86.ケンリ
今回は短くてすいません。次話はまたいつもの文字数に戻るので安心してください。
「話があるからついてこい、です」
夕食を食い終わった後、改めてカイリちゃんはそう言った。
「どこに行くんだ?」
「……わたしのいえだ、です」
「ここではできないような内容なのか?」
「……そのチラシにかいてあることについてだ、です」
「ふーん……」
だったら、この場で話しても良くね?と思ったが、カイリちゃんを怒らせたらマズイので素直についていく。
ぞろぞろと六人の集団で歩いていると、やがて大きな家、というよりも屋敷のような建物の前でカイリちゃんが止まった。
「ここが……カイリちゃんの家、か」
途中までは半信半疑だったが、この立派な作りの家を見れば彼女がこの国の大臣の娘だという話も嘘ではないようだ。
「中に入れ、です」
カイリちゃんに促され、俺たちは恐る恐る中に入る。
「お帰りなさいませ、カイリお嬢様」
「ん、ただいま、です」
「お客様方もようこそいらっしゃいました。私は当家の使用人を勤めさせていただいています、カリンと申します。以後、よろしくお願いします」
静々とお辞儀をなさるおっぱ……じゃなかったケモ耳メイドさん。
丁寧なお辞儀に対応するように、侍女長とシーフェも深々とお辞儀をして自己紹介をする。
キーラは庶民らしくちょっと緊張していて、アルバはいつも通りだ。
俺はと言えば、彼女のとある部位に視線を釘付けにされていた。
「おい、おまえむね見過ぎだぞ、です!」
「へぁ!?いやいや、ぜんぜんっ!ぜんぜん、見てませんけど!」
カイリちゃんにそう指摘されて、慌てて視線を逸らす。
周囲に視線を向ければ、侍女長とキーラからも絶対零度の視線を向けられているし、シーフェも苦笑いを浮かべている。
肝心のケモ耳メイドさんもふふふっと意味ありげな笑みを浮かべている。
……ヤベェ、そんなに凝視してたか、俺。
いつだったか、男のチラ見は女の凝視に等しいとか言われたことがあったっけ……?
今回のはまさしくそれに当たるのではないだろうか。
「んん゛っ、あぁ……その、それで?何でこんなところに呼び出したんだ?」
その場の空気に耐えかねて、露骨な話題転換に打って出ると、カイリちゃんが呆れた顔をしながら話に乗ってくれた。
「ちょっと私的なはなしをしようとおもっている、です。だから、わたしのへやまでこい、です。……どうせほかのやつもこいつについてくるんだろ?です。べつにおまえらはいっしょでいいからぜんいんこい、です。カリン、へやの準備たのむ、です」
そう言って、俺たちを先導するように二階の一室へと向かっていった。
◆
「話というのは、来月のマンスリーマッチの一位の景品についてだ、です」
そう言って、バサッと広げられたチラシには大きく大臣の娘、カイリと表記されていた。
「あぁ、これは俺も見たときびっくりしたけど……大会の景品に人の身柄すら要求できるものなのか」
「ふつうは、物品に決まっている、です。今回のケースは特殊だ、です。いや、というよりも一人の男によって引き起こされたわがままといったほうがいい、です」
「一人の男……?」
眉間に皺を寄せて顰めっ面をしているカイリちゃんは、一呼吸おいて言った。
「なまえは、ケンリ。わたしの実のあにきにして、次期大臣だ、です」




