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第159話「二人」

 カンダマキと名乗る少女。明らかに日本人の名前だ……!


 私以外の初めての日本人……敵の可能性もある。けど、どこかで聞いたことがあるような……。


「名乗ったところで侵入者であることに変わりはない!」


 名を名乗れと言ったのはあなたなのにそれは可哀想でしょ……ってとにかく彼を止めないと!


「待ってキャルロット!」

「何故です!? 従者が一人やられ、その上あなたの宮殿に無断で侵入してきたのですよ!?」

「確かに怪しさしか無いけど、話をさせて」

「……分かりました。その代わり怪しい行動を取り次第斬ります」

「うん、それでいい」


 キャルロットは後ろに下がった。


「ごめんね、えっと……マキちゃん?」

「マキでいい」

「そ、そう」


 なんだかやりづらい。やっぱり名乗る程の者ではない人に雰囲気が似ている。


「マキは日本人……でいいんだよね?」

「うん」

「えっと……どこから来たの」

「日本」


 そんな事は分かってるわよ! ……本当にやりづらいんだけどこの子。


「何をしに来たの?」

「彼を探しに」

「……彼って?」

「スドウくん」


 また日本人っぽい人物の名前が出てきた! それも男の子だ。でも聞いたこと無いなぁ。

 というか、探しにってそんなホイホイ来れるところなのこの世界!?


「この世界にはどうやって来たの?」

「言えない」

「どうして?」

「言ってはダメって言われたから」

「……誰に?」

「それも言えない」


 なんだろう、少しイライラしてきたんだけど。


「……斬りますかバステト様」

「やめて」


 気持ちは分かるけども。……多分この子所謂(いわゆる)天然だ。ポカーンとした何を考えているのか分からない表情がそれを物語っている。

 オーディンとはベクトルの違う感情が読み取れない子だ。


「それで、私達に何か用?」

「うん。サリナ、セリナ来てない?」

「どうして私の名を!?」


 いやそれよりも、今セリナって言った!? お姉ちゃんこっちに来てるの!?


「……セリナ、こっちに来てるの?」

「分からない。だから妹であるあなたに会いに来た……けど……無駄足だったみたい。じゃこれで」

「ちょちょ! そんなので終われるか!」

「何」

「もしかして私達以外にもこの世界に日本人来てるの……?」

「……かもね」


 かもねって……。これ以上聞いても無駄そうね。


「分かった。行っていいよ」

「じゃあね、セリナの妹ちゃん」


 ……セリナの妹ちゃん、か。こっちに来てから忘れていたけど何度も聞いた呼ばれ方だ。

 私はいつもそう呼ばれていた。ご近所の人にも、先生も、同級生さえも……。結局私はセリナありきの妹だったのだ。


 ……でも、今は違う。


「待ちなさい、マキ。バステト。ここではそう名乗っているの。だからその呼び方はやめて」

「……分かった」

「分かればいいのよ。……マキ、あなたのその白くて長い髪綺麗ね」

「ありがとう」

「また何かあれば来ていいよ。初めての同郷人だしね」

「……彼が見つかればね。じゃ」


 白髪の少女は宮殿を出ていった。


「結局なにがしたかったのでしょうか」

「分からないわよ……でも、あの子に監視付けといて」

「はい、言い伝えておきます」

「よろしくね」


 あの子、何かある。私の従者は日々キャルロットにしごかれ決して弱くはない。

 それを一瞬で眠らせた。普通じゃない。


「はぁああああああ」

「どうしました?」

「なんか一気に疲れた。あの子、あの男にそっくりだわ。話していると疲れるタイプ」

「あ~なるほど」


 気になることはほとんど聞けなかった。誰よ、あの子に口止めしている人物は!

 ……それにスドウ……くん。聞いたこと無いけどコレも気になる。

 今回のことで分かったのは私以外にもこの世界には少なくとも、さっきのマキとスドウくんとやらの二名が居るということ。


 ますます分からない! ここはどこで神って何よ!!


 ***


『これね』

「ああ、俺はちゃんと教えたぞ」

『全く、いつまで待たせるんだ。三年もかかるなんて思わなかったよ』

「仕方ない。それほど大事と言うことだ」

『ふーん。じゃ、これはもらっておくよ』

「ああ、持ってけ」

『……でもその前に、君邪魔だね』


 緑髪の少女が男を吹き飛ばした。男は岩壁に勢いよく体をぶつけた。


「ガハッ……何をするオーディン」

『才能持ちって厄介なんだよね。人間ってさ厄介なものでさ。それがどんな小さなものでも才能で開花させちゃうんだよね』

「……何が言いたい」

『君もだよ、スドウ・ケンイチ。使ったでしょ? 蘇生魔法』

「……」

『私の力、知らない訳じゃないでしょ?』

「まぁな。長い付き合いだしな」


 男は何とか立ち上がった。


『ほらね。普通なら今ので死ぬんだよ? ……|この世界に魔法は存在しない《・・・・・・・・・・・・・》。それを君は使った。それも蘇生魔法という並外れたモノをね』

「それの何が悪い」

『悪いさ。神である私にしか使えない力。それを君は使えてしまった。きっとこの先、君に子どもができれば君の才能は受け継がれる。そして君の子が子を作ればまた受け継がれる……そうしてこの世界に魔法を使うものが溢れていくのさ。……そうなるとどうあると思う?』

「知らん」

『悪用するものが出てくるのさ。私はいわばこの世界の均衡を保つ存在。世界のバランスが崩れてしまうの私の望むところじゃないんだよ』

「出会ったものを次々と殺すお前がなに戯言言ってんだ」

『それは私に出会った者が悪い。私は死の神の名の下、使命を実行しているまでさ』


(誰が望んでんだよそんな使命……)


『さあ話は終わりだ。私は私の使命の下、君を殺す』

「……なら俺も俺の使命に従うまでだ」

『私に勝てるとでも?』

「勝てるかは分からん。だが、手が無いわけじゃない」

『ふーん。無駄だろうけど』


 男は覚悟を決め、右手に持った剣を握り直すと――


「マキーーーーーーーー!!!!!」

『……何の悪あがきを――』


 男が叫んだ。たった二人しかいないはずのこの場所で。辺りにはゴツゴツとした岩以外に何も無い。


「お待たせ、スドウくん」

『……誰』

「スドウくんの……ファン?」


白髪の少女が現れた。

 

 

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