飲酒
二十歳になった。
酒が飲める。
どんな味がするのだろうか
「来月に飲もう」
二十年付き合ってきた友達と約束した。
楽しみだ。
どんな味がしようと良い思い出になるに違いない
約束した日の前日になった。
明日も明々後日も休みだ。明日はたらふく飲もう
そう想いながら眠りについた。
翌朝 携帯の振動で起きた。
一体誰からだろう?
酒を飲もう
と約束した友達の親からだった。
電話に出た。
子どもの頃に聞いた声とそんなに
変わっていなかった。
ただ、震えるような、
悲しみをぐっと抑えるような声だった
「息子が亡くなった」と
飲酒運転のトラックに跳ねられたらしい
俺はどう答えればいいのか分からなかった
「そうですか」と
葬式の予定を聞いて電話は切った
そうか
もう会えないのか
不思議と涙は出なかった
酒を1人で飲む
味はしなかった
微かに苦かった気がする
目の前にいるはずだった人はいない
2本目を開ける
少しぼぅっとしてきた
ここにあいつがいたら
もう少し騒がしかっただろうか?
そんなことを考えている内に2本目を飲み切る。
「そろそろ寝なきゃな」
片付けをしないで寝る。
目が覚める
妙に目覚めがいい
そういえば葬式はいつだろうかと
カレンダーを見る
5日後だった
意外と速いんだな
気付けば5日が経つ。
喪服を着て葬式会場へ行く
もう少しで始まるようだ
坊主がお経のようなものを詠む
お経を読み終わって、
お別れをする時間が来た
順番が回ってきた
こいつの顔は死化粧でいつもより
美しくなっていた
涙は出ない
「じゃあな」
声をかけた
返事は来ない
来るわけがない
声が聞こえるような奇跡はおきない。
火葬の時が来た
あいつの両親が泣いている
なぜ俺は涙を流せないんだろうか
そんなこと気にしても出来ないことは出来ない
親より先に死ぬなんて親不孝者だな なんて
会場を出る
空はあいつのせいで焼けていた




