第四十二話「果てなき戦い」
ユーキたちは新婚の若夫婦を装い、国境の検問を抜けた。事実上の敵地ではあるが、のどかな景色が広がっている。ヴァスパーラ共和国は表向き平穏を保っている。しかし、政治と軍事は混乱しているようだった。
公表されてはいないが国の東の一部は、中央政府に反旗を翻し独立を宣言していた。そしてその動きはじわじわと他の地域を浸食しつつあるのただ。
反乱軍の後ろ盾はアーシラドゥン王国と噂されている。
ユーキたちはヴァスパーラ軍特殊部隊に、非公式に協力し反乱の芽を摘んで回った。
そしてアーシラドゥン王国内に潜入したユーキたちは、この国が完全に火星人に支配されていると、知ることになる。
「なんてことだ……」
反乱グループの拠点と思われる、廃棄された古城に潜入したユーキとフィローラは、その中にズラリと並ぶトライポッドを見つけたのだ。そしてフィローラの爆裂魔法技で城ごと破壊した。
二人は従属の力で民衆を解放しながら、火星人の更なる拠点を探す。そしてユーキとフィローラの動きを察知したアーシラドゥン側は刺客を放つ。
人間と魔族、そして小型のトライポッドと呼ぶべき殺人機械の部隊に追い詰められたユーキとフィローラは、任務の継続を断念し山岳部を進みアーヴィア王国との国境線を目指した。
追撃をかわしながら逃げるユーキたちの前に、アーヴィアのゴーレム部隊が姿を現す。幾度となく国境を越えたトライポッドの攻撃に、業を煮やしたアーヴィア王国はアーシラドゥン王国に宣戦を布告。戦力が国境を突破して進撃を開始していたのだ。
複数のトライポッドをものともせず、一体のゴーレムが突出し奮戦する。その力にものを言わせた戦いぶりは、運命を背負った少女たちが操ってる。
騎士たちも奮い立ち、火星人の殺人機械を押し戻した。ユーキとフィローラは窮地を脱し、久しぶりに仲間との再会を果たす。
「助かったよ。戦神の乙女」
「どういたしまして。ノワールの騎士」
王族自らが先陣を切った越境攻撃は、アーヴィア王国の勝利で終わった。
同時期、魔族統一王国ジェーヒャと、フレイトス連邦共和国の連合艦隊がクワクリルトン諸島共和国を支援して、本島南端の奪還作戦が開始された。
上陸したゴーレム部隊の活躍で数機のトライポッドは駆逐され、火星人の拠点は破壊される。
艦隊はクワクリルトンの首都に寄港し、三国はそのまま同盟協定に調印した。
◆
ゴーレムを操る魔法制御技術と運用技術。そして念動人形たちの力が新たな兵器を生み出した。
飛竜数匹の力を持って一発の実体弾を高空まで移送し、そして同じく飛竜に騎乗する数十の魔導士、魔法使いたちが念動の力でその弾を高高度まで打ち上げる新兵器。
成層圏を突き抜けて、一気に衛星軌道まで達した反撃の矢は火星人の母船を貫く。
作戦基地として選ばれたクワクリルトン諸島の南端に、各国から選りすぐりの人材が集まって訓練を繰り返した。
この攻撃に対し防御兵器を持たない火星人の母船は無力だった。
週に一回程度が限界のこの攻撃ではあったが、集結していた母船は次々に撃破される。そして混乱の中、緊急脱出した降下艇のほとんどが海に落下し水没した。
火星人の取った対応策は単純明快だった。進行の前倒しだ。
新たに飛来する母船は間髪をいれずに降下艇を射出し、今まで宇宙にあった司令部を地上へと移動させる。
そしてこの大陸の中央部、アーシラドゥン王国の山岳地帯に囲まれた高地に火星人の基地が築かれたのだ。
各個撃破を恐れたのか、大陸各地で活動していたトライポッドが基地に集結を始めた。それに合わせるように人間、魔族軍もまた、大陸中央に戦線を集中させる。
この世界の存亡をかけた最後の戦いが始まろうとしていた。




