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第85話「道化」 “Climactic Battle: Part 1”

ご覧頂きありがとうございます。

 俺達はエーシルの前に立っていた。


 この場に漂う異様な空気。


 まるで全てを支配しているかのような圧倒的な威圧感。


 それが、エーシルという存在を物語っていた。


 ――コイツの力量が測れない。


 単純に強大な力を持っているから、というわけではない。

 そう、何かを隠している――そんな気がしてならなかった。

 あまりにも不気味すぎる。 その面の下に何が隠されているのか。

 曖昧な表現かもしれないが、それが俺の抱く違和感だった。


「……言っておくがエーシル、俺はもう以前の俺じゃない」


『それは私のセリフです。私は今やこの世界を管理している者。あなたなんて相手になりませんよフィ――』


 不意打ちだ。


 迷いなく、俺は詠唱する。


「『死を呼ぶ回復魔法(デスヒール)』ッ!!」


 しかし――。


反射魔法(リフレクション)


「……な…………」


 俺の魔法が、跳ね返された。


 ――反射した!?


 不意打ちのつもりで打った魔法だ。

 ズル?卑怯?

 そんなものどうだっていい。


 コイツを殺せるなら、どんな汚名も甘んじて受け入れてやる。

 だが、コイツは俺の魔法をそのまま俺に返してきた。


『だから言ったでしょう。……私に魔法は通じません。私はこの世界の管理者。この世界にある魔法は全て熟知している。』


「アスフィッ!?」


 エルザの焦る声が耳に届く。

 俺は膝をつき、一瞬意識が遠のく――が。


「……大丈夫だ、エルザ……俺に任せろ」


 体が動く。


 ……また発動したな。


『……なに?』


 エーシルは、初めて僅かに眉を動かした。

 意外だと言いたげな顔をする。


 ――そうだろうな。


 コイツは知らない。

 俺が前の世界で、何をしてきたのかを。


 俺は回復魔法の才能においては、マキナのお墨付きだ。

 そして、俺には……とっておきのアビリティがある。


【アビリティ:自動蘇生(オートリバイブ)

・ライフがゼロになった時、所有者の意志とは関係なくその場で生命活動を再開する。


 通常、『ヒール』では癒せない傷も、強制的に癒し、何事もなかったかのように生命活動を開始するチートアビリティ。


 たとえ、体を真っ二つにされようが――

 全身を真っ黒に焼かれようが――

 水の中に沈められようが――


 俺には関係ない。


 俺のライフがゼロと判定された瞬間、このアビリティは発動する。


 良く言えば、俺はどれだけ攻撃を受けようと、死なない。

 悪く言えば、どれだけ死にたくても、死ぬことさえ許されない。


 人によって感じ方は違うだろう。


 「死なないなんて最高だ!」と思う者もいれば、

 「死ねないなんて最悪だ!」と思う者もいるだろう。


 ……俺は当然、後者だった。


 このアビリティを、その身をもって体感すれば――

 誰もが、きっと俺と同じ答えに行き着くはずだ。


だが、今回ばかりは感謝しよう。


「じゃあ、続けようか……道化エーシル」


『……フィー、辞めましょう』


「なに?」


『あなたは死なない、私も死なない。こんな無駄な争いは辞めましょう。心が痛むだけです』


「……それはお前が死んでから考えてやる」


『…………やはり今回もそうきますか」


(今回も……?)


『では心を折るまでデスネェッ!!』


 エーシルはにたりと笑い、指を振る。


『セレクション。(デス)!』


「うっ……!?」


 突然、体が重くなる。


 いや、違う。


 呼吸が、できない!?


(これは俺の「『 消失する回復魔法(ヴァニシングヒール)』」ッ!?なんでこいつが俺の!?)


『命を扱えるのはあなただけではないんですよネェ!この世界の管理者である私はなんでもできる……フハハハハハハッ!!』


 喉から血が溢れる。


 視界が真っ暗になる。


 ……だが――。


 次の瞬間、俺は立ち上がっていた。


『……やはり立ち上がりますか。心が痛みますが仕方ない。さぁ、いつまで耐えられますかね?』


「……はっ……望むところだぜ」


『セレクション。(デス)

『セレクション。(デス)

『セレクション。(デス)……』


……

…………

………………


 倒れては復活し、倒れては復活する――。


 この光景に耐えられなくなったのか、ルクスとエルザが俺の前に出た。


「……やめろ……俺はまだ負けてない。俺の後ろにいろ、俺は死なない。大丈夫だ」


 自分でも何を言っているのか分からない。意識が朦朧とする。視界が明るくなっては暗くなるの繰り返し。


 だがそれでも、コイツらを戦わせるわけにはいかないという事だけは分かる。

 それだけは……。


 もちろん、ルクスとエルザは納得のいかない様子だったが――。


『……賢明な判断ですネェ。これはもう人間(・・)の出る幕では無いのです……これは世界の運命の戦い。大丈夫、フィーを大人しくさせた後、あなた達もきちんと殺して差し上げます。……そうすれば私はきっと彼女を救える……』


二チャーと笑う道化エーシル。


「……そうは……させない……」


 『そう来ると思っていました。では、再開しますよフィー』


「俺もやられっぱなしは嫌なんでね。ここからは反撃させてもらう」


『……どうぞお好きに』


 攻撃が効かないわけではない。

 反射魔法を唱える前に、先手を取れれば――


「デス――」


『――反射魔法(リフレクション)


 くそ……ダメだ。


 俺が唱え終わるのと同時に、いや、まるで俺がこれから何を唱えるのを分かっているかのように、やつは必ず詠唱してくる。


(クソ……不気味な野郎だ。未来でも見えてんのかこいつ)


せめてやつの気を逸らすことができれば――


 だが、この戦いでルクスとエルザを前に出すわけにはいかない。


 ならば、どうする――!?


『――水よ』


「……なに……!?」


 聞き慣れた透き通った声。


 そして、突如として現れた水の牢獄。


 そこに――道化エーシルは囚われていた。


(……この声はアイリス!?)


「アイリス!?無事だったか!」


『はい……遅れてすみません、アスフィーさん……しかし、あなたの考えは分かりました。今が好機です』


 流石だ、アイリス――!


 水の中では魔法を唱えることはできない。


 ならば――これで、終わりだ。


「『死を呼ぶ回復魔法(デスヒール)』ッ!!」


『あゔぁ…………!?』


 水中の牢獄で、力なく浮かぶエーシル。


 その姿は、誰が見ても――"死"だった。


『ふぅ……やりましたね、アスフィーさん』


「…………ああ」


 ……だが、本当に終わったのか?


 何かが――引っかかる。 なんだこの違和感は。

ご覧頂きありがとうございました!!

物語はクライマックスへ。


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