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第4話 「母との約束――最強のヒーラーを目指して」

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レイラと剣術を学び始めてから二年が経った。俺は十二歳、レイラは十三歳。彼女の成長ぶりは凄まじく、父とほぼ互角に渡り合うほどになっていた。


まだ父が本気を出していないことは俺にも分かるが、それでも彼女の実力は驚異的だ。木刀とはいえ、あの速度での打ち合いは正直見ているだけで寒気がする。俺がこの二年間で一番学んだことは……木刀が当たるととんでもなく痛いということだ。


***


「ありがとうございました!」


「ありがとうございました!」


俺とレイラは父に一礼し、本日の特訓を終えた。汗で額が濡れ、息を整えながら俺はレイラに話しかける。


「ねぇレイラ」


「なに?」


「大人になったらやっぱり冒険者になるの?」


「当たり前だよ。強くなっていっぱい稼いで……両親を楽させてあげる……の……」


「そうなんだ。レイラは偉いなぁ」


この二年間で俺たちはだいぶ仲良くなった。彼女も敬語を使わなくなり、親しみやすさが増した気がする。正直、それが嬉しい。そしてもう一つ嬉しいことがある。


「レイラ、お風呂入らない?汗かいたしさ」


「斬るよ?」


「……冗談だよ、ごめん」


彼女の成長は剣術だけでなく、体の変化も凄まじい。特に胸が……いや、この話はやめておこう。うちの母もそうだったが、これが父の血なんだろうな。ありがた迷惑な話だ。


「みんなぁご飯よ~」


「では、レイラは失礼します」


「あら、レイラちゃん食べないの~?」


「はい、奥様ありがとうございます。今日は家で食べます」


「そう、残念。またいつでも食べに来てね~」


「はい、その時はぜひ」


レイラは相変わらず人見知りなところがある。特に母との距離感が掴めていないようで、彼女の言葉の固さからそれが伝わってくる。俺たちとは毎日顔を合わせているが、母とは挨拶くらいしか会話がない。


「私あの子に嫌われているのかしら?」


「いや、そういうんじゃないだろう。年頃の女の子だし、仕方ないさ」


「うんうん、母さんを嫌う要素なんてひとつもないよ」


「あら~?そう?ありがとう二人とも」


***


早朝。今日はレイラが用事でいないため、久しぶりに父とのタイマンだ。


「今日はレイラが居ないからな。厳しめに行くぞ」


「お、お手柔らかにお願いします」


そんな俺の願いは当然届くはずもなく、父は本気で容赦なかった。


「ありがとうございました!」


俺は全身に痛みを覚えながら礼をする。しかし俺には理由がある。自分の力で誰かを守るために強くならなければならない。その相手が誰かは分からないけど、そうしないといけない気がする。……それにしても、この父は本当に容赦ない。いつか秘密を握れたら母さんに告げ口してやると、内心密かに誓った。


「今日この後、母さんから魔法を教わるのか?」


「もちろん!」


俺は剣術だけでなく、母から支援魔法を教わることにも力を入れている。”才能は一人一つ”、そんな事は分かっている。それでも俺は諦めない。あの日、レイラに喝を入れられたことで俺の心は変わったからだ。


……

…………

………………


「じゃあ今日もやるわよ~」


「お願いします!母さん!」


母さんはヒーラーだが、俺と違って支援魔法を使いこなすことができる。回復しか使えない俺とは違う。そんな母を俺は尊敬していた。


「アスフィちゃん、母さん思ったのよ」


「どうしたの、母さん」


「回復魔法を極めるのはどうかしら?」


「えっと、『ヒール』と『ハイヒール』を?」


「そう、もちろんそれもあるわよ~?でもね、アスフィちゃんは回復の才能が私より高いわ。だからね?回復魔法に特化した、みんなを笑顔にできる癒しのヒーラーになればどうかしら?」


「それはつまり、回復専門のヒーラーってこと?」


「ええ、そうよ。何れ『ハイヒール』以上の魔法も覚えられると思うの。母さんが『ハイヒール』しか回復魔法を覚えていないから、それ以上は教えられないけどね~」


母さんの言葉には、少しだけ寂しさが混じっていた。それでも、俺には明確な決意が芽生えた。


「世の中には私なんかよりもっと凄いヒーラーがいるのよ~?だからね、アスフィちゃんは冒険者になって旅に出て、その凄いヒーラーになるべきよ!」


「うーん、ヒーラーって儲かるのかな」


「なんとかなるわ~」


俺がヒーラーになったきっかけの言葉だ。この日から、俺は「最強のヒーラーになる」と誓った。母さんの期待に応えるために。


それから毎日、剣術の修行が終わると、俺は『ヒール』と『ハイヒール』の特訓に励んだ。特に回復魔法においては熟練度を上げるため、何度も練習していた。魔法を行使するには詠唱が必要不可欠だが、熟練した魔法使いの中には詠唱破棄をする者もいる。


俺は母の教えのおかげで、五歳の頃には詠唱破棄を習得していた。母さんもまた、全ての魔法を詠唱破棄できる。冒険者協会では母さんはC級とされているが、父さんによると実際はA級クラスだと言う。なぜかと尋ねてみたところ、父さんはこう答えた。


「本来、C級の魔法使いは詠唱破棄なんてできんからな」


ヒーラーという職業は評価が難しく、母さんは過小評価されているとのこと。しかし、少なくともこの町では、母さんが最も優秀なヒーラーだと俺は確信している。父さんもこの町で一番強い冒険者だし、母さんが一番優れたヒーラーだ。小さな町ではあるが、流石に父母の力を感じる。俺はそんな二人の両親を誇りに思う。


ある日、俺は母さんにこんなことを聞いてみた。


「そういえば、母さんの支援魔法って何種類あるの?」


「ん~っとね~、十種類くらいかしら?」


「十種類も!?すごいね」


十種類、それがどれほど凄いことなのか、この時の俺はまだ分かっていなかった。だが、後にその凄さを実感することになる。


「じゃあ、母さん、僕は”みんなを笑顔にできる最強のヒーラー”になるよ!」


「みんなを笑顔にできる最強のヒーラー?いいわね、その意気よ。流石はうちのアスフィちゃんだわ~夢が大きくて頼もしいわ~」


母さんは、俺の夢を本気で応援してくれていた。俺の「最強のヒーラーになる」という決意に、母さんの目は本当に嬉しそうだった。


子供が言っていることだと、母さんもわかっていたのかもしれない。しかし、それでも母さんは、俺を本気で信じ、期待してくれていた。それが、俺にとっての大きな支えとなり、力になった。


「最強のヒーラーになる」


その誓いは、俺が冒険者として旅立つための第一歩だった。これが、母との最後の誓いだった――。

レイラです。

 アスフィさん、今日も剣に魔法に全力でした。少しだけお風呂の冗談に困りましたけど……そんな優しい彼の夢を、私も応援しています。


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