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攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。-俺は何度でも救うとそう決めた-  作者: 水無月いい人
第六章 《第一部》ヒーラー 絶望と反撃の覚醒篇

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第76話「エルザ・閑話」「エルザ視点」

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私の名前はエルザ・スタイリッシュ。

今は無きミスタリス王国の女王だ。

私には好きな人がいる。彼の名はアスフィ・シーネット。

最初に出会った時は、弱々しい子供だと思った。

私の方が強い!上だ!……と感じた。


そんな彼は今、全てを失い生きる希望を失ってしまった。

仕方の無いことだろう。彼を愛する人を、彼が愛する人を皆失ってしまったのだから。

その中に私もいた筈だった……だが私は生き残った。

生き残ってしまった……そう感じた。


エルザ・スタイリッシュという人間は昔から気が強い。

私ならなんでも出来る、やってみせると。

大袈裟かもしれないが、私の前に立つものは全員敵だ!

と思っていた時期もあった。

しかし、そんな私も随分と変わってしまった。

愛する人が出来てしまった。私は彼を、アスフィを守りたい。


レイラを、ルクスを、母親を失ったアスフィを……。

私に何ができるかは分からない。でも今は彼の力になりたい。

……出来るなら彼と一生を添い遂げたい。

今の彼は正直見ていられない……年齢に相当するものだ。

まだ子供なのだ、仕方の無いことだと思う。

今はどういう訳か大人びて見えるがな……。

だが、私はあの日……初めて出会った時から何かを感じていた。

見た目は子供なのにまるで大人からする気配。本当にこの子は子供なのかと疑った。

私は人より少しだけ目がいい。観察力というのだろうか。

他人の仕草やクセ、あらゆるものが気になってしまう。

そしてそれを口に出してしまい、周りから注意される。

空気の読めないやつだと。


次は私の尊敬する人の話でもしようか。私にはおじいちゃんが居た。祖父、名をエルブレイド・スタイリッシュ。

おじいちゃんは幼い私に剣を教えてくれた。

……いや、教えられたの方が正しいのかもしれない。

私は昔、剣が嫌いだった。理由は痛いから。

おじいちゃんはハッキリ言って鬼だった。

道場でもそれは有名で剣鬼(けんき)とも言われていた。

ミスタリスの道場で私をしごく毎日。私は何度逃げ出し、泣いたことだろう。その度に頭を撫で、大丈夫と慰めてくれたのがルクスだ。


……そうだな、今はおじいちゃんの話をしよう。

おじいちゃんはミスタリスの民からも尊敬された人だった。

女王となった私なんかよりずっと慕われていた。

おじいちゃんの名前はミスタリスだけじゃない。

この世界で知らない者はほとんど居ないだろう。

それは、冒険者時代にミスタリスという国を立ち上げたからだ。ミスタリスとなる前、元は貧民街だった。

貧しい国として有名だったらしい。

おじいちゃんが冒険者として功績を挙げたことで、生まれた国なのだとか。その功績とは、パーティーを組まず、一人で魔王の城に殴り込みに行き、魔王の幹部を皆殺しにしたそうだ。


そんな人類最強だったエルブレイド・スタイリッシュは、

もちろん勇者候補に挙げられた。

しかし、おじいちゃんは断ったらしい。当時その話を聞いた私はびっくりしたものだ。

おじいちゃん曰く、『めんどくさい』とのことだった。

その頃、冒険者協会という組織はまだ存在していなかった。

魔物や魔獣が蔓延る(はびこ)世界。

自分の身は自分で守る、それが当たり前の世界。


当然今ある冒険者を格付けしている等級も当時はまだない。

もしその時代にそんなものがあったなら、おじいちゃんは間違いなくSS級はあったろう。唯一魔王を倒せる者とまで言われた人だ。


では何故今も魔王を倒せていないのか?私はおじいちゃんに聞いてみた。


『……この世界に魔王が必要ないと誰が決めた?魔物や魔獣の(たぐい)は本当に魔王の仕業(しわざ)なのか。若い頃のワシには分からんかった』


とのことだった。……それは今も分からない。

現在も、魔物や魔獣が出現する理由は一切の謎とされている。

冒険者協会の推測では、魔王が生み出しているとしている。

だが、これはまだ明らかになっていない。

この謎を明らかにする為に、勇者となる者を集め調査しているらしい。


勇者は現在仲間と共に魔王の城を調査をしに行っている。

しかし、もう調査に行ってから二十年近く情報がないらしい。

その上、冒険者協会曰く(いわ)勇者との連絡も着いていないそうだ。

その勇者達の状態を調査する為、勇者のメンバーに加えるという名目で勇者調査隊として、レイモンド・セレスティアが選抜された。拒否不可で、だ。


レイモンドが選抜された理由は強さではない。

もちろん強さも相当なものだ。

魔法において彼の実力は五本の指には入るらしい。

しかし、一番の理由は人選がレイモンドしか居なかった。

冒険者が急激に増えてきたのはここ五年程前から……。

おじいちゃんが亡くなったという報せ(しら)が世界に広がり始めてから冒険者が一気に増えたのだ。

冒険者協会が設立されたのは二十年程前。

最初は『水の都フィルマリア』にて設立された。

それが今やあちこちにある。ミスタリスにも一応あった。


冒険者協会が設立された目的は、魔王の城を調査する者を集う為らしい。

しかし十五年程適任となる冒険者は現れなかった……。

レイモンドが選ばれたのはそれが理由だ。

私も勇者パーティーの名前はレイモンド以外知らない。これはルクスに聞いた話だからな。


さて、話が逸れてしまったな。

私とおじいちゃんの話はまだまだ続く。

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