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彼岸の案内人  作者: 十月夏葵
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ケース1 『私は上手く出来たかしら』

白い壁に囲まれた部屋。なーんか警察の取調室みたーい。能面みたいな人にここ放り込まれて座ってろっていわれたけど、そもそもここってどこよ。気が付いたら大理石の廊下みたいなところにいたって感じだし。まあ、お腹も減ってないし、体も軽くていいけど。

「お待たせしました。この度はまことにご愁傷様です。青柳愛様ですね、私はイザナと申します。案内役をやっております。よろしくお願い致します」

燕尾服と執事服の中間のような服だけど、襟は市松模様だ。白と黒のモノトーンでちょっと素敵な洋服。その服に映える金に近い髪と幼さの残る端正な顔にブルーの瞳。この年頃特有の可愛さとどこか達観した表情がアンバランスな魅力となっている。こんな美少年初めて見た。

「イザナ君だっけ。ここって少年しかいないの?」

「…ああ、これはちょっと資料室で下の方の棚を整理していたので、小柄な方がやり易かったんですよ。やりづらいとおっしゃるなら成人男性と同じぐらいの体格も可能と言えば可能ですが、そうしますか?」

「え、いいよそのままで。私は子供以外の男って怖いの」

「そうでしょうね。言ってみただけです」

ドンッとテーブルに置かれたのは事典の様な厚さの本。本来タイトルが書いてあるところには、私の名前が書いてあった。

「この本には貴女の詳細な人生が記されています。もっと手軽なパソコンタイプでも確認できますが、アナログの方が落ち着くので本形式で。しかし、幸の薄い人生ですね」

「ちょっ、プライバシーの侵害じゃない?見た目が子供でもやっていいことと悪いことがあるんだよ!ママに教わらなかったの?大体、幸薄いなんてそんなこと…」

きょとんとした顔の後浮かべたのは、その容貌に不似合いな薄い笑み。それはどこか冷笑にも似た、温度が全くない笑みだった。

「面白いこと言いますね。貴女はまだ気が付いてないんですか?死人にプライバシーなんてないんですよ。ここには弁護してくれる人はいません。ねえ、階段から転落死された青柳さん。二十歳という若さで亡くなられるとは、受け入れられないのも無理はないですが」

脳内に、どこかの階段を転げ落ちる映像がフラッシュバックする。そうだ、逃げる途中強く背中を押されて転げ落ちて…。強く頭を打ってそのまま意識が遠く…。

「私、頭を強く打って死んだのね…」

「思い出されましたか。そうです、死因は脳挫傷。転落の際頭部を強打したのが原因です。一応事故死として警察では処理されましたが…「違う、殺されたんだ。誰かが私の背中を押して、それで階段から落ちたの」

「そうですね。事故死となったのは色々な世間体です。思い出されたそうなので、あなたの口から語っていただけませんか?これまでの人生を。事実確認です。ご了承ください」

「面白い話じゃないわよ?」

「面白さなど求めていません。なるべく事実でお願い致します。貴女から直接聞きたいだけなので」

「いいわ、ちょっと長くなるんだけど…」

私が物心ついた時にはもうママはいなかった。いたのは飲んだくれのろくでなしだけ。お酒がなかったら暴れて暴力をふるう最低ヤロー。子供が泣いたら泣き止むまで殴り続ける、そういう奴だった。体中いつもあざだらけ、児童相談所の職員さんが来たことも1回や2回じゃない。その度、ろくでなしは時には包丁を振りかざし、女性職員を殴りつけるなどした結果、とうとう警察沙汰。酷いアル中の所為で会話すら成立せず、公務執行妨害もついたが、なぜか執行猶予が付きノコノコ戻って来た最低の前科者。このろくでなしはその後、私が中学を卒業するのを待っていたかのように、はした金で私を売った。

「お前は今から借金のカタで組長の愛人だ」

笑っちゃうでしょ。ギャンブルと酒代で借金ばっかりあったって。中学だって義務教育だから卒業できただけで、ほとんど行けてなかったし。まあ、最低なヤローの暴力で殺されるぐらいなら、多少強面でも暴力がなければなんでもいいやって売られてやったわけ。


「ここまでで十分幸が薄いと思いますが、そこでの暮らしも2年くらいはそこまでどん底でもなかったのでは?」

「どん底まで落ちてそこよりどん底なんてないわよ。でも、そうね。まだマシだった」

思い出しながら私は続きを語り始める。


「青柳愛さんだったな。妻もいる愛人もいる女には不自由してない。だから、娘になれ」

どんな怖い人かと思ったら、背中に菩薩と蓮の花を背負ったおじいさんだった。その時すでに御年七十歳近く。ま、それで妻も愛人もいるんだからお盛ん以外の何でもないけど。ただ、どの女性に子供産ませてもなぜか全員男の子。これ以上男の子が増えると跡目争いで組が潰れそうとか言う理由で、娘が欲しかったらしい。出来れば、まったく血の繋がらないあれで、後腐れ無さそうで、出来れば法律に触れない感じで、でも養子縁組とかしなくてもいい子。

