ニャンニャン
後日の、お話です。
コンデッサとツバキは、ドラゴ山を訪れました。
山のてっぺんには、やっぱりドラゴン・レディ様が居ました。
太いシッポには相変わらず2匹の猫ちゃん――ハッピキとサンビキが、引っついています。
コンデッサは気やすく、ドラゴン・レディ様に声をかけました。
「久しぶり。この前は、ツバキが世話になったみたいだな。ツバキといっしょに、遊びにきたぞ」
「あ! コンデッサでは、ありませんか。ツバキさんも来たのですね」
うれしそうな顔になる、ドラゴン・レディ様。
「ドラゴン・レディ様。この間は、ありがとうございましたニャン」
ツバキはドラゴン・レディ様にお礼を言って、それからコンデッサへ尋ねました。
「ドラゴン・レディ様とご主人様は、知り合いなニョ?」
ツバキの目には、コンデッサとドラゴン・レディ様が、とても親しい仲に見えたのです。
コンデッサが答えます。
「ああ。ツバキには、教えてなかったな。ドラ・娘々とは、ツバキが私の使い魔になる以前に、何度か会うなど、ちょっとした付き合いがあったんだよ。私が15才のときには、宝ものを探して、ともに冒険をしたりもしたな」
そうなんですね。15才のコンデッサとドラゴン・レディ様は…………え? いま、コンデッサはドラゴン・レディ様のことを、何て呼びました?
「にゅ? 〝ドラ・ニャンニャン〟? お名前は〝ドラゴン・レディ様〟じゃ無いにょ?」
ツバキは驚きます。これは、どういうことでしょう?
コンデッサはドラゴン・レディ様を、じ~っと見つめ、とつぜんプッと吹き出しました。
「ぷぷぷ! ドラ・娘々――お前、今は『ドラゴン・レディ』と名乗っているんだってな。聞いたときは、大笑いしたぞ」
ドラゴン・レディ様は顔を真っ赤にして、両腕をブンブンと振りまわしました。さらに、シッポで地面をペシペシと叩きます。
ハッピキとサンビキは、ビックリぎょうてんの大慌てです。
「違います! コンデッサ、変なことを言ってはいけません。ツバキさん、コンデッサの話すことなど、信じないでくださいね。わたしの名前は〝ドラゴン・レディ〟です。スゴく、カッコイイのです」
「〝ドラ・娘々〟は、可愛いじゃないか。〝ドラゴン・レディ〟より、ズッと良いと、私は思うぞ」
「コンデッサ! 黙りなさい。ドラゴン族の名前は、カッコ良くなければならないのです!」
コンデッサとドラゴン・レディ様が、言い争っています。
ツバキは、わけが分からなくなってしまいました。
「あにょ……けっきょく〝ドラゴン・レディ様〟と〝ドラ・ニャンニャン様〟、どちらが正しいニョ?」
「くくく。そうだなぁ、ツバキ……え~と、その猫たちの名前は〝ハッピキ〟と〝サンビキ〟だったな。ハッピキとサンビキに尋ねてみろ。正しい答えを、返してくれるぞ」
コンデッサは笑いながら、ツバキへアドバイスをします。
ツバキは、2匹の猫ちゃんに質問してみました。
「ハッピキさんとサンビキさん。アナタたちのご主人様の名前を、教えてにゃ」
ハッピキの口から出る言葉は――「ニャンニャン」
サンビキの口から出る言葉は――「ニャンニャン」
2匹の猫ちゃんの答えを耳にして、コンデッサは勝ち誇ります。
「ほら。やっぱり『ニャンニャン』……〝ドラ・娘々〟が、正しいじゃないか」
「ハッピキとサンビキは、使い魔であるツバキさんと違って、普通の猫なんですよ! 猫の言葉、いえ、鳴き声が『ニャンニャン』なのは、当たり前です――――!!!」
ドラゴン・レディ様? それとも、ドラ・娘々様? ――竜の女の子の叫び声が、ドラゴ山のてっぺんから響きわたりました。
皆さんは『ドラゴン・レディ』と『ドラ・ニャンニャン』、どちらが竜の女の子にピッタリな名前だと思いますか?
「う~ん、どっちの名前が良いのかニャ~」と悩んでいるツバキといっしょに、考えてみてくださいね。
~おしまい~
コンデッサ「〝娘々(ニャンニャン)〟は、はるか東の大陸にある国では『女神』を意味する言葉だぞ。〝ドラ・娘々〟の何が不満なんだ?」
竜の女の子「でも、わたしは〝ドラゴン・レディ〟が良いのです」
ツバキ「それにゃら、あいだを取って〝ニャンニャン・レディ〟ってお名前にしたら、どうかニャ?」
コンデッサ「素晴らしいアイデアだ、ツバキ。良かったな、ニャンニャン・レディ」
竜の女の子「名前からドラゴンの要素が、全く無くなっているではありませんか――!」
ハッピキとサンビキ「ニャンニャン」
♢
ご覧いただき、ありがとうございました。
※本作の前日譚である『竜の女の子と15才の魔女――ドラゴンランドで大冒険――(童話風)』
( https://ncode.syosetu.com/n2774in/ )も投稿いたしました!