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攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。-俺は何度でも救うとそう決めた-  作者: 水無月いい人
第四章 《第一部》ヒーラー 運命の神域篇

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第55.5話「水の都最終決戦 Ⅱ」

ご覧いただきありがとうございます。最後までアイリスをお楽しみ下さい。

「図星をつかれて怒るのですか? 仮にも神なのに?」


ルクスの冷静な声がアイリスを射抜くように響いた。その一言には、神を前にしても一歩も引かない強い意志が込められていた。


「私は貴方のような人が好きではありません。人間を見下した態度を取るくせに、心の奥底ではその人間になりたいと渇望している。図星をつかれると怒る……素直になればいいじゃないですか。人間になりたいと」


『…………黙りなさい』


アイリスの声が低く震えた。だが、ルクスは一切怯むことなく、さらに追い打ちをかける。


「いえ、黙りません」


「おい、ルクス、これ以上はやめろ! ……エルザも止めてやれ!」


焦る俺の言葉をよそに、エルザはルクスを止める気配を見せなかった。仁王立ちのまま、冷静な声で言う。


「……言わせてやれ、アスフィ」


エルザのその態度に俺は内心で歯ぎしりする。このままではルクスが殺されるかもしれない。それでも、ルクスの“口撃”は止まらなかった。


「アイリス、あなたが人間になりたいなら、なればいい」


『…………神は万能です。しかし、人間にはなれません』


「それはアイリスのプライドが邪魔をしているだけですよ。そんなもの捨ててしまえばいい。なりたいならなればいいじゃないですか」


ルクスの言葉には、アイリスの心を動かす力が込められていた。その真っ直ぐな眼差しが、アイリスに向けられる。


『……わたくしには『水の都フィルマリア』を元に戻すという目標が――』


「そんなものもうありません。……ほら見てください、アイリス。ここは湖です。もうあの街も住民も、どこにも存在しないんです。幻想に囚われるのはやめましょう」


ルクスは静かにアイリスを促した。


「……辺りを見てください、アイリス」


アイリスが視線を動かすと、そこに広がっていたのは、一面の湖だった。太陽の光が水面に反射し、眩いほどに輝いている。しかし――それだけだった。


湖以外には何もない。建物も、街の喧騒も、そこに生きていたはずの人々の気配すらも消え去っていた。


ただ静寂だけが広がるその光景に、ルクスの声が再び響いた。


「これが今の現実です……」


『…………そう……ですね』


「人間になりたいならなれば良いです。まずは形から入っていくのが大事だと、誰かが言っていました」


誰だよそれ、とは言えない空気だった。


ルクスはそっとアイリスの頭に手を置き、優しく撫でた。その仕草にはどこか母親のような温かさが宿っていた。


『……なれるのでしょうか』


「なれます。必ず」


その言葉に込められた確信が、アイリスを動かす。


『…………分かりました……わたくし、人間になります』


「……え、そんなことできるのかよ」


『……ただし、フリをするくらいしか……完全に人間になるのは不可能です』


「それでいいじゃないですか。なりましょうよ、人間に。私が一から教えてあげます。なぜなら私はお姉さんですから」


ルクスはアイリスを強く抱きしめた。その光景はまるで姉妹のように見えた。


……抱きしめられたアイリスは、目から静かに水を流していた。




【水神ポセイドンは孤独の神だった。 かつて『水の都フィルマリア』は、人々の歓声と活気に満ち溢れていた。その住民たちは、水神ポセイドンによって救われた者たちの集まりだった。


それは、砂漠で遭難し命を落としかけていた者、魔物や魔獣に襲われて絶望の淵にいた者たち――。

水神ポセイドンは、助けを求める人々の声を聞き、次々と救いの手を差し伸べた。そして、人々は神として彼女を崇め、その恩恵を心から感謝していた。


しかし、水神ポセイドンはただの救済者ではなかった。彼女は人々を愛し、彼らと心を通わせることに喜びを見出していた。神でありながら、人間の生活に溶け込み、共に笑い、共に泣き、その交流を誇りに思っていた。人々もまた、そんな彼女との交流を何よりも大切にしていた。


――だが、その日常は、ある日突然終わりを告げた。

何者かによって『水の都フィルマリア』は滅ぼされたのだ。


民は全て失われ、街も跡形もなく消え去った。

水神ポセイドンは、悲しみのあまり涙を流し続けた。それは、彼女にとって唯一無二の居場所を奪われた悲嘆の証だった。


時が経っても、愛していた民たちの姿や、街の賑わいを忘れることができなかった彼女は――その記憶に囚われたまま、自らの手で『水の都フィルマリア』を再び創り上げた。

しかし、それはあくまで幻影。かつての温もりはどこにも存在せず、虚しさだけが彼女の胸を満たしていった。


そうして永遠に過去を追い求める存在と化した水神ポセイドンは、次第に孤独と絶望の中で生きる道を選んだ。


……そして、彼女は名乗った。希望(アイリス)と――】

ご覧いただきありがとうございました。

アイリスには色々な花言葉があります。


そしてルクスがお姉さん?次回、『ルクス、お姉さんになる』巻。(嘘)

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