私なんてうってつけよね。ママはいないし、血は繋がらないし、義務教育自体まともにいってなかった無学な子供には何もできないし、力もなかった。そもそも、ご飯もろくに食べてなかったから痩せっぽちで小さくて、十五だっていうのに女でもない、貧相な子供。

でも、奥さんが本当にいい人で、本当の娘のようにかわいがってくれた。私にもママが出来たみたいだった。

「可哀そうに、こんなに痩せて。雪のように白い肌なのに痣がこんなに。さ、まずはお風呂に入りましょう。そうしたら、温かいご飯を食べて今日はゆっくり寝なさい。ベッドのお布団は新しいものだから、きっと気持ちよく眠れるわ」

そう言って、お風呂にいれてくれていい匂いのする石鹸をよく泡立てたスポンジで痣が痛まないように優しく隅々まで洗ってくれて、美味しい肉じゃが作ってくれた。出汁が良く染みて美味しかったな。布団もふかふかで本当にこんなに幸せでいいのかってぐらい。本当に、売られてよかったと思ったよ。

真冬に毛布もなく外で寝ることもあったころに比べたら、奥さんが作った美味しいご飯が食べれて、あったかいお風呂はいれて、ふかふかの布団があって。分数もろくにできなかったけれど、息子さんたちのお下がりの教科書で勉強だってできた。全部お下がりだったけれど、本も読めるようになったし、お洋服も新しいのもお下がりも沢山。

珍しくそこは奥さんと愛人さんが仲良くって、ママが5人ぐらいになったみたいだった。愛人さん達も女の子が欲しかったみたいで、着せ替え人形みたいな感じで、綺麗なお洋服も可愛いお洋服もたくさん着せてくれたし、ご飯も連れていってくれた。


「コーヒーの味もテーブルマナーも全部教えてくれたのよ」

簡単に言えば、ちやほやされていた。ワガママを言ったことがない私は、従順な子だとよく組長に頭をなでられた。扱いやすいという意味だったと思うけれど。生まれて初めて満たされた生活を送った。

「最低限が保証されてますからね。衣食住。ですが、二年後組長が急死なさってますね。心臓がもともと悪くなってたそうで」

「その時点で割と年だったしね、平均寿命よりちょっと早かったぐらいでしょ。心臓発作でぽっくり。割とある日突然だったけれど、ピンコロ宗教信者だったしいいと思うよ。葬儀も盛大だったし」

「ピンコロ宗教?」

「ピンピンコロリって死に方したいって言ってる人。ピンコロ宗教っていうの。でも、そこからは絶望だったな」


父親というか祖父だろうか。そんな風に慕っていた組長がなくなり、跡目争いが始まった。そもそも遺言状が始まりだった。それがすべての元凶ともいえる。組専属の弁護士だといった人が読み上げた遺言状。

正妻の子で長男でもある将生さんが後を継ぐこと。そして、私が産んだ子供がその次の組長。5人の男兄弟のうち誰と結婚したとしても、私が産んだ子供が男の子であればその子が次期組長となる

私と結婚しなくても子供さえ生ませちゃえば、その子の後見として組の全てを握れちゃうってことだから、その日からもうあの手この手。高価なプレゼント、豪華な旅行、どれも性に合わなかったけど。5人の兄がこぞって私をあちこちに自分の恋人として連れ回し、関係まで強要した。

そこからは本当に地獄。苦痛しかなかった。泣いてばかりいた。

ママたちは助けてくれようとしたけれど、止めようとしては殴られそうになって。それでも私をできる限り守ってくれた。

「この子に手をあげたら、この命に代えても殺します。これはお願いではなく、命令です。アンタ達いいね?この子に手をあげるんだったら、死ぬ覚悟決めな」

子供を守ろうとする母親の姿を、この時私はママに見た気がする。鋭い目つきと口調。そこにあったのは優しいママの顔ではなく、極道の妻としての顔だった。

そうして、跡目争いは静かに水面下で行われることになる。


「直接的な暴力はないんだけれど、関係の強要も暴力だと思うんだよね」

「そうですね。それで、誰の子供もなかなかできずドロ沼化ですか」

「そー、やっきになって。毎日苦痛で仕方なかった。ヒロ君に会ったのはそんなときだった」


そんな地獄のような日々の中、私は一人の青年と出会った。ヒロ君に会ったのは私が十八でヒロ君が十九の時。組の中では年が近くって、最初は2番目のお兄さんが寄越したスパイ兼私の世話役兼話し相手みたいな。ヒロ君は命令だから仕方ないけれど、本当は嫌だった。というのが言わずとも感じられるような人だった。

