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ACT3〜回復魔術を使う〜

騎士団の訓練に参加するようになって半年近くが過ぎた。あの後、騎士団の訓練だけでなく、魔術も学ぶ事になった。


「そうです!それを火の属性に変換してください」

初めて魔術を学んだ時、オレが炎の魔術を使う時に、ニナはうれしそうにそう叫んでいた。


そう、魔術に関しては、ニナから学んだのだ。魔術師団に所属するニナは、魔術のエキスパートだ。そして、教え方もうまい。いや、オレ個人の感覚だけど。


「もう、ほとんどの属性魔術を使えますね」

最近の訓練の時にニナが言った言葉だ。この世界の魔法は、魔術と呼ばれる事が多いらしい。そして、今日も午前中は魔術の指導を受けている。


「魔術には、火、風、土、水の四属性があります」

ニナが、いつものように魔術の講義をしてくれていた。実技の訓練が中心なので、王宮の中庭にオレ達はいる。


「例外的に、この四属性に含まれない魔術があります」

「聖属性の魔術だな」

オレが答えると、ニナはうれしそうに話を続けた。


「はい!それ以外にもあるんですが、一番代表的な魔術が聖属性です」

「聖属性ってどんな魔術なんだ?」

何度か軽く聞いたが、聖属性については詳しく説明を受けてなかったような気がする。


「聖属性は、光属性とも呼ばれていて、回復と浄化の魔術です」

「使える人間が少ないんだよね」

たしか、前にそう言ってた気がする。


「はい、王国内でも数人しか使えません」

ニナは、話しが乗ってきたのか、イキイキと話しだした、


「ほとんどが回復の魔術だけで、そんなに大怪我を治せるような魔術師はいません」

「その聖属性のスペシャリストが聖女様ってことか」


「はい、回復魔術は重傷者の命を救い、魔物だけでなく大地の浄化すらできると言われています」

これを聞くと聖女の重要性が理解できる。


「あの、オレと一緒にこっちに来た聖女様は、そんな仕事をしてるんだな」

「いえ、まだ浄化作業はしてないみたいです」


「え?聖女様なのに?」

オレは、思わず疑問を口にした。


「今は、魔術の訓練をしているところだそうです」

「ああ、オレと同じか!まあ、オレの場合は実践のためってわけじゃないけど」


「そうですね、十分に訓練してから実際に浄化をされるのだと思います」

訓練する事は重要だ。そうでないと実践できない。まして、聖女の実践は、魔物などが暴れているようなところだ。入念に準備が必要だと理解できた。




「よし!それまで!」

騎士団長が号令をかけている。午後からは騎士団の訓練に参加していた。騎士団で学ぶ剣技は面白い。オレが元の世界で学んだ剣術とはまるで違っていた。


元の世界の剣術が、斬る事が主体なのに対して、こっちの剣術は、突く事が主体のようだ。たぶん、元の世界の剣術が刀のような片刃の物を使うのに対して、こっちの剣術は、真っ直ぐで両刃の剣を使うからだろう。


