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第176話「名も無き者、襲来」

 立ち尽くしたままのエルブレイドを覗き込むエーシル。


「――ハッ!?」

「うぉ!? ビックリした!」

「……ん? アスフィか。……いや、違う」

「……鋭いですねぇ」

「しかし、混じっている。同化には至っておらんようじゃな」


 ちっ。するどいじいさんですねぇ。


(エーシル、『アンノーン』を倒すには彼の協力が必要不可欠です)


 私一人でも十分です。


(他はそうかもしれない。でも、君が恨んでいる男は別です。あの男だけは君だけでは勝てない(・・・・・・・・・)


 ……本当にそうお思いですか?


(ええ)


 …………はぁ。分かりました、えぇ分かりましたとも。


「エルブレイド、僕と――」

「ワシと――」

「「え?」」


 同時だった。


「なんだアスフィいってみろ」

「いえ、エルブレイドからどうぞ」

「……ではワシから。……『アンノーン』を討ちたい。協力してくれ」


 これはこれはまさか向こうからお誘いがあるとは、ねぇ?


(……彼にも何か事情が変わったのでしょう。向こうから申し出があるとは思いませんでした。勿論――)


「お断りです」


(何故ですエーシル!)


「うむ……そうか」

「……協力はしませんが、力は貸しましょう。個人的に譲って頂きたい獲物が居ます。それされ残して頂ければ」

「構わん。して、誰のことじゃ?」

「江四留です」

「なんじゃと! 江四留じゃと!?」

「知っているのですか?」

「いや……まぁ少しな」


 ……この言い方、恐らくかなり存じているようですねぇ。


(ここは深堀りせずにいきましょう)


 何故です? 吐かせるべきです。


(そんな時間はありません。今はそれよりもオーディン、彼女達を止めないと)


 ……どう言いますか? 僕はアスフィだよ〜って行きますか〜?


(彼女達には既に僕らの事はバレています。君のことも)


 ま、でしょうねぇ。ではどうもエーシルです、といって行きますか〜?


(……それもそうですね。ここは正直に行きましょう)


 ……一応冗談だったのですが。


(もうバレているのに隠す必要はありません)


 そうですか。


「エルブレイド、まずは先にオーディン達を止めましょう」

「オーディン……うっ」

「大丈夫ですか?」


 エルブレイドが頭を抑え、しゃがみ込んだ。


「……うむ、心配ない。行こう」


 ***


 一方神々は未だ激しい戦いを繰り広げていた。戦況はオーディンが優勢である。


「アリア、君はそもそも戦いに向いていない。私に勝てる訳無いよ。それにマキナ、記憶であるゼウスを失った君もそうだよ?」

「……その中に僕が居ないのはわざとですか?」

「あ、いたんだキャルロット。ゴメンね! 存在感薄くて忘れていたよ」

「生き返ってから皆、僕の扱いが酷くないかい? ……って聞いてないし」


 キャルロットの言葉は残念ながらオーディンには届かなかった。オーディンは今、マキナとアリアを相手にしているからだ。


「――そこまでです! 皆さん」


 少年の声を聞き、この場にいる全員の動きが止まった。

 視線は皆、少年に釘付けである。


「……ついに覚醒したんだね。しかも、良い兆候で」

「アスフィちゃんは大丈夫なの?」

「我のフィーを返せ」

「おいアスフィくん! 何故来たんだ! ここは危険だ! 下がっていたまえ!」


 うるさいですねぇ。


(……殺してはいけない)


 はいはい、分かっていますよ。


「皆さん! どうか落ち着いて! 事情はこの後時間があれば話します! ですから争わないで下さい!」

「…………アスフィよ、来たぞ」

「思っていたより早いですねぇ」


(ふぅ、さて狩りの時間です)


「言われなくとも」


 宮殿の中に白いモヤが漂い始めた。


「おいおい何だこりゃ!?」

「落ち着けガーフィ。レイラちゃんこっちへ! さぁ! 早くパパの元へ!」

「お前はその子の事しか頭にねぇのか」

「当たり前だ! 自分の子を心配しねぇ親がどこにいるってんだ!」

「……そのおたくの娘さんにお前の声届いてないみたいだぞ。嫌われすぎだろうよ」


 その後も何度もレイモンドはレイラに呼びかけた。しかし――


「……おかしい。こんなに呼んでも来ないなんて」

「それ程、嫌われているってことだろ」

「いや、仮にそうでも無視するような子じゃねぇ。振り向く素振りすらない」

「……確かに、聞こえてないようだな。このモヤのせいか?」


 ガーフィは剣を抜こうとするが、


「しまった。猫のあんちゃんに貸したままだった」

「おいおい、なにしてんだよアスフィの父ちゃんよ」

「るせぇ! ……待て、なにか聞こえる……足音だ。誰かこっちに来るぞ! 警戒しろ!」

「け、警戒つったってよ! 俺は魔法使いだぜ? 前衛はあんたら剣士の仕事だろ!?」

「だからその剣が今ねぇんだって!」


 段々足音が近づいてくる。だが、姿が一切見えない。


「――無駄ですよ、お父さん方」


 どこからか若い男の声が聞こえてきた。


「どこだ!? 姿を現しやがれ!」

「駄目です。僕は戦闘は得意じゃないので」

「なら何しに来た! 敵か? それとも味方か?」


 レイモンドは姿の見えない男に問う。


「僕の役割は皆さんを分断し、少しでも戦力を削ぐことなので」

「……おいアスフィのパパさんよ。どうするよ。敵の目的も姿も見えやしね……おい! 聞いてんのか!? ……ちっ、クソ!」


 ガーフィは考えていた。この場を打開する方法を。




 

 

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