「お前がお姫さんかよ?」

初めて会った時は、ぶっきらぼうで不愛想で、目つき鋭いし、結構本気で怖かった。その頃にはもう子供以外の男の子って怖かったし。でも、変に優しいっていうか、泣いてると急にいそいそ紅茶淹れてくれたりするんだよね。味薄くて、正直あんまり美味しくなかったし、それだけは何回やっても上手くならなかったけれど。不器用な優しさがあった。

素人目にも『この子、極道向いてないんじゃないかなぁ』とも思ってた。で、私の境遇とか泣いてる理由を話してるうちに、ヒロ君も自分の事話してくれるようになった。

「うちはアニキが頭良くて、俺は出来損ない。で、家出して、あちこちふらふらしてた。サツから逃げ回ってたってのもあるけど、公開捜査もビラもなしってことは、親も追い出せてラッキーとでも思ったんじゃね?まだ十五のガキだぜ?そんで、喧嘩売られて買って、殴って殴られて強くなって、カツアゲしたり?やってるうちにゾクのヘッドよ。底辺ヤローがトップ、天下取っちまったワケ」

私ほどではないかもだけど、割と暗い過去をそれはそれはあっけらかんと話すんだよね。もう、何も気にしてもないって感じでさ。腕っぷしがどうこうじゃなくて、本当に強い人なんだなって思った。話すと明るくて、笑った顔可愛くて、こっちの警戒心も下がったっていうか。


あの人懐こい笑顔を思い出す。彼を思い出す時は必ず笑顔が浮かぶ。

「シンパシーって言うんだっけ、お互い似た者同士惹かれ合っちゃったんだよね。未来なんて、そんな希望溢れる言葉使いたくないけどさ。ドロ沼化の中その関係は明るい展望なんてなにも見えなかったんだけれどね」

だからといって止まることも戻ることも出来ない関係になってしまった。

「でしょうね。ところで、貴女子供いたんですね」

「えー、ソレ詳細な人生書いてあるんでしょ?いたよ。超かわいい男の子」

すべてを失うなんて思ってもいなかった。


ヒロ君が俺の子として育てるって言ってくれたから、母子手帳に勝手に名前書いちゃったんだけど。本当は、誰が父親かは分からないんだ。ヒロ君ともこっそり関係を持ってたし、そこには義務じゃなくてお互いを思う気持ちがあったけど。5人とも関係持ってたし、誰かの子供だと思うんだけれど、結局怖くて調べられなくて…。

「ねえ、俺と逃げよっか?どっか遠い所。愛が行きたいって言ってた沖縄とか。昔の仲間に声かけたら、九州まで何とかなるし。陸路は時間かかるけど、飛行機よりは足取りがつかみにくいからな。行くまでにいいところが見つかるかもだし」

気が付いたらもう23週で、産むしかなくて。たとえば1週でも産んだと思うけど。他がノリノリで遺伝子調べる検査の準備とか始めちゃって。ヒロ君の子供の可能性もあるし、そしたらヒロ君もその子も無事じゃないしどうしようって。ヒロ君が逃げようって言ってくれたのは嬉しかったんだけれど、ムリかもともちょっと思ってた。けど、明るい未来っていうの信じたかった。

「行こうぜ、沖縄」

「うん、一緒に行こうよ」

上手く行ったのは本当にタイミングと運の良さ。

私に子供が出来たことで組の内部自体があわただしくて、ヒロ君がいなくても気づかれにくかったし。それに、妊娠発覚と同時に胎教がどうとか適当な理由つけて、ママたちが私の事匿ってたから。出発の日には割とまとまったお金を渡してくれた。

「自由に生きて愛。貴女は私達のたった1人の娘。これぐらいしかできないことを許してね。どこにいても私達の最高の娘。愛してるわ」

ありがちな言葉だったかもしれないけど、生きてて良かったって、この人達の娘になれて本当に良かったって心から思った。涙が止まらなくて、私もお腹の子にそう思ってもらえる母親になりたかった。でも、現実って上手く行かないよね。


「臨月に入ったあたりで、傘下全部使ったのかって位のローラー作戦。居場所が割れて、私だけ逃がしたせいで、ヒロ君は目の前で消された。そこからはヒロ君の昔の仲間が助けてくれて、子供は何とか産めたんだ。でもやっぱり、限界きちゃって」

「本当に幸薄い人生ですね」

「本当にね。でも、子供だけは命に代えても守りたかった」

思い出せるのは、私には似つかわしくない教会の厳かな雰囲気だけ。私は再び口を開く。


生まれたばかりの息子を抱えて、もう逃げられなくて。町にあった教会に母子手帳と一緒に置いてきたの。そこは毎週土曜日の朝に礼拝があって讃美歌が聞こえてたし、金曜日だったの。それに温かい春だった。逃げ隠れるように育つよりは、まっとうに育ってほしくて。この子に出来る最高の事だったと思ってる。そのあと、見つかった。

