第127.5話『魅了Ⅱ』
どこかの城にて。
『わらわの愛猫が殺られたか。まぁよい。所詮あやつはそれまでだったと言うこと。……しかし、まさかエルブレイド。お前が手を下すとはな』
――その神は従者がやられたにも関わらず、平然としていた。
『キャルロットはどうでもよい。だが、エルブレイド。わらわはお前が欲しい。その強さ、わらわの所有物になれば更に強くなるだろう。更なる高みへとな』
神はエルブレイドを欲した。その強さに彼女もまた、魅了されたのだ。
『ああ、エルブレイドよ! お前がわらわの物になる時が楽しみだ……! お前がわらわの所有物になるまで、わらわはお前に何度でも刺客を送るぞ……あぁ、体が熱くなってきた……おい――』
神の一声で一人の男が、神の前で片膝を着いた。
『脱げ』
「………はい」
男は黒のフードを脱いだ。そして全ての装いを外した。
『ほう、なかなかいい体をしているなお前。わらわの好みだ』
「ありがとうございます」
『こっちに来い』
神に呼ばれた男は神の言う通りに動く。
『どうじゃ、このベッド。柔らかいじゃろう?』
「はい、私たちのものとは質が違います」
『当たり前だ。わらわは神だぞ。そしてお前にも、わらわの愛を授けよう』
「頂けるのですか? 貴方様の愛を。私に」
『ああ、ありがたく思え? わらわの愛を直接受け取れるのは極一部のみなんだからな』
そういうと神もまた衣服を脱ぎ始めた。
男と神。両者生まれたままの姿。
『……わらわの愛が欲しいか?』
「……ゴクッ…………はい」
『そんな緊張しなくてもよい。わらわがリードしてやる』
「お、お願いします……」
『クフフフフッ……では二人で愛を楽しもうじゃないか』
神は男に覆いかぶさり、男はそれを受け入れる。
『わっちの体、好きな様に触っていいぞ』
「ほ、本当ですか。では、頂きます」
『……やはりそこからか。男は本当に好きだな。わらわのは少し小さいがいいのか?』
「小さいのなんて関係ありません。バステト様の体は全て、金銀財宝以上の価値があります」
『そうか。ならもっと好きにしていいぞ? お前の言う宝は目の前にある。好きにせい』
***
『そういえばお前の名前を聞いていなかったな。わらわに名を教えよ』
「私の名前は、亜久津です。バステト様」
『ほう、亜久津か。……その名前、日本から来たのか?』
「はい。日本からこちらへやってきました。貴方様に『魅了』され、現在は貴方様の忠実なる下僕です。貴方様に尽くす事こそが私の生き甲斐なのです。私は貴方様と出会う為にこちらにやって来たのだと今はそう感じています」
『そうか。わらわへの愛は理解した。では早速だが、亜久津よ。お前にやってもらいたい事がある』
亜久津は跪いた。
「なんなりと」
『エルブレイド、及びその仲間と疑われる者達を殺せ。ただし、エルブレイドだけは相手にするな。お前では勝てん』
「……分かりました。しかし、今の私はあなたの恩寵があります。エルブレイドも難しくは」
『――ならん! わらわの言う事を聞けないのか?』
「申し訳ありません! 主に歯向かったこの下僕めにどうか罰を!」
『よい……さ、早く行け。それを罰としといてやる』
「ありがとうございます! 必ずあなたのお役に立ってみせます!」
亜久津は神の元を離れた――。
『エルブレイドよ、これは始まりに過ぎんぞ。わらわの愛猫の代わりとしてお前を必ずわらわの所有物にして見せる』
また新たな神が動き出す