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星降学園生徒会

 教室のドアの前で深呼吸をする。

 昨日のことがあったから玲苑と顔を合わせるの恥ずかしいんだよね…


「でも学校に来たからには授業を受けないと…」


 決心がつかなくてドアの前を行ったり来たりしてしまう。


「おはよ水葵」

「え」


 声のする方を振り向くと玲苑が立っていた。


「何で私の後ろに…」


 すると玲苑がクスッと笑って


「生徒会の仕事してきたんだよ。何で教室に入らないの?」

「元はといえばあんたのせい何ですけど…」


 玲苑に聞こえるか聞こえないかぐらいの声で言う。


「さっさと入るよ」


 私の手首を玲苑が掴んで教室の中に入る。

 すると教室に居た全員の視線が私と玲苑に集まる。


 視線が痛い…


「僕らの水葵なのに何で玲苑と一緒に登校してるわけ?」


 駆け寄ってきた廉が言う。


「興味無いんじゃなかったのかよ?」

「さぁ?」


 笑顔だけど目が笑ってない。


「今日のお」

「今日の昼は俺と食べよ」


 廉の言葉を遮って玲苑が言う。


「水葵は僕らと御飯食べるのー」

「とりあえず、私を挟んで睨み合うのやめてもらっていい?」


 (にら)み合う二人の間に割って入る。


「みんなで食べればいいじゃん」

「やーだー」


 廉がほっぺをふくらませる。


「喧嘩するなら一人で食べるから」


 本当はみんなと一緒に食べたいんだけどな…


「水葵がみんなと食べたいって言うなら俺はそれでいいよ」

「え…」

「なら決まりだな。ここは気が散るから生徒会室で食おうぜ」

「えー。麗はそっち側なの!?」


 廉が嘘でしょという顔で問いかける。


「俺は元から水葵を独り占めできるとは微塵(みじん)も思ってねぇよ。どうしてもって言うならお前が一人で食えば?」


 お前は馬鹿かとでも言いたげな顔で言う。


「わかった。みんなで食べる。水葵が喜ぶなら」


 廉が不服そうな顔で言う。


「昼に生徒会室な」


 そう言って二人は自分の席に戻っていった。


「はぁ…。朝から超ハード…」


 自分の机に突っ伏して呟く。


「ふっ」


 すぐ隣から笑い声が聞こえる。


「何笑ってるわけ?」

「ハードって、学校来てからそんな経ってないけど…」


 玲苑が笑いながら答える。


「玲苑には私の気持ちなんてわからないでしょ?」


 玲苑の目を見つめる。


「なら教えて」

「教えて…?」


 玲苑の目が私を真っ直ぐに見つめる。

 この目に見つめられると全部見透かされたように感じるんだよな。

 タイミング悪くチャイムがなってしまう。


「教えて」


 玲苑が意地悪な顔で笑う。

 このイケメンが。


 四時間目の終わりを告げチャイムが鳴るとみんな一斉に動き出す。


「やっと終わった…」

「お疲れ」

「疲れに効く……」

「ほら、寝てる場合じゃないよ。早く生徒会室行くよ」


 玲苑が弁当らしき物を持って立ち上がる。


「はいはい…」

「水葵ー!!」

「わっ!」


 廉がすごい勢いで抱きついてくる。


「昨日は食べる時間あんまりなかったしよー。さっさと移動しようぜ」


 みんなで生徒会室に向けて歩き始める。


「そういえば生徒会って四人しか居ないんだっけ?」

「うん。四人で何とか回してるって感じ」


 玲苑が答える。


「人が少なくて大変だから、水葵が入ってくれると嬉しいなー」


 廉が子犬のような目で見つめてくる。


「水葵が入ってくれると俺も嬉しいけど」

「入ります」


 やっぱり推しのお願いは断れない。


「やったー!楽しみー」


 他愛もない会話をしながら生徒会室の中に入る。


「人数少ないのにこんな広いんだね」

