七話「初クエスト」
さて、再びクエスト選びだ。
「星2であれなら、初めはやっぱ星0にした方が良さそうだな」
「そうね......私も死ぬのは嫌だ」
「お前はいいよな、脳直撃で即死だったんだから。俺は毒に侵されて苦しみながら死んだんだぞ」
「そ、それは悪かったよ......でもまだ決着はついてないからね!?」
まだ諦めてなかったのかこいつは。
「ハイハイ。......っと、星0だとこれとかか?」
「薬草採集......まぁ、いいんじゃない? 草とってくるだけでしょ?」
「確かにそうだけどさ、もっと言い方は無いのか?」
あんな説明を受けたばかりで正直このクエストでも若干嫌な予感はしたが、金を稼げなきゃ生きていけないので受けることにした。
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指定された場所は、初めてこの世界の土を踏んだあの森だった。
とりあえず渡されたイラストを見ながら薬草を探し始める。
「見て見て! すごく変な石見つけた!」
「石じゃなくて草を探せ」
「......ねぇ、この石動いてない?」
「は?んなわけ......ほんとだ、動いてる」
理乃が持ってきた石をよく見ると、亀裂が入っていて動いているように見える。
「とりあえず檻にでも入れとくか?」
「そうしよっか。なんか不気味だし」
ということで『創造』で木の檻を作り(約10秒)、閉じ込めておいた。
「あっそうだ。勝負しようよ」
「突然どうした」
「日が暮れるまでに薬草を集めた量が多かった方の勝ち。」
「決闘の続きだよ。流石に異世界来てすぐに殺し合いはしたくないし。」
「わかった。太陽っぽいのが見えなくなった時がタイムリミットだぞ」
俺が死んだのは理乃の毒が原因だから実質もう決着は着いているはずだが、それを言うと調子に乗りそうだからやめておこう。
「私は向こうで探すから!横取りは厳禁だよ!」
「アホか。離れると日が暮れる頃にはお互い見えなく......」
俺の忠告も虚しく、理乃はもう走っていってしまった。
仕方ない、バレないようにしながら近い場所で探索するか。
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クエストで指定された薬草は以下の2つだ。
[カエンタケ]
赤色で短く、厚い草。
割とどこにでも生えている。
炎の精霊が育てたと言われ、周囲の温度を上昇させる力を持つ。
[ツキヨタケ]
淡い茶色で薄く広い草。
木の枝にぶら下がるように生える。
月の光に反応して光とともに魔素を放出する。
名前は夜に高所で光る様子が月に見えたことに由来する。
俺の記憶に間違いがなければ地球では有名な毒キノコだったはずだが、薬草として依頼書に書かれているのだからこの世界では薬草なのだろう。
辺りを歩いたり草をかき分けたりしていると、カエンタケらしき赤いものが見えた。
周りの草をどけてみると、地球のカエンタケそっくりな赤いものが見えた。
正直触りたくないしなんなら近づきたくもないが、仕方ないので引っこ抜く。
大丈夫、これは薬草だ。大丈夫。
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どう見ても毒キノコにしか見えない薬草を集め続け、気づけば空は赤くなっていた。
ラストスパートだ。
ちなみにカエンタケもツキヨタケも数が少なく、今の時点ではまだ両腕に収まる程度の量しか集まっていない。
いや、別に両腕に持ってるわけじゃなく、ちゃんと『創造』で作ったでかいカゴ(20秒)を背負っている。
「暗くなってきたな......ツキヨタケに集中するか」
そんなことを言っていた時だった。
「な......何これ!?」
理乃の声がした方へ行くと、そこには尻もちをついた理乃と......
さっき檻に入れた石があった。
「おい理乃、なぜ出した」
「だ、出てないわよ!こいつがどこからか歩いてきて......」
現実逃避も虚しく、現実を突きつけられた。
大方、石が変形してゴーレムにでもなるんだろう。
亀裂が入って動いていたことが何よりの証拠だ。
だが不可解なのが、先程から一向にゴーレムの姿にならないということだ。
バレていないとでも思ってんのか......?
「いっその事叩き潰すか?」
「そうね、やっちゃって」
『創造』で大きめの鉄槌(25秒)を作り、振りかぶる。
その時だった。
『ちょっと待った!ごめん!謝るから!砕かないでくれ!』
「こいつ直接脳内に・・・!?」
正直展開が強引すぎる気はしてる。
反省はしてない。
残念チートと違ってこっちはもう街についてるから話が進めやすくていいね。アルラスはよ街行け
次回はこのゴーレム(?)回です。