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85.マンスリーマッチの景品

久しぶりにあの娘の登場です。



「ふぅー……マジで、どうするか……」


俺たち五人は、飯を食べ終え、酒場と食堂が合体したようなよくわからない店を後にした後、テキトーに道を歩きながらちょっとした情報収集を行っていた。


情報収集って手分けして行うものじゃ?とか思っただろう?

俺もそう思って侍女長に言ったら、とんでもないことが明らかになったのだ。


「この国が男尊女卑思想が強いことは教えたと思いますが……逆に言えば、女性の地位は確立されておらず、単独での行動は許されていません。今も人通りを見ればわかるとは思いますが、大抵道を歩いているのは男性か、歩いていたとしても男性に付き添ってもらっている方しかいません。信じられないかも知れませんが、フリーで歩いている女性とは、この国ではどうぞ襲ってくださいと言っているようなものですからね。したがって、私たちも単独や女性だけで歩いてしまえばたちまち獣の餌食となる訳ですよ」


「だから、貴方には申し訳ありませんが、私たち四人を手込めにしたハーレム野郎として、一緒に行動してもらう必要があります」と侍女長は嗜虐的な笑みを浮かべて笑っていた。


この国の独自な思想に驚愕したが、それよりも気になる事があった。


「というか、俺ってハーレム野郎だと思われてたの?」


「はい。先程、尋ねた獣人の方も貴方に言っていたではないですか。“よっ、やるなぁ、兄ちゃん”と」


「あぁー!?」


それってそういう意味だったの?

なんか聞く人聞く人の殆どが俺に意味あり気な笑みを浮かべてくるもんだから、少し気にしてはいたんだが……。

なんだよ、俺はこの国では四股したナンパ野郎だと思われてんのか……。


誰にも手を出したことなどないというのに、不条理だぁ、と嘆いていたが、この国の連中は別に俺のことを嘲笑っていたというわけではないらしい。

むしろ、多くの女性を囲うということは強い男の証らしく、一種のステータスである。

強い男大好きの獣人達からすれば、まさしくハーレム野郎は憧れの的。

皆は俺に敬意を持って接してくれていたようだ。


そんな独特な思想を持っている国にまともな短期バイトなど早々見つかるわけもなく……というか、お前こんだけの女囲えるぐらい強いんだろ?だったら拳闘士になれ!そして、俺と戦え!と血気盛んなお誘いを受けることが殆どで、有益な情報は見つからなかった。


「はぁー……どうすっかなぁ……」


夕方頃になり、小腹も空いたということで、昼間で食事をしたところにまた戻ってきた俺たちは、とりあえず飯の注文をした。

はぁーい、ただいまぁ、という間延びした女性店員の声を聞きながら、俺は思考を巡らす。


……いや、というかこの店のウェイターとか良さげじゃ?まぁ、雇ってくれるか怪しいけどさ。

この国の思想上、働ける女性というのはほんのひと握りで、大半は家に篭りっきり。

商売とかも殆どさせてもらっていないらしい。

そんな状態で、出自が不確かな俺たちを雇ってくれるところは……まぁ、ないよな。


「やはり、ここはマティスに体を張ってもらうしかないのでは?」


「なっ!?それは反対です!お兄様は、か弱いんですから、こんなムキムキの人たちの中に入ったら死んじゃいますよ!」


とか、言って二人はまたもや口論。

シーフェも考えてはくれているが、侍女長の意見しかないのでは?とやや拳闘士に賛成寄り。

アルバは……まぁ、なに考えているかよくわかんないけど、最悪野宿で良いんじゃ?とか思ってそう。


「うーん……」


俺はと言えば、先程焼き串屋のおっちゃんから貰ったチラシを見つめて考え込んでいた。


何でもおっちゃんが言うには、拳闘士の仕事には大きく分けて二通りあるらしく、デイリーマッチとマンスリーマッチというそうだ。


デイリーマッチはその日に集まった拳闘士達がランダムでマッチングして戦うというもの。

一日に大抵五試合ほど行って、優勝すればそこそこの賞金が、負けてもファイトマネーが貰える、らしい。

ファイトマネーの値段は観客の賭けた額に比例するようで、拳闘士として名が売れれば、ただ試合に参加するだけでかなりの額が貰えるようだ。

だが、逆に言えば名が売れていない奴はそこまでお金が貰えないということ。

試合で負った傷とかは自分で治療する必要があるので、そこそこ出費もあるし、そもそも名が売れている奴は必然的に強いから優勝賞金が貰えるだろうが……弱い奴は賞金も貰えず、ファイトマネーも低いというか負の連鎖。

