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ACT5〜暗躍する者達〜

「ここまで来れば、とりあえず大丈夫だと思います」

ニナがそう言いながら、後ろをついていくオレに振り返った。あの後オレ達は、残った追っての騎士達を撒いた。そして、二人で森の中を走り続けた。


「ちょっとは休めるかな」

オレは、もうヘトヘトで倒れそうだった。体力には自信がある方だったが限界だった。


「はい、少しは休めると思います」

そう言ったニナも、フラフラしているようだった。魔術師としての訓練には、体力をつけるためのものもあるらしい。


それは、魔術師も戦地に行く可能性があるためだ。戦場では少なからず体力が必要だ。そのため、騎士や戦士ほどではないが、そのような訓練をするらしい。そんな、ニナでも、そろそろ限界のようだった。


「あそこに小屋があります!あそこで少し休みましょう」

森の中には、こういう小屋がいくつかあるらしい。


森を管理するためには、定期的に木を伐採する必要がある。その時に、休憩や宿泊をするためらしい。また、それに必要な用具などの保管のだめだ。


「ありがたい!やっと休める」

オレは、小屋を見て、そう呟いた。元いた世界で、ここまで限界に近く動く事なんて、ほとんどない。


「フゥー!ヤバい!脚がいたい!」

オレは、そう言いながら小屋の壁にもたれながら床に座った。


ニナも近くの床に腰を下ろした。どうやら、この小屋は用具置き場としての用途が中心のようだ。人が中でくつろげるような場所ではなかった。


「国境に向かうって言ってたけど、そこは安全なの?」

「はい!ガイム団長の知り合いの方が住んでいるそうで、かくまってくれます」

ニナは、疲れた脚をマッサージしながら、オレの疑問に答えていた。


「聞きたいんだけど、さっきの騎士達は何?なぜ、オレ達を狙っているの?」

オレは、さっきの事を思い出していた。少し動揺していたが、それを表に出さないように意識しながら聞く。


「彼等は、マサノリ様の事を快く思っていない派閥の人間です」

「快く思っていない?それってどういう事?」

オレは、命を狙われる理由が全く理解できなかった。


「私にも、彼等がどういう者達かはわかりません」

「え?わからないの?」

オレ達は、誰かわからない敵に命を狙われているらしい。


「はい!というより、マサノリ様の敵対勢力がいくつかあるのです」

「複数って!オレはこの世界で恨まれるような事をした覚えないけど」

オレは驚いてニナに聞く。少なくとも、オレ自信は命を狙われる覚えはない。


「個人的な恨みではなく、派閥争いや権力闘争に巻き込まれたんです」

「権力闘争?なんで?」

ますます理解できなくなってきた。


「聖属性魔術です」

「聖属性魔術がなんなの?」

ニナの言った言葉が何を意味しているのか、理解できなかった。


「一部の人間しか知らない事なのですが、現在の聖女様は聖属性の魔術を使えません」

「え?聖女様なんだよね?」


「はい!ただ、他の属性魔術は使えるようになったそうですが、聖属性の魔術だけはまだ使えないみたいなんです」

驚きの情報ではあるが、オレとの関係がよくわからなかった。


「それと、オレが狙われるのと、どう関係があるの?」

「先日、マサノリ様は聖属性の魔術を使われました」

そう言えば、こないだケガをした騎士を助けるために、回復系の聖属性魔術を使った。


「もしかして、聖女より先に聖属性魔術を使ったから狙われてるのか?」

オレは、思いついた事を口2出していた。


「はい!そうです!」

「なんでそんな事で」


「そんな事が重要な事なんです」

ニナは、さらに話を続けて、オレに説明してくれた。


「聖属性魔術は聖女様が使わなければならない魔術です」

「それはわかるけど…」

オレには、まだよく理解できないところだ。


「先ほど、いくつかの派閥があって、権力闘争があると言いました」

「オレが聖属性魔術を使った事と関係があるって事か」

オレが回復魔術を使った事との関係がよくわからなかった。


「はい!まず、聖女様を推している第一王子の派閥は、面目丸つぶれです」

「だから、暗殺するっていうのか?」

オレには、話が飛躍しすぎだと感じた。


「過激な人間なら考えてもおかしくありません」

「そんな…」

オレは言葉にならなかった。そうなのだ、ここは異世界なのだ。オレの世界の考え方や常識は通じない。この時オレは、それを痛感していた。


「それに、王位を狙っている第二王子の派閥は、マサノリ様を打ち立ててくるかもしれません」

「対抗馬が台頭する前に潰すって事か」

なんとか、ショックを受けた状態で頭を働かす。


「それ以外にも、聖女様を信仰の中心に

置いている、アルティア正教も聖女以外の人間の台頭を許さないと思います」

さらにニナの説明は続く。


「また、周辺国のスパイが国内で暗躍しているという噂も聞きます」

「他の国がオレを使って何か画策するかもしれないって事?」

そう言ったオレは、複雑になり始めた話を頭の中で整理するのに必死だった。


「はい!聖女様とマサノリ様が争う事になれば、国を割る事になります」

そして、ニナは怖い事を言った。


「最悪、内乱につながる可能性もあります」

「そんな大事にまで発展するのか?」


「あり得なくはありません!裏で誰かが操作ふれば」

オレにとっては、話が現実離れし過ぎていてついていけない状態だった。


「内乱になったら多くの人が…」

「それだけではなく、内乱のどさくさで、他国が侵攻してくるかもしれません」

オレの呟きに、被せるようにニナの話が続く。


「それを危ぐするならば、現王派閥などがマサノリ様を狙うかもしれません」

「王様まで狙うの?」

さらに追い打ちをかけるニナの言葉だった。


「はい、あと考えられるのは、王派閥以外の貴族達が…」

「わかったよ!つまり、聖属性魔術を使った事で、色んな敵を作ってしまったって事だな」

「その通りです」


もう聞いてられなかった。つまり、オレを狙う勢力や利用する勢力が、国内には多く存在するという事だ。まさに、四面楚歌の状態だった。でも、ニナやガイム団長のように、オレを助けてくれる人達もいる。他にも探せば助けてくれる人達がいるかもしれない。


「で、今ガイム団長が用意してくれた、オレをかくまってくれる人のところに向かってると…」

「はい!」

オレは、混乱した頭をまとめるためにそう言った。そして、一つの事に考えがいたる。


「ごめん!オレのせいで君まで巻き込んでしまって」

「いえ、そんな気にしないで下さい!最初に巻き込んだのは私達の方ですから」


ニナは、そう言ったが、オレと一緒にいる限りニナも命を狙われる。知らないふりをしていれば、命を狙われる事はなかったはずだ。


「ニナ!今からでもオレと別れて戻った方がいい!君まで命を狙われてしまうよ」

オレは、ニナにそう言った。


「いえ!私も一緒に行きます!ほうておけません!」

「でも…」

オレは力なくそう言いかけた。


「それに、もう遅いと思います!私も狙われる身です」

オレは、それを聞いて申しわけないと、心底思っていた。





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