厄介な双子
どうやら私の存在は、存在していたが名前が無かったモブのようだ。
せめてお友達の一人や二人居てほしかったな…
初日に玲苑に変人呼ばわりされたことも相まって私に話しかけてくる人は居なかった。
そりゃそうですよね。生徒のお手本である副生徒会長に「変なやつ」呼ばわりされたやつに話しかけるやつ居ないですよね。知ってました。
「はぁー」
「ねぇねぇ。昨日玲苑に変なやつって言われてたけど何したのー?」
「何したと言われましても…」
「何もしてねぇのに玲苑が変なやつ呼ばわりするわけ無いだろ」
「ごもっとも」
え、何この状況。今話しかけてきたのって剣兄弟でしょ…?また私悪目立ちしてるんじゃ…
「お前一人で食う気か?」
「まぁ、変なやつにはその選択肢しか無いので」
「この子面白いねー麗」
「玲苑に変なやつ呼ばわりされてる時点で面白いだろ」
「確かにー」
全然笑い事じゃないんだけど…
剣兄弟世界的に有名な企業の御曹司。恋愛小説でよく出る定番の設定。ヒロインにしか双子を見分けることができない的な?
剣兄弟も例に漏れず、見た目が似ている。てかほぼ一緒。作者もたまにどっちがどっちかわからなくなるって言ってたし。結月はよく見分けられたなって感じ。
まぁ、この小説を何十回も読み返してる上に漫画化された本も全部買った私を舐めないでほしい。
「で、この変なやつに何の用でしょうか」
「決まってるでしょ!一緒にご飯食べよ!」
「ぇ゙」
「その前にトイレ」
「僕もー」
私に拒否権は…?
私の予想だとこのタイミングで二人入れ替わるはず…。多分わかる…はず。どうしよう外したら。
でも、ここで外しておくことで逆に目立たなくなるのでは??でもなー。嘘が超下手なんだよなー。
「たっだいまー」
あ、絶対に入れ替わってる。
「麗遅いし二人で先に行かない?」
どうしよ、どうしよ、どうしよ、どうしよ
「水葵?」
「い、いいの?廉くん待たなくて…」
「……」
「あれ…違った…?」
やべっ本当に間違ったパターンかこれ。どうしよう…
「二人して何黙ってんだよ」
「ちょっと来て」
「何だよ…」
どっちなのかはっきりしていただいていいでしょうか…
「よくわかったじゃん」
いつからそこに居たのか。笑顔でこっちを見ている玲苑。
学校じゃなかったら叫んでます。なかなか笑わない玲苑の笑顔。すごい破壊力…
「じゃあやっぱ入れ替わってたんですね…」
「何で二人にはタメ口で喋ってるのに俺には敬語なわけ?」
「それは…」
あなたが推しだからです。なんて言えたら楽なんだけどさー。
後ろから手が出てきたと思ったら急に抱きしめられた。
「やっぱ水葵は面白いねー」
「帰ってきてたのかよ玲苑」
「まぁね」
「こいつは俺らがもらう」
「そう」
玲苑がどうでもいいというように言い放つ。
もうちょっと私に興味を示してくれたって良くない!?
「てことで水葵はもらってくねー」
私は廉に手を引っ張られて教室を後にした。