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第134話「エルシア・ヒナカワIV」

「どうしたんじゃエルシア!! 何があった!!」

「この者達がエルシアに喧嘩を売ってきたので返り討ちにしました」

 

 地面には黒のフードを被った男が数人倒れていた。

 

「|『ゼウスを信仰する者』《ユピテル》……どうしてこやつらがここに……」

 

 エルブレイドは倒れている者たちに近づき、生死を確認する。

 

「…………死んでおるな。周囲を警戒しながら軽く寝ていたのだが……なぜワシは気づかなかっ……ん?」

 

 エルブレイドはフードの者たちが首にかけているネックレスのようなものを手に取った。

 

「……こいつの仕業か。どうやら気配を消すマジックアイテムのようじゃな」

 

(ワシに悟らせず完全に気配を消すマジックアイテムか……)

 

「お父………………エルブレイド様。この者たちは何者なのでしょうか?」

「悪者だ。……だが、同時に被害者でもある。もし今後同じような事があった時、ワシに言うんじゃ。一人で相手にするのではない。よいか?」

「分かりました、エルブレイド様」

「うむ、分かればいい」

 

 エルシアは敬礼のポーズを取り、理解したと主張する。

 

(この子の手をこれ以上血に染める訳にはいかん)

 

「ゆくぞ、エルシア。恐らくまたこの者達は現れる。視界に入ったらワシに報告せよ」

「はい、分かりました」

 

(恐らくバステトが寄越した者たちじゃろうな。ワシ一人なら問題は無いが、エルシアが居るとなると話は別じゃ……)

 

 ……

 …………

 ………………

 

 それから暫く、エルブレイドの読み通り|『ゼウスを信仰する者』《ユピテル》達は現れた。彼らはマジックアイテムで気配を消し、不意打ちで首を狙ってくる……が、エルブレイドは更に上回る感知で敵の位置を探り、斬っていく。

 

 エルシアはただそれを眺めるだけ。

 

「エルブレイド様、お見事です」

 

 と、手を叩くエルシア。

 

「この先まだ現れる。警戒を怠るではないぞ」

「はい、お父様」

「はぁ……」

 

 本当に理解しているのか分からないエルシアの様子を見てため息を吐くエルブレイドだった。


 ***

 

「………見えてきた」

「あれは?」

「『シーレンハイル』。その昔、ウナギ等で有名な所じゃった」

「この世界でもウナギが食べられるのですか?」

「……この世界ではもう無理じゃろう。探せば居るかもしれんが、居ても食べん方がいい」

「なぜでしょう?」

「腹を壊す」

「なるほど……」

 

『シーレンハイル』と呼ばれる場所は半壊した建物がいくつもあった。

 近くには大きな湖がある。しかし、濁りきって中までは見えない。

 

「ここで一晩休む。明日の朝『アルファ宮殿』へ向かうぞ」

「分かりました、エルブレイド様」

 

 エルブレイドは門番に出くわした。

 

「お前達、『シーレンハイル』に何用だ」

「ここを通りたい。それと、一晩だけ休みたいんじゃが、ダメか?」

「…………」

 

 門番はエルブレイドとエルシアの顔を交互に見る。

 

「怪しいな貴様ら。その格好はなんだ」

 

 門番に服装について聞かれるエルブレイドとエルシア。

 

 エルシアは銀の鎧に赤いマント。

 一方、エルブレイドもまた銀の鎧姿である。

 どう見ても戦闘すると言わんばかりの二人の格好に疑問を持つ門番。

 

「……ワシは『ミスタリス王国』の旧国王じゃ」

「なに? ミスタリス? …………な、ななな」

 

 門番はエルブレイドの顔をじっくりと見る。ゼロ距離で確認すると門番は腰を抜かした。

 

「あ、あああなたがあの人類最強のエルブレイド!?」

「……う、うむ」

「お父様有名ですね」

「黙っとれ」

 

 門番は姿勢を正し敬礼した。

 

「お元気そうで何よりです! どうぞ、中へ! ……さぁ、あなたも」

「感謝するぞ」

「エルシアも感謝します」

 

 二人は『シーレンハイル』に入る事が出来た。

 

「……あの伝説の人類最強の剣士に出会えるとは俺も幸運だなぁ。……ん? にしても横のお嬢さんは何者だったんだ? ま、いいか。あの人の付き添いか何かだろう」


 ***

 

『シーレンハイル』は国というより、どちらかと言うと村に近い。木で建てられた家は、簡易的なもの。しかし、その数は百を優に超える。それも半壊した建物ばかりで、屋根が無い家が殆どだ。

 

「なんだかサバイバルって感じですね」

「ここはまだマシな方じゃろう。エルシアよ。今から宿を取るが、宿に入ったらお主は絶対に外に出るんじゃない。良いか?」

「………はい」

 

 エルブレイドは嫌な予感がした。

 

 宿を取った二人は、早速明日に向け眠る。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「…………待て、どこへ行くのじゃエルシア」