「剣技自体は様になってきたな」

「ありがとうございます」


オレは、騎士団長の言葉に素直に感謝した。実際、オレは上達したと思う。それは、団長のおかげだからだ。


「後はマナのコントロールだな」

「最近、なんとか使えるようになったように思います」

それは、最近になって、うまくできるようになった訓練内容だった。


「まあ、半年でそこまで使えるのは、速い方ではあるがな」

「そうなんですか?」


「ああ、マナのコントロールは難しい」

オレは、まだこの世界の常識がわかっていない部分がある。マナについての知識も、まだ少ないと言えるだろう。


「たぶん、私と魔術の訓練をしているからですよ」

ニナが、団長とオレに言った。


「それもあるだろうが、やっぱり異世界から来た人間だからだろうな」

「異世界人とこちらの人間では、違いがあるんですか?」


「基本的にマナを扱う能力に長けているという」

団長が、オレに異世界人の特性を教えてくれたのは、今日が初めてだった。


「ああ、だから魔術の覚えも速いんですね」

ニナは、合点がいったようだというような顔で言う。


「オレって、そんなに覚えが速いの?」

「ええ、マサノリ様のような方、魔術師団の人間でも、なかなかいませんよ」


「へぇ〜、そうなんだ」

オレは、安堵していた。無理を言って魔術や剣技を学んでいるのに、迷惑をかけてしまっていたら申しわけない。


「何度か説明したが、この世界にはマナという力がある」

団長が説明し始めた。


「マナは全ての物に宿っている」

「人間だけではないんですか?」


「ああ、動植物から魔物、無機物にいたるまで全てに宿っている」

「なるほど」

団長の説明にオレは納得していた。


「その体内のマナを各属性に変換して使うのが魔術だ」

団長はマナの説明を続ける。


「そして、体内のマナを身体の内部や表層部に使う事で、身体能力を引き上げ、強度をまして戦うのが、騎士や戦士の戦い方だ」

「武器に伝えて、武器の威力とかも上げれるんですよね?」


「ああそうだ!最悪、剣技で負けていても、マナの量や力が上なら勝つこともできる」

このマナという技術については、オレの元いた世界にはないものだ。


「威力で技を良牙するって感じですか?」

「そうだな、特に魔物と戦う時は、このマナの力が重要になる」

「たしかに、肉体の能力だけだと、絶対に魔物には勝てないですからね」


「ああ、だからマナの訓練が重要だ」

これが、この世界の常識なんだろう。因みに、オレのようにマナを魔術と剣技の両方で使える人間は珍しいらしい。だいたいは、どちらか一方しか使えないようだ。


「このマナの使い方なんですが、聖属性の魔術だけ特殊なんです」

「どういう事?」

今まで、魔術を学んできたが、初めて聞く内容をニナは話し始めた。


「魔術は各属性にマナを変換するんですけど、聖属性だけがマナをそのまま使うのに近いらしいんです」

「ん?えーと意味がわからないんだけど」

「私もよくわかりません。私は聖属性が使えないので」


どうやら、聖属性の魔術だけは、他の属性とは独立しているらしい。だからこそ、使える者が少なく、聖女のような特別な人間にしか、大きな術が使えないのだろう。


「誰かポーションを持って来てくれ」

その時、少し離れたところが、慌ただしくなっていた。


「どうした?」

団長が騎士団員に声をかける。


「団員の一人が落馬したみたいです」

「ケガの具合は?」

声のトーンから緊急なのが伝わってくる。相当の大怪我なのだろうと推測できた。


「落ちた時に岩で頭をうって、危ない状況です」

「わかった!ポーションを用意しろ!現場は何処だ!すぐに行く!」

団長は、そう言って走り出した。オレとニナも後に続く。


「大丈夫か?」

「意識がないみたいです」


団長の問いに、騎士の一人が答えていた。ケガをした騎士は、素人のオレが見ても重傷だとわかった。頭からは、大量の出血があるようだ。


「ポーションはまだか?」

団長が叫ぶ。


「申しわけありません!今、在庫がないみたいなんです」

「なんだと!何故だ!」

団長は苛立ちを隠しきれずに、そう怒鳴っていた。


「昨日、第一騎士団が遠征のために在庫を持って行ってしまって」

「クソ!他を探せ!」

「今、他の騎士団や魔術師団にもあたっています」


騎士団員は、ポーションを探して右往左往していた。オレは、ケガをした騎士の横に屈んでいた。その時、オレが何故そんな行動をとったのか覚えていない。騎士を助けたい一心だったのか、無我夢中だったのだろう。


「たしか、マナを変換せずに、そのまま使う感覚だったよな」

オレが呟く。

「え?」


横にいたニナがオレの顔を覗き込んでいるようだった。だが、オレはそんなニナに目もくれず、マナを放出した。それは、白い光を放ち地面に魔法陣を作りだした。それと同時に、辺りを光で包む。そして、ケガをした騎士が光に包まれ、傷が再生していった。


「回復魔術、できた!」

オレは、光が収まり、騎士のケガが治ったのを確認して、そう呟いた。


「まさか!聖属性魔術を…」

ニナは、驚愕の顔をして、そう呟いていた。


「なっ!」

団長も、同じように驚いた表情をしている。この後、オレは騎士団長はもちろん、騎士達から感謝された。皆、仲間が無事だった事を喜んでいた。オレは、人を助ける事ができた事が嬉しかった。


「これは、まずい事になるかもしれないぞ」

団長が、歓喜している騎士達を見ながら、呟いていた。


「はい、もしかしたら動き出すかもしれません」

ニナも真剣な表情だった。この時のオレは、自分の行動が大変な事件になるとは思ってもいなかったのだ。





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