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22話 『決意の騎士』


 トウマが数日間のシュラーゲル生活を終え、一週間くらい経過した頃の話。

 国のナンバー2に近いヘルメスが職務で国を離れたことで少々王宮内は忙しかった。

 

 だが、一際忙しない状況にあったのが……騎士団長ジュラルだった。



 ─ジュラルside─


 

 思えば、出会いから少し変わっている青年だと思いました。

 一目見ただけで、あの青年は何かが違う。

 我々とは一線を画す存在であると。

 ヘルメス殿と出会った時も同じような感情を抱いたことを今でも覚えています。


 ですが、そのヘルメス殿異質さとトウマ殿の違和感は似て異なるもの。

 ヘルメス殿が夜に輝く月であれば、トウマ殿は昼に輝く陽光。


 対極にある二人だと。

 ヘルメス殿は良い意味で問題を起こしてくれるが、トウマ殿は、違う――


「な、なんと……」


 昨日の悪なる組織『正理機関』との接触。

 此度はまた違う、問題が起きた。


「オルレンが……消えた、と?」


「はい、手紙を一つ添えて、あと伝言も!」


 ミユ様の警護をしていた今日、血相を変えて飛び込んできた私の配下の騎士から伝えられたこと。

 息子の失踪。

 最近はこれまで以上に大人しく、謙遜するようになったがまさかそれが憂鬱を表していたと気がつくことが出来なかった。


 配下の者から手紙を受け取る。

 驚く程に、この歳になっても手は小刻みに震え封を解くことに不快感を覚える心がある。


「自分の気持ちが分かりません……。それを確認する旅に出ます……生きていたらまた」


 たったのそれだけ。

 十秒にも満たない時間で息子から初めて受け取った手紙を読み終えた。

 気持ち、気持ちとは一体なんの事なのか。

 あの子は何か闇を抱え込んでいたのか。

 それが分からぬ。

 自分には、それが分からない。


「そして、伝言が……」


 手紙を力強く握り呆然と立っていた私の耳に、付け加える形で情報が入ってくる。

 

「な……っ」


 路肩でのいじめ。

 通行人の目につく場所でわざわざ行っていた……と。

 それを長きに渡って耐え忍んできた、と?

 なぜだ。何故なのだ。

 我が息子、オルレンよ……。

 

 貴様の父は信用ならなかったのか。

 威厳を保とうとお主の前で威厳のある姿を見せてしまったせいか?

 胃の奥から込み上げる自らへの怒りと後悔。

 それらが複雑に交錯し、やり場の無い憤りに変わる。

 未熟者め、本当に未熟だ。


「実態は誰も知らなかったというのか!」


 私は報告に来た若手の胸ぐらを掴み、荒々しい声色で問う。

 私と同じようにまだ未熟な青年は急いで口を開くり


「く、口止めというか、首謀者から多額の賄賂を受けっていたことが――ごぉっ?!」


 私は雑に青年を地面に投げ捨てると、その場で天を仰ぎ絶叫する。

 全ての感情を込めて、怒りも、憎しみも、後悔も、悲しみも……。

 

「そ、それと」


「まだあると言うのか!」


「ひぃっ……! ご、ご本人から言う必要は無いと報告されていまして……!!」


「何?」


「父の対面を保つためにも、自らで解決すると仰せだったので。救おうにも救えず……」


「ぬぉぉおお!!!」


 原因は、私であった。

 騎士団の長として威厳のある行動をと思っていたのが全ての間違いだった。

 私の、私のせいだったのか……!!


「ですが、通行人が見た情報によると」


「まだあるのかっ!」


「こ、これが最後です」


 震えてる瞳と手を御しながら、片膝をつく。

 最後、これ以上の惨劇にまだ付け加えが行われる。

 そう思うと体のあちこちから力が抜ける気がした。


「現場に、騎士と思えない人間が二人いたと。

 うち一人は、オルレン様の胸ぐらを掴み声を荒らげていたそうです」


「名前は……?」

 

「トウマという変わった服装をした黒髪の青年です」


 ギュッと胸が締め付けられるような感覚。

 トウマ、服装、黒髪。

 これら三つの条件に適合し、この街にいた人物は私の知る限りただ一人。


「正体不明で、ミユ様を危険に晒そうとし、挙句の果てには我が息子まで……!」


 個々の悪行が束となり黒い塊に変化する。

 やはり、ヘルメス殿。

 私は約束を守れそうにもありませぬ。

 ミユ様の件。

 それは確かに私の落ち度があった。本人に確認を取らず、自暴自棄になったこと。

 だが、今回はそうといきませぬ。

 証人は今私の目の前にいる青年に留まらず、あの現場を目撃した人々も多いはず。


「トウマ殿を最後に確認したのは、どこだ」


「え、えぇっと。門番の話では数日前、母子自殺事件の日だそうです」


「目的地は?」


「そ、そこまでは、しかし」


 統制を誰かがしてくれていれば。

 トウマ殿がそれに気がついていたのなら、加担するのではなく救いの手を差し伸べてくれていたのなら……。

 もし、もしも……。

 あぁ私は弱い。

 このように精神的に脆いが故に全てを危険から守りきれないのだ。

 

 若かりし頃に夢見た誰かを守る盾となる。

 年老いても尚、達成されることのない空想となってしまった。


「我が主と息子を傷つけた罪、存分に報いて貰いますぞっ!」


 私は憎しみを拳に込め、立ち上がった。

 腰に帯びた剣をガチャガチャと鳴らし、廊下に出る。

 すぐさま動かせる騎士を動員させ、トウマ・カガヤを倒す!


「あ、お待ちを団長! トウマという人は――!」


 私は背後で呼びかける若手の声も聞かず先を行った。

 ヘルメス殿、もうこれで良いでしょう。貴方が遠回りをして彼を探る必要は無くなった。


 トウマ・カガヤは、国にとっての災いを呼ぶ人間だと、今ここで確定したのですから。

 

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