推したちと同じクラスになっちゃった
どうやら今は物語が始まる少し前らしい。モブはモブらしくクラスの端っこでこっそり生きようっと。
ドンッと誰かに勢いよくぶつかってふっとばされた。
「あ、すみません!!」
やべ、メガネ落とした。目が悪いのはこの世界に来ても変わらないんだ…
「大丈夫?」
「うぇ??」
ちょっと待て、この声…
「見えるようになった?」
メガネを掛けられてクリアになった視界。メガネを掛けてくれた彼の顔は意外と近くにあって…
「玲苑だ、本物だ、、」
そう、私のメガネを拾ってかけてくれたのは玲苑だったのだ。
え、推しにぶつかった。私のダサいメガネを拾ってかけてくれた。神ですか?控えめに言って神。
「??本物だけど、何言ってんの?」
「ですよね本物ですよね生きててくれてありがとうございました」
「変なやつ」
私今喋ってる推しと喋ってる。まじか。
「始業式遅れるけどいいの?てか俺始業式仕事あるからじゃ」
「はっ!」
玲苑に気を取られて完全に忘れてた。え、遅れたらどうしよう。私さっきおかしなこと言ってなかったっけ??あー。終わった。喋れただけで奇跡に近かったのに…
何とか遅刻せずに学校にたどり着くことができた。その勢いのまま始業式へと向かう。
やたら長い校長先生の話が終わり、生徒会長がマイクを握ると空気が変わる。まるでみんなその瞬間を待ちわびていたかのように真っ直ぐに生徒会長を見つめる。みんなから熱い視線を向けられても笑顔を崩さない流石生徒会長。
でもさ、律を見守るように立ってる玲苑のあの感じ。最高だわ。
「それでは頑張ってくださいね」
うーわ。これ何人か倒れたんじゃないの?
律が頭を下げると、鼓膜が破れるほどの大きな拍手が起こる。
まぁ、どうせみんな律のことしか見てないんだろうな。まぁ、こっちは玲苑推しなんで好都合ですけどね。
教室に戻ると、みんな一斉に雑談を始める。
完全に置いてけぼりなんだけど。それよりも…結月と同じクラスだったなんて…超ラッキーじゃない?結月が一緒のクラスに居るなら生きていけそう。
大体の人たちが立って話をしているけど、私の隣の席は誰一人として座っていない。
「あ、今朝の変なやつ」
「え…?」
まさか玲苑と同じクラス…?嘘でしょ?
「そこあんたの席?」
「うん??」
「何で疑問形なわけ?まぁいいけど。名前は?」
「い、一条水葵です。あと、私は変なやつじゃありません」
「そう。よろしく」
「よろしくお願いします」
もうちょっと反応してくれよ…
冷静に、冷静に。まぁ、初手でつまずいてるから今更気にしてもあまり変わらない気もするけど…
「あの玲苑が女子に話しかけてるよー」
「明日雪でも降るんじゃねーの?」
「玲苑ってあんな地味な子が好きなのかなー?」
「んなわけねぇーだろ?」
「さっき今朝のって言ってたよ?」
「たまたまだろ」
「なんか楽しくなる予感」