82.獣人国のポリシー
明日はいよいよゴールデンウィーク!何とかこの日まで投稿を続けることができました。ありがとうございます!
この調子でゴールデンウィーク中も毎日投稿頑張る予定なので、ブクマ、評価、感想などをお願いします。
翌朝、勇者の結界によってダメージを負って気絶していた姫様の傷も癒えたようで、無事に目を覚ましていた。
起きたら全然知らない洞穴の中という事実に混乱していたようで、しばらく目をキョロキョロさせていたが、俺たちの姿を見て安堵し、そしてキーラとアルバの姿を見て怪訝そうな顔になった。
俺がキーラとアルバに会った経緯と同行することを簡単に説明すると、少しだけ考えた後に、「マティスさんの判断に任せます」という同意の言葉を得ることができた。
まぁ、同意を得れた一因としては、侍女長が然程彼女らを警戒していなかったというのもあるのだろう。
その侍女長はと言えば、身体の傷が癒えたことで活力全開、普段の冷徹そうな彼女に戻り、キーラ達に対しても適切な距離感を保つようになった。
態度の急変にキーラ達(というか、アルバは特に気にしてないからキーラだけだろうが……)は少し訝しげに思いつつも何かを言うことはなかった。
そんなわけで昨日よりも穏やかな雰囲気で始まった異種族同盟パーティの旅は、獣人国との国境にある砦へと向かって歩みを進めていくことになったのだが、目的地はちょっと変更になったらしい。
侍女長曰く、
「魔王様がかなりのダメージを負うほどの攻撃を人間から受けている真っ最中なのですよ。人間がこのパーティに入っていることを魔族の皆さんが良しとするとは思えません。少なくとも砦にて何らかの問題が起きる可能性があります。ここは砦を避け、人間にも魔族にもエルフにもそれほど関心のない獣人国に、滞在している方が賢明でしょう」
とのこと。
獣人国は、主に獣人によって成立している国であり、彼らのポリシーには力こそ正義!というあきらかに脳筋ととれる言葉が存在する。
故に全ての種族に対して平等に優しく、平等に厳しいと言われている。
弱き者は軽蔑され、強き者は尊敬される。
そんな社会構成なのだと侍女長は苦々しげに語っていた。
「力で物事を解決するなど、あまりスマートなやり方ではありません」
などと、侍女長は宣っていたが、俺からすれば魔国も大概だった気がする。
キーラも侍女長の意見には賛成のようで、特に反論はない。
アルバは言わずもがな、そしてシーフェにはそもそもどこに行けばいいかわからないので、判断は投げっぱなしだ。……まぁ、俺もだけど。
こんな感じで、全会一致の判決が下され、俺たち一行は獣人国に向けてテクテク地道に歩みを進めた。
道中は、魔物に襲われることもなく、仲間割れもほとんどない平和な旅路であった。
少し口論になったりすることはあったが、異種族間の差別に基づいたものではなく純粋な意見の違いがあっただけの話だ。
雨風凌げる洞穴を見つけ、拠点として野宿し、たまに身体を休めながら獣人国に向けて歩き続けた。
……ちょっとだけ困ったことといえば、俺がそこそこ性欲の強い思春期の年頃の男であり、周りが女の子しかいなかったことだろうか。
普通、何日も野宿をしていれば匂いが臭くなるものだろうが、女の子の匂いは強くはなっていても臭くはなっていなかった。
むしろ甘い何かの香りがドンドン強くなっていって俺の頭がクラクラするようになっていった。
また、匂いだけでなく視覚的にも刺激が強い。
皆、洞穴の中が薄暗いからと油断しているのか、腰を落ち着けたときに少しだけ上着を脱いで薄着になるのだ。
そうすると一日中歩き通しなものだから、汗がそれなりに出て下に着ている服が透けてしまっているのだ。
いや、まぁ普段ならそこまで気にかけないようにできるよ?俺だって紳士の端くれ、レディの油断を逆手に取ってゲヘヘとするつもりは毛ほどもないさ。
でも、こっちだって発散してないから結構溜まっているし、色々限界なんだよ。
マジ勘弁してくれ、抑えるだけでかなりキツいわ。
特に無防備なのはアルバだ。
普段からポーッとしてて無防備な彼女だが、座り方がマジでひどい。
体育座りをちょっと崩したような格好をしており、股座は中途半端に開いている。
ズボンならまだしも、アルバの服は貫頭衣の丈をちょっと伸ばしたような服……チャイナドレスのようなもので、当然下半身はガードされていない。
つまりは丸見え!
……まぁ、洞穴が薄暗いせいで(お陰で?)下着が見えることはなく、今のところ問題はない、と思うけど。
強いて言うなら、彼女はいつも俺の真向かいに腰を下ろしているものだから、毎回毎回下着が見えるんじゃないかと股をガン見、じゃなくてチラチラ見てしまうことぐらいだろうか。
でも、見てはいるけど周りは咎めてないから気付かれていないようだし、アルバも気にした様子がないから多分大丈夫……なはず。
いつ俺が誘惑(?)に負けて襲ってもおかしくないなと思いながら歩くこと一週間、ようやく獣人国の門が見えてきたようだった。
◆
「ん?旅人……か?何か身分証の提示をお願いできるか?」
獣人国の門らしきものが見えてから更に二日の時間を要し、俺達はようやく門番の所へと到着することができたが、ここでいきなり問題が発生。
当然といえば当然だが、門番が俺たちに身分証の提示を求めてきたのだ。
俺はすかさず侍女長に指示を仰ぐ。
「(……侍女長、身分証持っているんですか?)」
「(……城の中にいるのは基本的に身分がある程度保証されていた者たちだけでしたからね。姫様も含め、私たちに身分を証明できるものといえば、この護身用のナイフぐらいですが)」
そう言って、家紋が象られた銀製のナイフを門番にみせるが、
「……ん?なんだ、これは?これでは身分が証明できない。別の物を頼む」
「……」
あえなく却下された。
視線を侍女長からキーラに向けるも、キーラは首を横に振って否定、シーフェは侍女長同じく持っていないことが判明しているし、アルバも……ダメっぽいな、ありゃ。
となれば、後は持っている可能性があるのは俺なんだが……。
「……」
ゴソゴソとポケットの中身や服の中を必要以上に調べるも、出てこない。
あれー?俺ってば一応冒険者カードは持ってたよなぁ?
「(冒険者カードであれば、貴方が使用人になる際に不要と判断して私が廃棄処分させていただきました)」
えぇー!?マジですか!
それじゃあ、俺だって何も持ってないよ!
俺たちがそうやってこそこそしているのを怪しんだのか、耳をピンと立てた門番が話しかけてくる。
「……なんだ?もしかして、お前ら身分証がねぇのか?」
「えっ、あぁいえ、ちょっと待ってくださいね!あ、有りますから、ちょっと探しているだけですから!」
不法入国者と判断したのか、口調が変わり語気も荒くなっていっている。
俺は必死に弁解を続けるも、これ以上誤魔化しは効かないだろう。
どうするべきか、と悩んでいると門番から意外な提案をされた。
「そうか……ならば、このオレを倒してみせろ」
「「「……は?」」」
「そうすれば、ここを通してやる」
自信満々に胸を張ってそう宣言する獣人の門番。
いや、確かに力こそ正義などというポリシーを掲げているのは聞いていたが……それで良いのかよ、門番よ。
拳を構えてファイティングポーズを取りはじめた門番の姿に、俺は思わずため息が出てしまった。




