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第99.5話「届かぬ想いのその先へ」

 ルクスとエルザはアスフィが目覚めるのを待っていた。

 

「……アスフィ目覚めるでしょうか」

「何を言うのだルクス! アスフィは必ず戻る! ……それを私たちが信じてやらずしてどうするのだ」

「…………すみません、少し弱気になっていました」

 

 ルクスとエルザ、そしてマキナはアスフィの帰りを待っていた。

 

「我もこの身に『呪い』が無ければ、フィーに触れることが出来るというのに……それが出来ない。それに力も奪われたままだ」

「マキナさん……」

「必ず戻るさ! 私たちが愛した男はそういう男だろう!」

「……はい、エルザの言う通りですね」

 

 エーシルに神力(じんりょく)を奪われたままのマキナとアイリス。

 そして、同じく神力(じんりょく)を奪われたはずのオーディンが、眠るアスフィに向かって座り込み、手をかざして動かない。

 

「マキナよ、オーディンはなにをしているのだ?」

「……オーディンはフィーの記憶に触れている。我も何をしているのかまでは分からないが、恐らくフィーを死なせないようにしているのだろう」

「……そうなのか。私達と同じ人間の見た目をしているのに、神というのはやはり人外なのだな」

「そうでも無い。我らは基本的に死ぬことは無い。だが、それは神力(じんりょく)があるからこそだ。神力を失った神はただの人間に等しい。今の我がまさにそうだ」

 

 マキナは自分の胸をトントンと叩きエルザに言う。それにエルザは首を(かし)げた。

 

「神力というのが神として大事なものというのは分かった。だが、オーディンはなぜ力を使えるのだ? これは神力ではないのか?」

「……我にも分からない。オーディンは昔からよく分からないやつだった。神力を奪われても力を使えるのだろうな。もしくは、完全には奪われていないか……」

 

 そのオーディンはピクリとも動かない。目を瞑り、アスフィに手をかざして。

 

 アイリスは今も尚倒れている。

 

「アイリスは大丈夫なのか? 」 

「ああ。ポセイドン……アイリスは丈夫だからな。神力(じんりょく)を失っても彼女は水の神。…………恐らく大丈夫のはず」

 

 マキナは自信なさげに言う。エルザもそれを察して何も言わない。

 

 ………

 ………………

 …………………………………………

 

「あれれ〜? 皆さん大丈夫ですか〜?」

「……何者だ!?」

 

 その者は突然と。音もなく姿を現した。

 

「初めまして。私の名前は『アンノーン』です」

 

 姿が見えない。そこに居るのに見えない者。

 

「ルクス、アスフィを頼む。私が相手をする」

「エルザ!?」

「……まさか私と戦う気ですか? 勝てませんよ?」

「やってみないと分からんだろう!」

 

 エルザは『アンノーン』に剣を向けた。

 

「アヒャヒャヒャッ! ……フィーさん(・・・・・)との戯れには飽きていた所です。楽しませてくださいね」

「待て。お前、今フィーと言ったか?」

「あなたは……マキナさんですか。あなたも不思議な人だ。オーディンの世界は完璧に近いですが、完全では無い。それなのに意志を持ち動いている。心を持っている……なぜでしょうか」

「……まさか……いやそんなはずは……」

「あなたの考えている通りだと思いますよマキナさん? ……さて、私はそんな話をしに来たのではありません。エーシルを討ち取ったあなた達と話をしに来ました。もちろん悪い話ではありませんよ?」

 

『アンノーン』は見えない姿でニヤリと笑う。

 

「この世界はもうすぐ消えることになります」

「なに……? どういうことだ!」

「私が消すんです。ここはあまりにも出来すぎている。神が支配し人間が支配される……理不尽だと思いませんか? エルザさん、あなたは私の気持ちが分かるはずです」

「……私が?」

「あなたは強い。それも冒険者の中では勇者と並ぶ程に。しかし、神が相手ならばそれは通じない。理不尽だと感じたことが今まで何度もあった筈です。私はそんな世界を変える。『盟約』というシステムを使ってね」

 

『アンノーン』の話をよく分からないという顔で聞くエルザ。

 しかし、マキナは理解している様子だった。

 

「『盟約』はこの世界を簡単に書き換えることが出来るシステムです。しかし、それ故に制限が設けられている。一方的な『盟約』はリスクを伴う。あなたの愛する者が経験したものですね、マキナさん? 彼は愚かだ……エーシルという詐欺師に騙されたのですから」

「……フィーは愚かではない。撤回しろ」

 

 マキナは『アンノーン』に向かって手をかざす。その手は雷を帯びていた。

 

