Special ep.5
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俺は一人、再びエルブレイドの元へ訪れていた。
城内の廊下を進むと、玉座に座る王が俺を待っていた。
「なにかな、フィー殿」
「魔法を使える者を知らないか?」
俺は砕けた口調で単刀直入に聞く。
王の反応は、少しの沈黙の後だった。
「……魔法か。ワシはそんなものを使えるものは知らぬ。じゃが魔法に似た物はある」
「……なんだよ?」
「『強化技術』……ワシが編み出したものじゃがな」
「魔法じゃないのか、それ」
「うむ、似ているが少し違う。その名の通り技術じゃ。技を極めたものだけが使えるもの。血の巡りを感じ取り、一点から全体に至るまで、血流を行き渡らせる。すると、身体能力が飛躍的に向上するというものじゃな」
……なんだそれ、仙人の修行か?
血の巡りを操る……なんて話、まるで武術の極意みたいなもんじゃねぇか。
「じゃが、使えるものは数えるくらいしかおらん。ワシが知っておる限りでは、ワシと、エルフォード、エルザのスタイリッシュ家の者。あとは……ワシの弟子だったハンベルと言う奴だ。今はもうどこかへ行きよっての、ワシも行方は知らん」
ふーん……基本は王様の家系だけが使えるってことか?
一子相伝の技的な?
「ならその『強化技術』ってやつ見せてくれよ」
「……いいじゃろう」
王は立ち上がると、俺を見据えた。
次の瞬間――
ブォンッ
目の前から、エルブレイドの姿が消えた。
「……!?どこ行った……?」
「ここじゃ」
「――なに!?」
俺の背後――。
いつの間に!?
ついさっきまで、玉座に座っていたはずなのに。
俺と王の間には、少なくとも二十メートルほどの距離があった。
それを、一瞬で――まるで瞬間移動のように俺の元へと距離を詰めてきた。
「……まぁワシも年老いておるからの。これくらいしか出来ん。エルザは……いずれワシを追い抜く。楽しみじゃ」
「あのお転婆なお嬢さんが?強いようには見えんが」
「強いぞ?まだエルフォードには敵わんが、すぐ追い越されるじゃろうな」
王族ってだけで鍛えられる環境にはあるんだろうけど……そんなに強いもんなのか?
冒険者にも序列のようなものがあるのだろうか?
ただ、いま俺の目の前に居る王から見せられたもの。あれは魔法と言ってもおかしくないレベルだ。
もし本当にこの世界に魔法が存在しないなら――この王が一番強いってことになるよな。
少なくとも俺では勝てないな……。
……マキナはどうなんだろう。
マキナでも厳しいのかな?また機会があったら聞いてみるとしよう。
「そういえば、マキナ殿はどうしたんじゃ?いつも一緒じゃろ?」
「あぁ、アイツなんか用事があるとか言って出たよ。俺もどこへ行ったかは知らない。なぁ王様、マキナとはどんな関係なんだ?」
「それは男女の仲という意味かの?」
「茶化すな。俺は真面目に聞いてるんだ」
「……ワシは何も知らんよ。……昔、助けられたことがある。ただそれだけじゃ」
助けられた?
それ以上詳しくは話せくれなそうだな……。
しかしどうやら嘘はついていない。目を見ればわかる。
マキナも教えてくれないだろうし、まぁこの話はこれまでか。
「じゃが、マキナ殿こそ神に相応しいとワシは思うの」
「神?そんなもん居てたまるかよ」
「うむ……そうじゃな、今のは忘れてくれ」
「神がいるならこの世界に魔法を使えるようにするべきだろ?」
「フィー殿はそう思うかの?……ワシはそうは思わん」
なんでだよ。
魔法はあったほうが便利だろ。実際俺の回復魔法はこれまでかなり役に立ったぞ?
「ワシは……魔法がない世界が一番好きじゃ。魔法はあるべきじゃない。絶対にのう」
「俺は少なくとも魔法があれば色んな人が救えると思うけどな」
「それを悪用するものも現れる……そうは考えんのかの?」
「それは……仕方ない、だろ」
「仕方ないで済めばいいがの。魔法なんぞの力に頼るより、自分で模索して戦う。それが大事じゃとワシは思う」
努力をしろって言いたいのか?
努力はあまり好きじゃない。
努力しても奪われるだけだ。この世界に来る前の俺のように。
誰かに利用されて終わる。俺はそんなのはぜったいに嫌だ。
「フィー殿、忠告をする」
「忠告?王様が直々にか。ありがたいね」
「いや、予言と言っていい」
エルブレイドは玉座に座り、真剣な表情で俺に言う。
「フィー殿、貴方はいずれ過酷な人生を送ることになるじゃろう。その過程でマキナ殿と愛を育むのは良し。じゃが『死の神』に気をつけるんじゃ」
「……ん?」
何言ってるか全然分からん。
「今は分からなくてもよい。時期に分かる頃が来るじゃろう………それを知るのは世界の始まりが来た時になるかも知れんからのう。じゃがこれだけは言っておく。怪しい神には近付くな。これはフィー殿の為でもあるが、世界の為でもある。これを破った時、お前は死にたくなるほど後悔することになる。それをよく覚えておくことじゃ」
エルブレイドはおちゃらけた表情ではなく、真剣に、俺へと忠告している。
空気が一瞬、ピリついた。
「……分かった」
「うむ、忘れるでないぞフィー殿。後悔するのは自分だと、それを覚えておきなさい」
そうして俺は王室を出る。
「……結局王様は何が言いたかったんだよ。意味分かんねぇよ」
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