「待てっ」

「私は戻らない。子供もいないの」

「どこに隠した」

「言わない」

慌てて階段駆け下りて、地下鉄にある鉄道警察署に駆け込もうとして。それで降りてる途中にドンッと突き飛ばされた。血が凄く出たんだろうね、手が濡れていく感触と共に意識が薄くなって、気が付いたらここにいた。


「そして今に至ると。まことにご愁傷様です」

「ところで、この後どうなるの私。裁判?の後、ここに連れてこられたんだけど」

イザナ君は私をじっと見て壁を指差した。そこにはいつの間にか二つのドア。入ってきたドアとは色が違う。入ってきたドアは白、目の前にある二つのドアは青と赤。どちらも真鍮らしい古びた取っ手が付いている。

「ここは未練を持つ人のみが通される部屋。あなたの未練は、子供に何も言わずただ置いてきてしまったこと。強い未練ですね。万が一害があったら困るので、専門の職員が対処します。死んだことは変えられませんが、一言ぐらい言う時間でしたら与えることが許可されています」

「隣は地獄への扉?」

「彼岸の法では貴女は無罪だ。子供を手放しましたが、やむを得ない事情でしたから。それと情状酌量の余地があったので。」

裁かれることも許されないのか。私は裁いて欲しかったのかな、もう分からない。でも、地獄しか行先はない気がしてた。私は結局ママたちみたいにもなれなかったし、自分の子供でさえ満足に愛せなかった。ママにもヒロ君にもあんなに注いでもらったのにも関わらず。

誰かに返すことも、誰かに還元することも出来てない。なのに、天国なんていいんだろうか?

「地獄よりは一瞬ですが、天国に行く前に煉獄があります。それがこちらの赤い方の扉。魂の浄化も為の場所です。浄化には激しい苦痛が伴います。ですが、それに耐え真っ白になった魂で次の準備を天国でする。どちらにせよ煉獄は避けられません。貴女は未練を晴らして浄化に耐えるか、そのまま浄化で苦しむか」

もう絶対に言えないことだと思ってた。けど、私たちの子供に毎日でも言いたいことがあった。絶対に言いたい言葉がある。

「私まだ、子供に言ってない事があるわ」

「それなら、そちらの青い扉どうぞ」

大きく深呼吸をして、青い扉の取っ手に手をかける。思い切って扉を開けると眩しい光と強い風が吹きつけた。


腕に抱えるぬくもりに気が付き、下を向く。あたりを少し見まわした。ここは、教会。これはあの日なのか。最愛の子供と別れた最後の日。

「一緒にいれなくてごめんね。強く健康に育ってね。あなたは私と私が愛した人の息子なの。幸せにね。愛してるわ、翔」

柔らかく、温かい頬に頬を寄せた。どこかで鐘が鳴る。タイムリミットの合図だろうか。そっと翔をゆりかごに戻す。この子がたくさん愛されますように、祈りながら目を閉じた。


目をあけるとあの部屋に戻っていて、イザナ君が懐中時計を片手に立っていた。

「大した時間がなくてすみません。規則ですので」

「ううん、言いたいことは言えたよ」

本当はもっと言いたいことあった気がするけれど、顔見たら結局あれしか言えなかった。誰の子供か分からないけど、ヒロ君との子だ。顔に面影があった。ヒロ君とは二年弱、翔とはお腹にいた時期を足しても十一ヶ月…。どちらとも短い時間しかいれなかった。その短い期間でも私は上手く愛せていただろうか?ちゃんと愛されて生まれてきたことを伝えられたかしら。

「ねえ、イザナ君。私は上手くできたかしら」

微かに頷いた気がした。だけど、もしかしたら肯定したつもりはなく、ただの動作だったのかもしれない。

「じゃあ、どれくらい激しい苦痛か分からないけど耐えるよ。浄化が終わったら翔の子供として生まれたいわ。ありがとう、イザナ君」

「仕事ですから。あなたは苦痛に耐え徳を積みました。来世が幸多からんことを」

決まり切ったセリフなのか励ましなのかよく分からない言葉に軽く手を振り、私は赤い扉を開けた。


青柳愛さんを見送り、彼女の人生という本に完結の判子を押した。彼女の人生は完結した。人は物事を追憶する生き物だという。なら、私にとって確認以外の意味のないことに思えるこの作業も、実は意味があるのかもしれない。

「イザナ主任、新しい方がお見えになりました。こちらが資料です」

新しくやって来た部下が新しい本を差し出す。

「すぐに取り掛かるので、いつもどおりお願いします。この本は閉架書庫に」

部下に本を渡し、軽く襟を整えた。

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