Re:第十四話【エルザ】
今回の話はエルザ。
魔王城と化したミスタリス城を出て、俺たちはルクスを探す旅に出ることにした。
「ルクスがどこにいるのか、あてはあるのか?」
エルザが俺に問いかける。
正直、この手紙一枚でルクスの居場所が分かるはずもない。そもそも、この手紙はエルザが再現した"偽りの城"で見つけたものだ。
本物かどうかすら疑わしい。
けれど、"何か"がある――そう思わずにはいられなかった。
「……アスフィ、聞いているのか?」
「……あ、ああ。悪い。ちょっと考え事をしてた」
エルザの声で我に返る。
「アスフィ、レイラ達はずっとアスフィの味方だよ?だから、あまり思い詰めないで?」
レイラが俺の顔を覗き込むように微笑んだ。
その優しさに、心の奥が少し軽くなる。
「ありがとう、レイラ」
俺は彼女の頭を軽く撫で、視線をエルザに向けた。
「エルザ、この城はかつてのミスタリスを再現してるんだったな?」
「うむ。そのはずだ。このルクスの部屋や城内の様子を見る限り、間違いないだろう」
――なら、何故だ?
"再現"しただけのはずのこの城に、本物の手紙があるのは何故だ?
その答えは、エルザがこの手紙の存在を元の世界で知っていたということを示している。
それはつまり――エルザが、"観測者"として何かを隠している証拠なのではないか。
俺の胸に、言いようのない疑念が芽生えていた。
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「……エルザ、お前の才能ってなんだ?」
核心に迫るため、俺は静かに問いかけた。
「私の才能か?それはもちろん、剣術の才能だろう」
「何故そう言い切れる?」
「……どうした、アスフィ。お前、何か変だぞ?」
「いいから答えてくれ」
エルザは困惑した表情を浮かべたが、少し考え込む。
「うむ……強いから、だと思うが?」
「違うな」
俺は冷静に言い切った。
「何が違うと言うのだ! 私本人がそう言っているのに!」
「レイラは獣人だ。獣人としての剣術と"獣化"という手段がある。だが、それでも今のレイラではお前に勝てない。剣聖となった今でもだ。何故だか分かるか?」
エルザは黙り込む。
「いい加減正体を明かせ――"観測者"、エルザ・ヒナカワ」
「……何を言っているのだ?」
エルザは首を傾げるが、その仕草にはどこか余裕が感じられた。
彼女の姿が、次第に"異質なもの"に見えてくる。
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世界は、エルザという存在を"二人"存在させることを許さない――
その事実が、徐々に俺の中で確信に変わりつつあった。
エルザがその身を"魔王"として転生させられたのも、すべては"世界の都合"だ。
エーシルが仮面を被ることでその正体を隠し続けるように――
エルザという存在もまた、"一つに統合されるべきもの"として世界に操られているのではないか。
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「これだけじゃまだ足りないか?なら決定的な証拠を出そう。この魔王城で見つけた手紙――」
そう言いかけた俺の言葉を、エルザが遮った。
「待て!私は本当にエルザだ! エルザ・スタイリッシュだ!」
……そうか。こいつはいつもフルネームで自分を名乗る。
それは、"自分の存在"を確定させたいからだ。
「いつもフルで名乗るのは、自分が"エルザ・ヒナカワ"ではないことを隠すためか?」
「……」
「お前はどっちだ?ヒナカワなのか、それともスタイリッシュなのか?」
俺の問いに、エルザはしばらく黙り込む。やがてゆっくりと俺に歩み寄り、手を差し出した。
「どちらも私だ。だから――これまで通り、仲良くしてくれ」
エルザの言葉は、まるで"全てを覆い隠す"かのように響いた。
ご覧いただきありがとうございました。
皆さん、実はエルザって今まで自身の才能について明かしていなかったのをご存知でしたか?
今回はそんなエルザについての核心に迫る回でした。
詳細については第14話参照です!
投稿頻度落ちてすみません!新作の方も書いているので汗
よかったら御覧ください!では!