「いいえ、撤回などしません。事実ですから」

 

 マキナは『アンノーン』に向かって雷を放つ。

 

 ――が、それはそのまま当たることなくすり抜けていった。

 

「なに?」

「アヒャヒャヒャッ! 言ったでしょう! 無駄だと! 私の本体はここには居ない……では話の続きをしましょう――」

 

『アンノーン』は何事も無かったかのように話を続ける。

 

「この話を受け入れて頂ければ、『盟約』を開始します。受け入れて頂けない場合、反逆とみなしあなた達に死ぬよりも辛い苦痛を与え強制的に『盟約』に誓ってもらいます。さぁどうしますか?」

「…………わざわざ答える必要があるのか?」

 

 エルザは剣を構え、『アンノーン』の前に立つ。

 

「答えはノーだ。お前のような得体の知れないものと交わすモノなど何も無い!!」

「…………そうですか。残念です。では――死になさい」

 

 ――ドスッ

  

「…………なんですこれは」

 

『アンノーン』は右手を切り落とされた。 

「ガッハハハハッ! 最強のおじいちゃん登場じゃわい!!」

「……ちっ……エルブレイド・スタイリッシュですか」

「おじい……ちゃん?」

「悪いのうエルザ! 今は説明出来ん! なんせワシ今、孫を守るので手一杯なんじゃ!」

 

 その者は人類最強と言われた男。エルブレイド・スタイリッシュ。黄金の鎧を纏った姿はまさに強者の風格を漂わせていた。

 

「『アンノーン()』に攻撃は通じないはず……」

「ガッハハハハッ! そりゃお前、ワシの持つコレは『伝説の剣』じゃからのう!!」

「……ほんとふざけた爺さんですね。いいでしょう、相手をしてあげます。老いぼれの面倒を見るのはいつも若者と相場が決まっていますので」

「それは嬉しいのう! ……エルザよ、アスフィを助けてやれ」

「……え? どういうことおじいちゃん?」

 

 エルブレイドの言葉にエルザは状況がつかめずにいた。

  

「オーーーーーーーディーーーーーーーーーンッ!!!!」 

 

 エルブレイドは大声で叫び出した。その声量に地割れが起きる。

 

「ワシの声が聞こえているのなら!!! エルザを!!! そちらに向かわせてやってくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」

「……何を言ってるのおじいちゃん!?」

 

 

 【全く、相変わらずうるさい爺さんだねぇ】

 

 それはまるで世界が喋っているような。

 

「やはり聞こえておるのか!」

 

 【爺さんの声がうるさすぎるんだよ。で、なに? 】

 

「じゃから! エルザを!! ワシの孫を!!! アスフィの元へと連れてってやってくれと言っとるんじゃーーーーーー!!!!」

 

 【うるさい! うるさいよ! 聞こえてるよ! ……もう】

 

「はやくせんか! ワシも手一杯なんじゃ!!」

 

 【あんたはそんなやつ相手に死なないでしょうよ……分かったよ】

 

「助かるぞぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 【もうっ! うるさい!! 私の世界を壊す気なの!? 】

  

「……という事じゃ。エルザ、行ってこい。アスフィを救えるのはお前だけじゃ」

 

 そんなエルブレイドに意見する者が現れる。

 

「……あの! 私も行かせて下さい! アスフィは私の……愛する人なんです!」

 

 ルクス・セルロスフォカロだ。

 

「……ならん」

「どうして!? あなたの孫じゃないからですか!?」

「違うわい! 単純に戦力としてじゃ……それにルクスよ。お前さんはどちらにせよ行けんわい」

「どうしてです……!?」

「お前さんは――」

 

 【ねぇ爺さん! もうやるよ! 私だって暇じゃないんだから! 】

 

「ああ! いつでもいいぞ!! ……すまんなルクスよ。後で必ず説明する。この場は納得してくれい」

「…………分かりました………………エルザ、アスフィを頼みます」

「……もちろんだ。ルクスの事も必ず伝えよう!」

 

 エルザの言葉にルクスは頷く。

 

 【じゃあいくよ。転送っと! 】

 

 エルザは眩い光に包まれ姿を消した。

  

「……さて、『アンノーン』とやらよ。ワシと――」

「私が相手です」 

「二対一になったからなんですか。それで私に勝てるとでも?」

「ガッハハハハッ! 勝てるかは分からんのう!」

「えぇ!? エルブレイドさん、勝てるんじゃないんですか!?」

「そんなこと言われてもワシこいつのことよく知らんし……」 

「アヒャヒャヒャッ! ……では始めましょうかコチラの戦いを」

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