「もともと四人で仕事する用に作られてないから」

「適当に座って食おうぜ」


 適当に空いている席に座る。


「あのさ…。何で玲苑が水葵の隣なの??」

「珍しく廉と同意見だな」


 そう、私の隣に座っているのは玲苑なのである。


「じゃんけんで公平に決まったことだから文句言うの無し」


 玲苑が笑顔で言う。

 あぁ…。玲苑が笑ってる。尊い。


「水葵は通学組?」

「うん」


 星学には寮もあり、通学か寮に住むかを選択することができる。 


「そっかー。残念だなー」


 廉が悲しい顔をする。


「あはは…」


 そんな会話をしていると扉が開いて誰かが入ってきた。


「生徒会室に入っていくのを見かけたから着いてきてみれば…。僕抜きでお昼ごはんなんて寂しいじゃん」


 生徒会室に入って来たのは生徒会長の律だった。


「律くん!?」


 廉がびっくりして声を上げる。


「なんの用だよ」

「そんな僕邪魔だったかな?」


 一触即発は空気が生徒会室に流れる。


「律、水葵が怖がってる」


 玲苑が私を安心させるように抱きしめる。


「玲苑が女子を抱きしめてるところなんて僕初めて見たけど…」


 律が私を見る。


「あー!!玲苑くんが水葵のこと抱きしめてる!!」

「抜け駆けは無しだろうが!!」


 廉と麗が玲苑を剥がそうとする。


「今水葵で充電してるから無理」


 そう言って抱きしめる力が強くなる。

 幸せだけど、そろそろ苦しくなってきますよ玲苑さん。


「生徒会室はイチャイチャするところじゃないんですけど」


 律が冷めた目で見る。


「ちなみに今日は大量に仕事あるから放課後は覚悟しておきなよ」


 笑顔なのに目が笑ってない。


「えー。めんどくさーい!!」


 廉が地団駄を踏み始める。


「ということで水葵ちゃんだっけ?」

「はい」


 すっごく嫌な予感。


「今日の放課後生徒会手伝ってくれない?」


 拒否権はないよという目で見つめてくる。


「わかりました…」

「やったー!水葵が居るならやる気出す!」

「水葵は俺の隣ね」

「はぁ?それはお昼だけだろ?」

「お昼だけとは言ってないけど」

「何で玲苑くんだけー!!」

「こうなったらもう片方の隣をかけて勝負だな廉」

「上等!ボコボコにしてあげる!!」


 廉と麗が私の隣の席をかけて喧嘩を始めた。


「あれ止めなくていいの?」

「そのうち収まるからほっけば」

「そろそろ離していただいてもよろしいでしょうか…?」

「嫌だって言ったら?」


 あの意地悪な顔で笑う。


「あ、連絡だけど後二人手伝いに呼んでるから」

「え…。水葵以外にも来るの…?」

「うん。僕と同じクラスの三栗屋(みくりや)さんと君たちと同じクラスの橋達さんに頼んでる」


 橋達は確か結月の苗字…。三栗屋って誰だっけ…。思い出せそうで思い出せない。

 多分名前聞いたらあーってなるタイプのやつだ。


「じゃあ授業が終わったら生徒会室に来てね」


 手をヒラヒラ振りながら律が生徒会室を出ていった。


「今日は長丁場になりそうだねー」

「どうせ今日も下校時間は過ぎるだろ」

「え、普段生徒会ある日って何時に帰ってるの?」

「早くて七時、遅くて九時かなー」

「そんなに遅いの!?」

「四人しか居ない割に大量に仕事があるからね」

「そうなんだ」

「水葵は家に連絡しなくていいのか?」

「うん。二人とも夜遅いし」


 本当はこの世界に来てから親らしき人には会っていない。

 家も私以外が住んでいた形跡はなく、元から私が一人で住んでいたらしい。


「そろそろ昼休みも終わるし教室戻ろー」

 荷物をまとめて生徒会室を出た。

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