5話
さらに1か月が過ぎた。
【名前】エル
【レベル】0
【力】4
【器用】1
【敏捷】1
【知能】15
【魔力】1
【運】10
【魔法】なし
【スキル】魔力操作
先日【力】が4へと上がった。
そして今日も、いつものようにトレーニングの日々だ。
まずは筋トレから。【力】が4になってからかなり無理のある動きでもできるようになってきた。腕立て、スクワット、腹筋、背筋。赤ん坊の体でこなしているのが異常なのは重々承知しているが、それでも地道に積み重ねるしかない。
今までの傾向からすると、次に【力】が上昇するのは、おそらく2か月後。道のりは長いが、それでも一歩ずつ、確実に前へ進んでいる。
筋トレが終われば、次は魔力のトレーニングだ。
日課の魔力移動から始める。胃の少し下、腹の奥にあるエネルギーの塊を、まず右腕の先端へ、次いで左腕、左足、右足と巡らせ、また元の場所へ戻す。最初はこの一連の工程に半日かかっていたが、今では一分もかからない。成長の証だ。
続いて、魔力の応用――体外への出力について検証を行う。
魔力を手のひらから出してみる。だが、出た瞬間、まるで意志を失ったかのように霧のように空気中に溶けてしまう。
……やはり、体内のようにはいかない。
体内では、魔力をどんな形にして、どう動かすか、はっきりとイメージしている。それが制御の鍵になっているのだろう。
ならば、同じようにやってみればいい。
意識の中で魔力を球体に整形し、それが手のひらの上に“留まる”よう、強くイメージする。
――そして、出力。
手のひらの上に、淡く光る魔力の球体が現れた。直径五センチほどの、美しく輝くそれは、まるで生きているかのように穏やかに揺れていた。
「……やった、成功だ!」
喜びが胸を満たす。だが、次の瞬間、興奮で集中が乱れた。その瞬間、魔力の球体はふっと霧のように消え去った。
やはり、体外で魔力を制御するには、体内以上の集中が必要らしい。
それでも、できたのだ。ならば、繰り返し鍛えれば、いずれ自在に操れるようになるはず。
もう一度やろう――そう思って魔力に意識を向けた瞬間、視界がぐらりと揺れ、意識が暗転した。
……
「エルー、ごはんのじかんですよ」
「う、うえ……?」
母の声で目を覚ました。
どうやら気を失っていたらしい。気がつけば、母の腕の中に抱かれ、温かな乳を飲んでいる自分がいた。
……おそらく、魔力の出力で限界を超えてしまったのだろう。
そういえば、魔力を使い切ると魔力量が増える、という話があった。ひょっとすると、俺の魔力も――確認してみる。
【名前】エル
【レベル】0
【力】4
【器用】1
【敏捷】1
【知能】15
【魔力】2
【運】10
【魔法】なし
【スキル】魔力操作
――やはり、上がっている!
魔力を枯渇させることで、魔力量は増加する。
ならば、これからは毎日、限界まで魔力を使い切る訓練を取り入れるべきだろう。
乳を飲みながら、赤ん坊らしからぬ決意を胸に、俺は静かに目を閉じた。