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4話

 1か月が過ぎた。


 毎日、筋トレと魔力のトレーニングを欠かさず続けている。赤ん坊の体にはなかなか厳しいが、それでも少しずつ成果は現れていた。


 


 【名前】エル

 【レベル】0

 【力】3

 【器用】1

 【敏捷】1

 【知能】15

 【魔力】1

 【運】10


 【魔法】なし

 【スキル】魔力操作


 


 【力】の数値がようやく「3」になった。1から2へ上がるのに一週間、2から3へは二週間かかった。どうやら、レベルアップに必要な経験値が段階的に増えていくようだ。この調子だと、次は四週間後か……。まるでラノベのようにサクサク成長とはいかないらしい。現実は地道で、忍耐が要る。


 それでも、小さな進歩は確かにあった。たとえば、つい先日から腕立て伏せができるようになった。もちろん、赤ん坊の体でそれをこなすのは異常としか言いようがない。だから、母や父の目を盗んでこっそり行っている。もし見られたら、どんな顔をされるだろうか。


 魔力のトレーニングの方は、予想以上に順調だった。魔力の流れを感じ、移動させ、形を整える。感覚を掴んでからは、まるで自分の指先のように、自在に操れるようになった。


 そして今朝、変化に気づいた。ステータスを確認すると、そこに見慣れない一文が加わっていた。


 


 【スキル】魔力操作


 


 ……スキルだ。ついにスキルが手に入った。四日前、ふとコツを掴み、一気に魔力操作が楽になった気がしていた。おそらく、それがきっかけだろう。習得の瞬間を自覚しなかったのは悔しいが、それでも嬉しかった。


 さらにもうひとつ。今日、魔力を外に“出す”ことに成功した。何気なく魔力を弄んでいた時、ふと外気に触れる感覚を覚えたのだ。わずかな量だったが、間違いなく体外へと表出していた。


 この感覚――これは、魔法への第一歩だと確信している。


 父は、前回の漁師仲間との会話のとおり、村を挙げた仕事に追われ、ほとんど家に帰ってこなくなった。帰宅しても、泥のように眠るだけの日々。直接言葉を交わすことは少ないけれど、それでもわかる。あの人は、自分のために、必死で働いてくれているのだ。


 いい父親だと思う。


 母は、毎日欠かさず自分の世話をしてくれている。母の腕の中は、どんな魔法よりも温かく、どんな盾よりも安心できる。


 この世に生を受けて、まだわずか1か月と少し。それでも、はっきりと思う。


 ――この人たちを守れる力が欲しい。


 そのために、がんばろう。

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