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第22話 「発情期」

それからレイラたちはエルザと出会い、ミスタリス王国へと足を踏み入れた。


新鮮な日々だった。見たことのない街並み、活気に満ちた市場、異国の風に乗る香ばしいパンの匂い。

すべてが新しく、心が躍る。


だが――


「王女って……なんというか、すごい人だよね」


レイラはぽつりと呟いた。


エルザは強い。それは間違いない。

けれど、それ以上に「何を考えているのか分からない」。


あの無邪気とも言える振る舞いの裏に何があるのか、掴みきれない。

彼女を信じてもいいと思った瞬間、同時に確かな"危険"を感じた。


そして、その直感は的中する。


エルザによる、地獄の剣術修行が始まったのだった――。


***


アスフィと出会ってから、本当に色々なことがあった。

つらいこともあったけれど、それ以上に楽しいことも増えた。


今――レイラはすごく幸せだ。

家にいた頃より、ずっと。


たとえ剣術修行が大変でも、アスフィと一緒なら乗り越えられる。

そう思っていた、その時。


「……ねぇレイラ」


「なに?」


「デートしよっか」


「……!?」


レイラは思わず飲んでいたお茶を吹き出した。


***


デート。


アスフィはレイラを街のあちこちへ連れ出した。


(……きっとアスフィはレイラの気を遣ってくれてるんだ)


最近のレイラは、アスフィに迷惑ばかりかけていた。

剣術修行でもアスフィの足を引っ張り、精神的にも弱さを見せてしまっていた。

才能があるからレイラは強い、当たり前の話だ。でも、アスフィに剣の才能はない。きっとアスフィにも剣の才能があればレイラを超えていたと思う。


そんな事ばかり自分に嫌気がさしていたところだった。

でも――アスフィはそれを察してくれていたのかもしれない。


本当に、優しい人だ。


「お?君たち、デートかい?若いねぇ」


通りすがりの商人が、にこやかに声をかけてきた。


(デ、デート……!?)


「はい、今日はお休みなのでお出かけしています」


「あらまぁ、そりゃいいね!そこのお嬢ちゃんもえらくべっぴんさんじゃあねえか!彼女か?はっはっは!」


「でしょ?僕の妻です」


(……え!?)


「ア、アスフィ……?」


(本気なの……?)


舞い上がる気持ちと、羞恥心で顔が熱くなる。

思わずうつむいた。


***


レイラとアスフィは服屋に来ていた。


「ねぇ、レイラ?」


「なに、アスフィ?」


「こ、このワンピースなんてどう――」


「嫌だよ」


アスフィが持ってきたのは、胸元が大きく開いた服。


(……お母さんがよく着てる服だ……)


アスフィは残念そうな顔をして、服を棚に戻した。


(試着ぐらいはしてあげてもよかったかな……?)


そして、次にアスフィが持ってきたのは――


上下ピンクでフリルたっぷりの可愛らしい服。


(……懐かしい……)


初めてアスフィと会った時に着ていた服とよく似ている。


「すごく似合ってるよ!レイラ」


「……そう?ありがとう……」


(なんだか、昔に戻ったみたい……)


それから日が暮れ始め、レイラたちは帰ることにした。


***


部屋に戻り、食事を済ませたあと、アスフィが突然プレゼントを渡してきた。


「……誕生日プレゼント?」


「うん!レイラ、今日で十四歳でしょ?」


(覚えててくれた……!)


レイラは驚きと嬉しさで、言葉を失った。


「もちろん!もう付き合いも長いしね」


「……ありがとう、アスフィ」


両親から誕生日を祝われたことなんて一度もなかった。

ましてやプレゼントなんて――。


アスフィがくれたのは、猫の髪飾りだった。


「うん!すごく似合ってる!なんせ素材がいいからね!」

「……」


レイラは、思わずまた顔を伏せた。


***


その夜。


シャワーを浴びながら、レイラは考えていた。


(レイラはアスフィのこと、どう思ってるんだろう……)


大切な人。友達……でも――好き、なのかな?


分からない。


色々考えているうちに、随分と長風呂になってしまった。

カラダが熱い……。


(アスフィ……)


自然と、彼のことを考えていた。


(まさか……これが発情期……?)


***


「……ねぇ、アスフィ……体がアツい」


レイラはアスフィの布団に潜り込んだ。


「ちょ、レイラ!?」


「アスフィはえっちだもんね……でも今日はいいよ」


そう言って、レイラは自分の胸を触らせた。

アスフィの手が優しく触れる。


「……柔らかい」


「……っ」


(……恥ずかしい……)


アスフィはさらに要求してきた。


「……服の中も……いい?」


「いい……よ」


***


その時――


「遊びに来たよ!アスフィ、レイ……ラ……」


(……え?)


扉を勢いよく開けたのは――エルザだった。


レイラとアスフィの状況を見たエルザは、一瞬沈黙し、次の瞬間――


「パパーーー!!アスフィとレイラがいやらしいことを――!!」


(終わった……)


レイラの顔から血の気が引いた。


***


結果的に、レイラの発情期は勘違いだった。

ただの「のぼせ」だったのだ。


(……良かったのか、悪かったのか分からない……)


もし本当に発情期だったら、あのままどうなっていたんだろう――


そう考えると、またカラダが熱くなってきた

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