こ こ
ぼくの立っているこの場所を
ぼくは ここ と言っている。
きみの立つその場所を
ぼくは そこ というけれど
きみは きみの立つその場所を
やっぱり ここ と言っている。
ぼくの立つ ここ きみの立つ ここ
同じかしら? 違うのかしら?
ためしに立つ場所を代わってみた。
ぼくの ここ に立つきみ
きみの ここ に立つぼく。
やっぱり 違う
さっきいたぼくの ここ からは
青い光る海が見えていたのに
いま立つきみの ここ からは
緑の揺れる丘が見えるもの。
そう言うぼくに
きみは 何も言わずに上を指差した。
あれ 同じだ
ゆるやかに流れる白い雲
ぼくときみの上に広がる青い青い空。
ここ は そこ と違うけれど
そこ と ここ はやっぱり同じなのかしら?
それじゃあ今度は
二人の立っていない
あそこ に立ってみよう。
次は むこう
その次は そっち
次の次は あっちに。
立って眺めて
立って見上げて。
気がつくと
おや 不思議
いつの間にか ぼくが最初に立っていた
ここ に戻って来ていた。
おかしくなって ぼくが笑いだすと
きみも 静かに笑ってくれた。
笑いながら
ぼくは ここで
きみは きみの ここで
青い空を見上げた。
暖かな陽の光が
二人を柔らかく包んでくれた。