圧倒的な実力主義の世界であるというわけだ。

俺が日和っているのも仕方ないと言えよう。

痛い思いしてしかもマネーも低いとは話にならんわ。


で、もう一つのマンスリーマッチってのが、運次第でそこそこの金が稼げるとおっちゃんが言っていたやつだ。

マンスリーマッチは、月一で行われる大規模な拳闘士の大会みたいなものだ。

ただし、デイリーマッチと違って拳闘士ではない一般人も参加できるというのが、大きな違いであるようだ。

そもそもの話、拳闘士というのは勝手になれるものではなく、拳闘士クラブという所で、事務手続きを行い、年会費金貨一枚を支払うことでなる、結構本格的な仕事だ。

このクラブに所属してしまうと、週に一度は必ず殴り合い参加しなければならず、参加しなかった場合は罰金として更に金貨一枚を要求される。

こんな感じでかなり規律が厳しいために、そんなに体力保たねぇよ!という奴や本業が別にあるので時間がありません、という奴がそこそこ居て、拳闘士自体の人数はそこまで多くないらしい。

そんな状況を憂いた国王が自ら、考案したと言われているのがこの参加無制限型のマンスリーマッチのようだ。

この試合は、まず予選で10人1組になっての総当たり戦を行い、上位二人を決勝トーナメントに進出するという形で行われる。

最終的に本戦に出場する人数は決まっておらず、予選ブロックが多ければ多いほど決勝トーナメントも規模が大きいものになる。

気になる賞金だが、予選ブロックの段階で一勝でもすれば必ずファイトマネーが出るらしく、とりあえず一勝を目標にしている新人も多いようだ。

そして、決勝トーナメントに出場した時点でデイリーマッチの優勝賞金と同じぐらいの値段が出され、決勝トーナメントに優勝した日には、莫大な富を得ることができるらしい。

しかも、一位には金とは別に毎回用意される何らかのアイテムなどの報酬が、そして二位、三位にも四位にも一位ほどではないにしろそれなりの豪華景品が貰えるらしい。

こんな費用が馬鹿みたいにかかりそうなことを毎月やっているのか、とびっくりしたが、そこは大会の入場料や賭け、観客からの投げ銭などで賄っているらしい。

ちなみに、国王様自らの投げ銭(という名の投資)もあるようだ。


まぁ、こんなビッグイベントだから当然出るやつもかなり強いのが多いらしく、毎回毎回一位争いはかなり熾烈らしい。

それでもその大会のチラシを貰ってしまったのは、予選ブロックでもそこそこお金が貰えるというところに魅力があると感じたことと、焼き串やのおっちゃんが来月のマンスリーマッチはマジで景品が豪華だから、参加して損はないぞ!という言葉に後押しされたと言ったところだろうが。


「まぁ、大会参加者を募る常套句なんだろうが……」


ペラペラのチラシを眺めながら、そう呟いてみる。

まぁ、見るだけならタダなんだから……と読んでみると、確かに景品が良い。

予選ブロック通過者に金貨十枚とそれなりに良質な剣、売ればかなりの値段になるだろうか。

四位が魔導鉄で作られた壺、三位がミスリルの盾、二位がオリハルコンゴーレムの核、一位がーーー


「……は?大臣の娘、カイリ嬢?カイリ、ってもしかしてあのカイリ……?」


思い出すはプリティーなケモ耳がついた小さな女の子。

一緒に奴隷から抜け出して、なんだかんだで王都まで一緒に旅してきた……あの?


「いやいや、まさかね……」


ブンブン足を振り回したり、狼を素手で引き裂いたり、どう考えてもお嬢様という感じではない。

人の腹を踏んづけて、今日からお前は私の家来だ!とか蛮族のように宣っていたし、とんでもない奴だった……。そういえば、獣人の女性は戦闘行為を許されていないとか侍女長が言ってなかったっけ?じゃあ、何でカイリちゃんはあんなに戦えるんだ?素の身体能力か?いやでも、氣とか使ってたしなぁ、あれは明らかに誰かに習った感じだろ。……まぁ、別にどうでも良いか。

とにかく、あんなアクロバティックに戦闘をこなす、お淑やか、という言葉からかけ離れた彼女を思えば、侍女長ですら淑女と言えるだろう。


「ふんっ……さっきから言わせておけば、さんざんな言い草だな、です!」


「おっと、ついに幻聴まで聴こえてくるようになってたか……これは参ったな。……ってか、俺声に出してたか?」


「丸聞こえだったぞ、です!というか、おまえのいうその侍女長とやらも怒っているぞ!です」


「マジか……そりゃ、悪いことをしたなぁ………って、あれ?」


さっきまで隣にはキーラが座っていたはず。

なのに、聴こえてくる声は随分と幼いしそれに変な言葉遣い……いや、まさか、な。


油の切れたカラクリ人形のようにギギギと首を横に向ければ、フッサフッサのあのケモミミが俺の目線に。

そして、ちょっと視線を下に向ければそこにはーーー


「久しぶりだな、です」


ちんまりとした体で俺とキーラの間に無理矢理割って入った形で着席しているあの獣人娘の姿があった。


……後、青筋を立てた侍女長が向かいの席に座ってこちらを睨んでいたので、俺は必死に謝りましたとさ。








いやー、これでヒロインフルメンかぁ、と思うとここまで長かったような気もします。ここまで、書いてこれたのも読んでくれる皆さんのおかげです、ありがとうございます!

地味に伸びてきているブクマとか評価はかなりモチベに繋がっているので、していない方は是非お願いします。

感想も待っているよ!

明日も投稿するのでよろしくお願いします!


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