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【完結】もちろん、私が解決いたします  作者: 楽歩


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24.鎧 sideスヴェイン

 sideスヴェイン




「どうしました、スヴェイン様?」



 第2王子の護衛を終え、鎧を脱ぎ、肩をゆっくりと回しているところをレティに見られた。静かな訓練場。まだ陽の光が差し込む時間帯で、辺りは穏やかな空気に包まれている。


 そうだ、今日はレティが訓練所まで迎えに来てくれる日だった。




「ああ、実は、鎧が少々動きづらくてな。関節が痛むんだ」


 苦笑しながらそう言うと、レティが首を傾げる。頬に微かに影が差すのが見えた。




「体を守るものなのに、体に悪いなんて……」



「まあ、華美な装飾が多くて見栄えがいい分、実用性のほうがあまりないんだ」



 レティは少し驚いた顔をして、すぐに申し訳なさそうに微笑む。戸惑いと反省の色が見え隠れする。




「そうでしたの。鎧姿、素敵だと安易に思っておりましたわ」



 そ、そうか。少し照れくさい。



「レティは、俺の鎧姿が好きか?」



「どんな姿でも好きですわ! 隊服も普段の服も1番は決められませんわ」



 その返答に少し驚いたが、嬉しさがこみあげてくる。



「まあ、式典なら仕方ないとしても、護衛の際などはもう少し動きやすい方がありがたいな。いざというとき、出遅れると困る」



「近衛隊の鎧は、デザインが決まっているのですか?」


「隊によって違うデザインだ。一目でわかるようにしているのだろう」



 隊ごとに違いがあることを説明する。



「そうでしたわね。王女の近衛隊は、これより一層派手ですもの」



「ああ、あの鎧よりはましだ。この鎧は、前の隊長が選んだものだったかな。デザインはともかく、重さと動きやすさが問題だ」




「確かに、護衛の際はそれが一番重要ですわね」



 レティは心から納得したように微笑む。



「そうだな」




 *****





 団長に、各隊の隊長が呼ばれ、執務室に集まる。



「集まってもらったのは、各隊の鎧のデザインを一新するためだ」


「デザインをですか?」


「ああ、そうだ。そろそろ受注の商会の見直しの時期でもあるし、いっそのことデザインも新たにするという話が出てな。特に、王女殿下が乗り気だそうだ」




 そうだろうな。だが、渡りに船だ。何とか重さと動きやすさを改善したい。




「ということで、多くの商会から見本を取り寄せた。隣の部屋に用意させてあるから、ぜひ見てくるといい。公正を期すため、商会の名前は伏せてある」




 実物が見られるのはありがたい。


 煌びやかな鎧が並ぶ。うわ、目がちかちかする……


 王や王妃、王女の近衛隊の隊長たちは、やはり見た目が良く派手な鎧を選ぶようだ。



 手に取りながらいくつか見ていくとひときわ惹かれる鎧があった。



 シンプルでありながらも洗練されたデザイン。


 厚みはほどよく、装飾も最小限に抑えられているため、動きやすさを重視した作り。ところどころに施された金属の紋様がさりげなく上品な印象を与える。繊細な技術によって作られたであろう鎧は、強さを感じさせる一方で、硬すぎず重すぎない。




「おやおや、スヴェイン隊長は、それを選ぶのですか? まあ、あなたのそのお顔でしたら、美しき鎧はちょっと……ですが、せっかく近衛隊になったというのに、それを着るあなたの隊の隊員は可哀想ですね」


 じっくり見ていると、王女殿下の近衛隊長が傍に寄ってきて馬鹿にしたように言う。


 ったく、こいつもか。



「近衛の者たちは、見た目ばかりに気を取られがちだが、実際に戦場に出れば、こういった鎧の方がよいのだ」


「はは、近衛はそもそも戦場になど出ません。何をおっしゃっているのか」



 肩をすくめ、ため息をつき、その場を離れていく。




 ……しかし、これがいい。装飾とて近衛の品位を下げるものではなく、むしろ上品さを際立たせるはずだ。




 これに決めた。




 *****



 side隊員たち





「なあ、隊長が選んだ鎧、見たとき、まじかよって思ったな」


 隊員のリシャールが小声で問いかけると、周囲の仲間たちが興味津々に顔を向ける。



「俺も最初は地味だなと思ったけど、実際着てみると、……前の鎧には戻れないな」



 アルノーが感心した様子で言うと、みんなも頷き合う。確かに動きやすい。見た目にこだわった以前の鎧は、動きが不自然になりやすかった。





「実際に見るのと、使うのとじゃ全然印象が違うよな。華美な鎧は見た目に目が行きがちだけど、これは、俺らになじむっていうか。よく見ると細かな装飾に手間がかかっているし」


 隊員たちは頷きながらその話に乗る。



「王宮のメイドたちの一番人気らしいぜ」



 別の隊員が耳打ちすると、周囲が驚きと共に喜びの声を上げる。他の隊に比べたら、機敏に動けるし立ち振る舞いが全く違って見えるだろう。よくよく見ると、細かな美しい飾り彫りがされているし、そういうのには女性の方が気付きやすいのだろう。





「ただ、これ。意外と、隊長が一番似合っているよな?」



 リシャールが笑いながら言うと、みんなも口々に賛同する。




「ああ、威厳が増して見えるし、洗練された大人って感じだよな。とにかく似合う」



 その言葉に、隊員たちが頷き合う。



「……これは内緒だぞ。聞いた話だが、この鎧を卸してる商会、レティシア様のとこの商会だそうだ」



 リシャールが話を続けると、隊員たちが一斉に驚く。



「やっぱり! そんな気がしていたんだよな。隊長、知っていて選んだのか?」



 アルノーが興奮気味に尋ねる。



「まさか。隊長、そういう談合的なものは嫌うからな。それに、そのことはレティシア様が一番わかっているだろう。だから内緒だぞ」



 リシャールが真剣な口調で続けると、隊員たちは一瞬沈黙し、顔を見合わせる。



「ああ、命は惜しいからな」



 アルノーが小さく笑って言うと、隊員たちも小さく笑い返した。







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