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第141話「感情迷走」

お待たせしました……続編でございます。

三ヶ月、間が空きましたが物語はまだまだ続きますので、応援よろしくお願いします。


また、結構重要な話なんですけど、話を一から改稿しました。

話の追加なども多少あります。最近読まれた方には関係ない話ではあります(汗)

『シーレンハイル』にて、アイリス、エルブレイド、エルシアの三名が顔を合わせる少し前のこと。


 ---


『アルファ宮殿』を目指しパトリシアを走らせたアスフィとアイリス。


「……で、その『シーレンハイル』という所を通らなければ『アルファ宮殿』には行けない……そうでしたよね、アイリス」

「はい、その通りですアスフィ。この白馬の速さであれば二日もあれば辿り着くかと思います」


 パトリシアの速度はいつかの『虎車』に比べると速度は劣る。

 しかし、安定度は比較にならない。僕達が振り落とされないように気を遣い走ってくれているのが伝わってくる。後ろにはアイリスが僕の背中を後ろから抱く形で乗っている。もしこれが『虎車』であれば落馬ならぬ落虎の心配があるが、パトリシアは全くそんな事を感じさせない。まさに安定感抜群だ。


「……ありがとうございます、パトリシア」


 パトリシアの頭を撫でると、ヒヒィンと声を上げ反応を返してくれる。これもすべてエルザの(しつけ)のお陰なのだろう。


 そんな事を考えていると、パトリシアがゆっくりと速度を落とし足を止めた。


「どうしたんですか、パトリシア」

「……アスフィ、アレを」


 アイリスが後ろから指を差した。アイリスが指差す方を見ると前に誰かが立っていた。その者はフードを被っていて顔がよく見えない。

 

「……|『ゼウスを信仰する者』《ユピテル》ですか」


 正直、そろそろ来るんじゃないかと思っていた所だ。こいつらはどこからともなくやってくる。何が目的なのかも分からない。


 しかし、その者はただ立っているだけで何もしてこない。


「…………何もして来ないですね」

「うーん……もしかしたら僕達に用がある訳では無いのかも知れませんね」

「明らかにわたくし達に何かあるようにしか見えませんが……」


 と言われても何も喋らず、仁王立ち。この者の目的はなんなのか。


「………………フィー」


 ようやく喋ったと思ったら、口にしたのは僕の名ではなかった。


「何者ですか? 僕に貴方のような知り合いは居ませんし、なにより僕はアスフィです」


 しかし、その者はまたも口を閉ざす。


「……アスフィ、気を付けてください。わたくしの勘ですが、恐らくこの方、強いです」

「そうですね、フィーの記憶にあったマジックアイテムとやらを扱ってくる可能性がありますね」


 かつてスタイリッシュ親子を苦しめ、『ミスタリス』を陥落させるまでに至った最凶のアイテム。警戒するに越したことはない。


「………………フィー、お前じゃないのか」

「だからそう言ってるじゃないですか。人違いなので僕達は先に行きますね」


 パトリシアを走らせようとした瞬間――


「うおっ!?」

「きゃっ」


 アスフィとアイリスは地面に尻もちを着いた。


 パトリシアに乗っていた二人がだ。


「いってて……アイリス、大丈夫ですか?」

「はい、わたくしは大丈――そんな……」


 アイリスは言葉を詰まらせた。ここでようやく状況を理解した。

 二人が尻もちを着いた地面には赤い液体が大量に溢れていた。


「…………パトリシア」


 エルザの愛馬、パトリシアが真っ二つにされていた。


「……どうしましょうかアイリス」

「どうしましょうじゃありません! 逃げましょう!! マズイです! 神ではなくなったとはいえわたくしはこれでもエルザやルクスと同じ元S級冒険者です! そんなわたくしでも今の一撃が見えませんでした! アスフィ! 言っていることが分かりますか!? 逃げますよ!!」


 アイリスは早口でまくしたてた。


 興奮気味で僕の腕を引くアイリスに対して、僕は酷く冷静であった。

 友人の愛馬が殺されたと言うのに。普通ならここで涙を流すものなんだろうか。でも……でもさ……。


 ”|ただ死んだだけじゃないか《・・・・・・・・・・・・》”


「…………フィーでは無き者よ。俺は貴様に用はない。フィーを呼べ」

「フィーは僕の中に居る。でも今は出てこられない。つまり、僕を殺せばフィーを殺した事になりますね」

「なっ!? アスフィ!!? 何を言って――」

「そうか。なら死ねフィー」


 男がこちらに向かってゆっくりと歩いてきた。


「――アスフィ!! 逃げますよ!? 挑発なんて真似して一体何がしたいのですか!」

「……僕の心が彼に反応してるんです」

「心……ですか? まさかお兄様の――」

「いえ、フィーでありません……アイリス、逃げて下さい。どうやら彼が用があるのは僕だけの様です。アイリスまで死ぬ必要はありません」


 何故僕はこんなにも冷静でいられるのだろうか。アイリスはこんなにも必死で、懸命で、躍起になっているというのに。


 僕の心は何も反応しない。ただこの前にいる男を殺したくて仕方が無い。……でもそれも表には出ない。


「……先に『シーレンハイル』に行って待っています」

「はい、後で合流します」

「…………死なないで下さい。あなたが死ねば、お兄様も死にますから……」

「大丈夫です。死ねませんので」


 アイリスはアスフィを置いて、男の横を通り過ぎた。

『シーレンハイル』へ向けて……。


「……やっぱり、アイリスに見向きもしない所を見ると目的は僕なんですね」

「…………」

「無視、ですか。傷付くじゃないですか」

「…………」

「僕もあなたには色々と聞きたい事があるので、本気で行かせて頂きます」


 アスフィは杖を強く握り直し、フードの者と対峙する――。

ご覧頂きありがとうございました。

次回、アスフィ戦う!デュエルスタンバイ!

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