第107.5話 「企み」
「……そんな…………そんなありえない……ありえない……!」
「しっかりするんじゃっ! ルクス!」
ルクスは頭を抱え涙を流していた。
***
……時は少し遡る。
ルクスとエルブレイドは『炎城ピレゴリウス』に到着した。
「凄いですね……本当に燃えています」
「そうじゃろう? ワシも初めて見た時は驚いたもんじゃ」
『炎城ピレゴリウス』。その名の通り、炎によって城が燃えている。その炎は消えることが無く、燃え続けている。
「これは神の炎と言われておる」
「……神の炎ですか?」
「そうじゃ。名をアポロン。太陽神と言われておる。ワシも見たことはないがの」
「……やはり神は次元が違いますね」
「じゃの。……さぁ、入るぞ。燃えておるのは城の外だけじゃ。中はそんなに暑くない」
エルブレイドとルクスは燃え盛る城の中へと足を踏み入れる。
「……不思議です、本当に暑くないですね」
「そうじゃろう? あの炎は消えないだけじゃなく、熱さを感じないんじゃ」
「……え? エルブレイドさん触れたことあるんですか!?」
「ああ、一回だけの。消えないなんて不思議じゃろう? じゃからワシは炎に触れてみたんじゃ。……どうなったと思う?」
「えっと……火傷したんですか?」
「…………いいや、火傷どころか傷が癒えたんじゃ。じゃからワシはこの城におる。ワシが元気なのはこの炎のお陰と言っても過言ではない! ガッハッハッ!」
エルブレイドは腕を組み、笑う。
「……なるほど、だからミスタリスを抜けたんですね。納得です」
ルクスもまた腕を組み納得の様子だ。
「……では、本題に入るとしようかのう。付いてこいルクスよ」
エルブレイドはマントを翻し歩き出す。ルクスはその大きな背中に付いていく。
……
…………
…………………
広い城の中で、ルクスはある物に目がいった。
「……これは?」
「これは通信機じゃ」
「こんなに小さい物がですか!?」
小さい手のひらサイズの箱。その箱は光を放っている。魔法のように見えるそれは、確かに人類が作り出した紛れもない通信機。
「そうじゃ。同じくこれを持つ者に繋がるものじゃ。ルクスよ……アスフィを助けたいか?」
「…………助けられるんですか?」
「……ああ。お前さん次第じゃがの」
エルブレイドの問いにルクスは、
「もちろん助けます」
さも当たり前のようにルクスはそれに答える。
「……よかろう。では始める」
「…………その前に一ついいですか?」
「なんじゃ」
「私がエルザと一緒に行けなかった理由、教えて下さい」
「うむ…………それもこの後分かることじゃ」
エルブレイドはその通信機を操作し始める。ルクスはその様子を不思議そうに眺めている。
「あの……通信機で助けるってどういうことですか?」
「お主はエルザのように肉体を持ったまま向こうの世界に行くことは出来ん。じゃから――」
エルブレイドとルクス。二人の企みが密かに開始した。