ドラゴ山(イラストあり)
ページ途中に、イラストがあります。
さて、赤い大根と白いニンジンを求めて、ドラゴ山へと向かった黒猫のツバキ。
ツバキは、大丈夫なのでしょうか?
大丈夫でした。
ツバキは道に迷ってウロウロしていましたが、気がつくと、なぜかドラゴ山のてっぺんに到着していたのです。
不思議ですね。どうしてでしょう?
取りあえず、お話を進めます。
ドラゴ山のてっぺんには、1人の女の子が居ました。
とっても可愛い、7~8才くらいの女の子です。お洒落な服も着ています。でも彼女の頭の両側にはそれぞれ角があり、更にお尻からは太いシッポが生えていました。なんだか、ドラゴンの角とドラゴンのシッポみたいです。
シッポは重たそうですが、女の子は平気でズルズルと引きずっています。そしてときどき浮かしたり、地面をペシペシと叩いたりもしています。
そのシッポには猫ちゃんが2匹、「ニャンニャン」とまとわりついて遊んでいました。
ツバキと女の子は出会い、見つめあいました。
「え~と、こんにちはニャン」
「ハイ」
ツバキが挨拶をすると、女の子はコックリと頷きました。
「……どなた様なのかニャ? アタシ、ドラゴン・レディ様に会いにきたんニャけど……」
「わたしが、ドラゴン・レディです」
話しかたは丁寧なのですが、少し威張った調子で女の子が言いました。
「にゅ? ……〝ドラ子・レレレのレ〟さん?」
「どういう間違いかたを、しているのですか! 〝ドラゴン・レディ〟です」
女の子が怒ります。シッポがビタン! と地面を叩き、2匹の猫ちゃんは「にゃーにゃー」と大騒ぎしました。
ツバキは、謝りました。
「ゴメンナサイにゃん」
「アナタは、素直な猫さんのようですね。許してあげます」
「ドラゴン・レディ様なにょね?」
「そうです。わたしは数千年の時を生きている、ドラゴンなのです。森羅万象を知りつくしていて、どのような願いごとでも叶えられる、叡智の竜です。ぜひとも尊敬してください」
「しんらばんしょー? えいち?」
「森羅万象には『全てのもの』、叡智には『とってもお利口さん』という意味があります」
どうやらドラゴン・レディ様は、すごく頭が良いみたいです。これは、期待が高まります。
ツバキは、勢いこんで言いました。
「アタシの名前は、ツバキと申しますニャン。ドラゴン・レディ様に叶えて欲しいことがあって、ココまで来たにょ。お願いしますニャン」
「なるほど、分かりました。わたしの問いかけにアナタが正しい答えを返すことが出来たら、どんな望みでも叶えてあげます」
ドラゴン・レディ様は、ツバキに問題を出すようです。これこそが、八百屋のおばさんが言っていた『ドラゴン・レディ様による試練』なのでしょう。
果たして、ツバキは合格することが出来るのでしょうか?
「では、問題です」
ドラゴン・レディ様は、おごそかに告げました。
ツバキは緊張します。
「ハイにゃん」
「あるところに、猫が居ました」
「ニャン」
「居たのは、八匹と三匹」
「八匹と三匹……ニャン」
「猫の数は、二匹でした」
「にゅ!?」
「さて、これは、どういうことでしょう? 答えてください」
「? ? ?」
…………『8+3=11』のはずなのに、猫は2匹? 謎ですね。
ツバキは正解にだどりつこうと、一生懸命に考えます。
「にゅ~、にゅ~、にゅ~」
頑張れ、ツバキ!
ドラゴン・レディ様のシッポに引っついている、2匹の猫ちゃんも「にゃ~、にゃ~」と応援してくれていますよ。
やがて、ツバキの瞳がキラリ~ン! と光ります。
「分かったニャン!」
お! ツバキは、問題を解いたみたいです。スゴいぞ! ツバキ。
「猫の数は、2匹ニャン。そして2匹いる猫の名前が、それぞれ『八匹』と『三匹』だったのニャ!」
「正解です。ツバキさん、よくぞ答えました」
ドラゴン・レディ様が、にっこりと笑いました。
2匹の猫ちゃんも、ドラゴン・レディ様のシッポに乗りながら、「にゃん、にゃん」と祝福してくれます。
「ふふ、ツバキさん。ハッピキとサンビキも、アナタを褒めていますよ」
『ハッピキ』と『サンビキ』は、この2匹の猫ちゃんの名前だったんですね。
「やったニャン~!」
うれしがるツバキへ、ドラゴン・レディ様は尋ねました。
「それで、アナタがわたしに、して欲しいこととは何なのですか? わたしは、とっても偉い、とっても親切な、とっても賢い竜です。どんな願いごとでも、叶えてあげますよ」
「どんなことでもニャ?」
「そうです。わたしは、万能の竜なのです」
「バンノー?」
「万能とは『あらゆることに優れている』という意味です。わたしに出来ないことなど、ありません」
「スゴいニャン……」
「遠慮なく、何でも求めてください」
「ドラゴン・レディ様、ありがとうニャン。それじゃ、〝赤い大根〟と〝白いニンジン〟を、くださいニャ!」
「は?」
ツバキの願いを聞いて、ドラゴン・レディ様は目を丸くしました。
ドラゴン・レディ様「とっても素敵な、わたしのイラストに見ほれても良いですよ」
ハッピキとサンビキ「ニャンニャン」
※ご許可を得て、ますこ様のイラストを使わせていただきました。ありがとうございます!