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31話 『アモデウス家』

 アモデウス家はただの街であったサラディンを『魔法都市』の二つ名を付けさせた一族である。当代のフィンセント・アモデウスは愛妻家で魔法の研究に熱心な人間だという評価を得ている。


 また、その妻であるクリーエル・アモデウスは温和で温かみのある人間だと言われている。しかし、それは対外的な評価であり実の所、両者共にその名誉に溺れ酒色を好む暴君のような存在である。


 無名であったがために裕福な生活を送れず、人から羨まれることのない普通の人生を送っていた二人。だが、一度の成功で、富と地位と名誉を得たがために酔いしれてしまった。


 アモデウス家が如何にしてサラディンを魔法都市に至らしめたのか。それは些細な発見からだ。十数年前に魔晶石の魔力を別の用途へと還元させることができることを発見したのがきっかけだ。


 魔晶石は魔のエネルギーを帯びた不純物。その考え方を覆したのがアモデウス家、いわばフィンセントとクリーエル。


 そこからはあれよあれよという間に上手くいった。世界初となる転移魔法陣でのワープ装置の開発。人の魔力量では到底足りぬために魔晶石を当て、魔力を補填。


 その他にも魔晶石の可能性を最大限に用い、解析を進めさせたアモデウス家。サラディンでは魔晶石の勉強をするのが当たり前となった。魔晶石のエネルギー抽出、それを人の魔力に充てるという考えによりサラディンでは魔力切れをする人がゼロになった。


 魔力切れをする人がいないために日夜魔法の研究が進み、その活動は大陸へと行き渡り、いつしか『魔法都市』と呼ばれるようになった。


 その活躍から都市の長へと推薦された二人は当然その座に。巨万の富と永遠の栄誉。全てを手に入れた二人であったが問題があった。


 子供が出来ないのだ。何年経っても妻クリーエルはフィンセントの子を宿すことができなかった。それはアモデウス家の財産損失になりかねない問題。


 そのために、奴隷商人から秘密裏に巨額の金を払って一人の少女を購入。名前は適当に、夜に咲いていた真緑の花「リューシュ」にした。現在でこそ、彼女は緑髪、いわば『異世界人』の象徴であるものになっている。しかし、初めからそうであったのでは無い。


「はぁ早くしてよね」


「は、はい……」


 幼少の頃より虐待のようなものをされてきた結果、ストレスとショックにより緑色へと変化してしまった。それでも、時折魔法は教えてくれるし文字も教えてくれた。必要最低限の礼儀も、生きる上では欠かせないことは教えてくれた。


 クリーエルもフィンセントも子育ての方法は無論知っている。だが、両者共に子供よりも自身の地位や富の方が大事なのである。どれだけ楽に生きられるのか、どれだけ快感に浸ることができるか、そっちの方が重要であった。


 なぜこうも二人はねじ曲がっているのか。それは無名の人間がいきなり全てを与えられてしまったからだ。ひもじい、贅沢のできない生活にはもう戻れない。今の生活を維持するために走るばかりで、他のものは二人にとって道具に過ぎない。


「やった、やったわ!!」


「やったなクリーエル!!」


 二年前、二人はついに子供を授かることが出来た。だが、それはリューシュの居場所を奪うものでもあった。

 産まれてくる子供が男児であれ女児であれ、二人はその子供に全ての財産を継がせるつもりであった。リューシャとは違い、自身の血肉を分けた本物の子供。


 二人はリューシュ


 元からなかった愛情がマイナスへと変化するのは当然だった。だが、世界の決まり事として人族の成人十五歳までは親の庇護下にあることが約束されている。だから、より鬱陶しいのだ。

 気まぐれで買った子供。気まぐれで育てた子供。良いように使うために育てたのだ。


 

 奴隷商をキッカケにアモデウス家は裏稼業へと足を踏み入れた。都市の運用も裏金やら、気にいらない人間は秘密裏に暗殺するなど闇に手を染めた。それらの見返りとして金を払っていたのだが、最近になって金を払うのも少し惜しむようになってきた。


 そこで白羽の矢が立ったのがリューシュだ。まだ成人前だがその身体は既に大人と遜色無い。加えてまだ男性経験の無い純潔。汚い金が跋扈する裏世界では金に等しいものであった。


 邪魔なリューシュを追いやれるし、その者たちとの関係も保つことができる。一石二鳥だった。例えリューシュがそれで死のうが、帰ってこなかったとして二人には真の子供がいる。緑髪の忌み子などどうでも良い。


 それが、魔法都市サラディンを形成したアモデウス家の当主フィンセントとその妻、クリーエルであった。



 

 


 

 

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