
「でも、捨ては置けないわ。貴方が笑顔になるまで強引にでも隣にいてあげる。記録のストックは万とあるわ。
よろしくね」
唖然ともできなかった。
驚いた後、涙がでる。大きくて熱い涙。
「・・・ぅぅう。ああああああぁぁぁぁ!!!!」
泣き叫ぶ。天の彼に届くように。
そして泣き終わる前に、僕は彼女に抱きかかえられる。
「これからよろしく。嫌でも一緒に居てあげるわ」
優しい言葉が、傷つけるように熱く掛かった。