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怪物さん(あい)

作者: りすふぃ

怪物さんの自己解釈作品です。

読む場合はご了承ください。

晴れた空。雲ひとつない晴天。

私はいつもの公園に来ていた。

人が少なく、自然がいっぱいなこの公園は

デートにはもってこいの場所だ。

この晴天とこの公園、1年半前を思い出す。

私はここで告白をされた。

同じクラスの平田くんだ。

私は人生で初めて告白され、頭が真っ白になり二つ返事で告白を了承したのだ。もちろん最初は戸惑ったが、彼は私をとても大切にしてくれた。次第に私も彼のことを好きになっていった。

だけど、今の私はこの晴天に似つかわしくないほどどんよりしている。私の心は暗く曇っていた。

彼と付き合い初めて1年ほど、私は疲れていた。

大切にされることは嬉しい。だけど、苦しいのだ。

他のみんなとは違う特別。優遇。そして何より彼の心。

彼は時々、辛そうにしていた。

そんな彼を見る度に私は罪悪感に苛まれた。

何度も彼に伝えたかった。

特別扱いしないで欲しいと。

でも、私の中のあなたが言うの。

「君だ大切なんだ。だから、特別扱いされて欲しい。」

その声を聞く度、私は受け入れてしまう。

特別扱いを。彼の頑張りを。

だけど、なら何故あなたは辛そうな顔をするのか。

そんな考えを彼に悟られないよう演じ続けていた。

「私が消えさえすれば、彼も私も幸せなのかな」

そんなつぶやきを聞いているものはいない。


今日は彼とデートする。

いつものように精一杯のオシャレをして、普段より何倍もの時間をかけてお化粧をし、約束の時間の1時間前に着くように動いていた。にも関わらず彼が先に来ていた。

聞いてみると2時間前にはここにいたのだそう。

私の胸がチクリと痛む。けれど嬉しかった。

私のことをこんなにも思ってくれているのかと思うと自然と笑顔が零れていた。

でも、彼を1時間以上も待たせてしまって、申し訳ない。

近くに新しいクレープ屋さんができたと言うことを思い出し、クレープをご馳走しようと思って、彼に伝えた。

しかし彼は

「気にしないで。俺が早く来ただけだし」

と、やっぱり私の気持ちを受け取ってくれない。

彼の悪い癖だ。全然私の気持ちを尊重してくれない。

私のことを大切にするあまり、私に何もさせてくれない。

本当は彼が無理していることに気づいていた。

けど、何も言えなかった。今の関係が壊れてしまいそうで怖かった。私は、私自身の欲を満たすために彼に無理をさせた。

その事実を考える度、罪悪感に押しつぶされそうになる。

だけど、私は彼が好きで好きで仕方なかった。

きっと、理想の恋人には程遠いのだろう。

誰も理解できない自分勝手な恋を私は楽しんでいた。


彼とのデートはやはりとても楽しかった。

こんな日がいつまでも続けばいいのに。

しかしそんな楽しい日は直ぐに終わってしまう。

あたりも暗くなってうっすらと月が出てきた。

そろそろ夜ご飯の時間だ。

彼とお店を探し、席に着き、料理を注文してほっと一息ついた。少しすると彼はアルバイト先の愚痴をこぼし始めた。

どうやら彼はなかなかに無理のあるシフトをこなしているようだった。つい先日始めたアルバイト先だが、どうやら相当ブラックなようで彼は酷く辛そうな顔をしていた。

思わず私は「大丈夫?」と聞いた。

彼は嬉しそうな顔をして「大丈夫」と答えた。

だけどすごく心配だった。

しばらく話を聞いているとだいぶ遅い時間になっていた。話を切り上げ、帰る準備をしている彼に「いつでも相談してね。電話でも直接でも。会いに行くから。」と、伝えた。

彼は嬉しそうな、少し辛そうな顔をしていた。

やっぱり、私は彼を苦しめている。

胸の痛みに耐えつつ、2人で帰宅の途についていると彼が突然こんなことを言い出した。

「もうダメかもしれない。辛い」

私は思考が固まった。思わず聞いてしまった。

「大丈夫!?やっぱり私が苦しめているの!?

ごめんなさい。私と一緒にいる時あなたはいつも辛そう。

私に嫌なところがあるなら言って。なおすから。」

彼の辛い原因など分かっていた。

が、この期に及んでしらを切ってしまった。

彼をさらに苦しめようとしてしまった。

その時私の心は罪悪感に負けた。

彼を苦しめていた私はもう必要なくなった。もう消した。


「いいえ、私があなたを無理させていたのよね。

本当はわかっていたの。あなたが無理をして私を特別扱いしていることになんで特別扱いするの?ねぇ!」

彼は答えなかった。ただただ苦しそうな顔をしていた。

「そっか。これすらもあなたを苦しめてしまっているのなら」

私は唇を噛み、涙をこらえ、閉じてしまいたい口を無理やり動かして言った。言ってしまった。

「別れましょう」

私はその場を去って言った。

後ろからは彼の声が聞こえる。

聞こえないふりをして、振り返ってしまわないようにまた歯を食いしばる。

口からは血が流れて、涙を流して、

「さようなら」と呟く。

彼へ対してか、はたまた過去の自分に対しての言葉なのか。

これは、恋に溺れた依存心の「「怪物()」」に対する罰だと信じて、未来へ歩く。

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