「……お父様起きていたのですね」

 

 エルシアは部屋の窓から出ようしていた。早速嫌な予感は的中した。

 

「ワシは出るなと言ったはずじゃ。窓を閉めて戻れ、エルシア」

 

 エルシアはそっと窓を閉める。

 

「それでいい」

「…………でもやっぱりごめんなさい、お父様!」

 

 パリィンッ


 エルシアは窓を突き破り、勢いよく部屋を飛び出した。

 

「……はぁ……どうして一度閉めたのにわざわざ窓を割って行くのじゃ」

 

 エルブレイドはエルシアを追いかけた。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「なんですか? 貴方は」

「あなたこそ何ですか? 肩をぶつけて謝りもしないで」

「だってエルシアは謝ったら負けと言われていますので」

「……なんですかその教えは。わたくしは謝りなさいと言っているのですよ?」

「エルシアは謝りません。だってエルシアは悪くないですから」

 

 エルシアは何やら誰かと揉めていた。

 

(……はぁ。もう始まっとる…………)

 

「……やめんか、エルシア」

「……エルブレイド?」

「うむ? ……アイリスか」

「……エルブレイドも来ていたのですか」

「うむ、訳あっての。タイミングが同じとはのう。それより、アスフィはどうした? 見当たらんが」

 

 エルブレイドはアイリスの後ろを見るが、アスフィの姿が見当たらない。

 

「…………アスフィとは別れました」

「……何があったのじゃ。痴話喧嘩でもしたのか?」

「違います。しばきますよ? ……アスフィの知り合いが襲撃に来ました。そこでわたくしとアスフィは離れ離れになったのです」

「……うむ。してどんなやつじゃ」

「金髪の男です。あとは……耳に何か付けていました」

 

 エルブレイドは考える。しかし、アイリスの言う男にエルブレイドは心当たりが無い。

 

「ワシには誰なのか皆目見当もつかん」

「わたくしも初めて見ました…………いえ、もしかしたら見たことがあるかも知れないですね」

 

 アイリスもまた頭を悩ませる。

 

「まぁよい、アスフィなら大丈夫じゃろう」

「わたくしは心配です。今のアスフィはお兄……フィーではありません」

「……そうじゃな。じゃが、もう夜だ。今から探すにしても効率が悪い。今はお主も休めアイリスよ」

「……分かりました」

 

 アイリスは下を向いて帰っていく。


(かなり落ち込んでおるのう)

 

「待ちなさい、あなた逃げるのですか?」

「やめんかエルシア……お主は我慢を覚えるんじゃ。ワシらも宿に戻るぞ」

「……はい、お父様」


 全く、落ち着きがない子じゃ。


 エルブレイドは夢を見た。

 

 【やぁ、エルブレイド】

 

 またワシになにかあるのか?

 

 【暇だったから、それだけだよ】

 

 ……ワシは休息を取っている。邪魔をするな。

 

 【ゲームをしないかい? 】

 

 お主、話を聞いておるのか? ワシは邪魔をするなと言ったのじゃが?

 

 【いいでしょ。一回だけだよ】

 

 ……一回だけじゃぞ。ワシにはまだやる事がある。直ぐに終わるものにせい。

 

 【うん、いいよ。では、ゲームの説明をするね】

 

 うむ。

 

 【ゲームは簡単。賭け事さ】

 

 なんじゃ、簡単じゃな。

 

 【そうだよ。しかも罰ゲーム無し】

 

 ……うむ、それは助かる。

 

 【でしょ? 】

 

 で、何を賭けるのじゃ?

 

 【君がエルシアを『殺す』か、『殺さない』か】

 

 ……なに?

 

 【私は『殺す』に賭けるよ。君は? 】

 

 …………無論、『殺さない』。

 

 【分かったよ。罰ゲームは無いけど、褒美はあるよ】

 

 ……ほう?

 

 【私が負けたら何でも一つ言うことを聞くよ】

 

 何でも? お主が言う何でもは、かなり深い意味を持つが良いのか?

 

 【もちろん。それだけの価値があるからね】

 

 して、どの様に行うのだ?

 

 【私が幻想世界に飛ばす。君はそこでエルシアを殺すか殺さないかの決断をする。それだけだよ】

 

 …………お主、性格が悪いのう。

 

 【あはは……でも、勝てば何でも言う事を聞くよ? それに、君にとっては二度目のチャンスになる。後悔、していたんだろ? 】

 

 ………良かろう。お主の思い通りに事が運ばないところを見せてやろう。

 

 

 【では、スタート】

 

 

 ***

 


(始まったか……)

 

 エルブレイドは整理された部屋に居た。鏡が置いてある。

 そこに映るのは大柄で筋肉質な老人では無く、白シャツにネクタイ姿の若い男が立っていた。

 

「……またここか」

 

 エルブレイドは見慣れた部屋で一人呟いた。

さぁ夢の中へとご案内。

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