75.平和な日常の終わり
投稿が遅くなりすいません。
明日は、ちょっと忙しいので投稿できない可能性が高いです。
「ふーん、あれが件の魔王城かぁ……なんか思ったよりショボいね?」
「まぁ、王国の城とかと比べるのは酷なんじゃねぇの?人口は勿論、技術にだって差があるだろうしなぁ……。それに見た感じ攻めにくそうな城ではあるから、そこまで手抜きってわけでもないだろう」
ボリボリと髪をかきながらやる気のない声が返ってくる。
銀と黒の混じった頭髪をした少女は、そんな冒険者の態度に眉を顰めるも、一つ溜息を吐くにとどまった。
「じゃ、作戦の最終確認だけど。僕とおっさんで城内をかき回してくるからさー、君たちはその間に彼を連れ去っていく、ってことでいいかな?」
「はい、大丈夫です」
「……了承」
素直に首を縦に振る二人の様子に、尋ねた少女は満足げに頷く。
作戦っていうほどのものでもねぇけどなぁ、と苦笑しつつもおっさんと呼ばれた冒険者も渋々肯定の意を示す。
「よし。じゃ、景気付けに一発頼むよ、おっさん!」
「……言っとくが、オレのは一回限りの大技だからな?あんまり精度もないし、被害も大きいだろうからよぉ、誤ってあいつごとぶっ潰す可能性があるんだが、そこんとこ大丈夫かよ」
「うん、問題ないよ。彼には女神から頂いた神器があるし、君の神器如きで傷つけられるわけがないよ、多分」
「多分……って、おいおい」
いい加減な雇い主に辟易とした表情を浮かべるも、これも仕事である。
そう割り切って、冒険者は一枚のカードを取り出した。
「さぁて、何人生き残るだろうな。ーーー極星の破滅」
そう呟くと同時、魔王城否その城下町と従者の館すらも覆い尽くすような巨大な隕石が、空に出現した。
◆
同時刻、従者の館にて。
ーーーウォオオオオオン、カンカンカンカンッ!!!
災害時の際に起こるサイレンのような爆音が館内に響き渡っていた。
ーー敵襲!敵襲!城下町近くにて不審な人影を発見!人数はーーーおよそ四人!繰り返す。敵襲!敵襲!
カンカンカン、と何かを叩くような音と共に知らされる伝令の声音には、切羽詰まった感じの余裕のない様が感じられる。
俺はと言えば、食堂で侍女長やシーフェと一緒に昼食を摂っている最中であった。
「これは……」
「敵襲……っても、四人ですよね?何でそんなに慌てているんですかね?」
「この音は、緊急避難警報のものですね。おそらくですが、かなりの攻撃が相手方によって行われーーー」
ーーーズドオオオオンッ!!
いつもより若干落ち着きのない侍女長の声をかき消すように、頭上で爆音が鳴り響いた。
それと同時に、その場に立ってはいられないような振動が俺たちを襲った。
「なっ!?どういうことだよ、これは!?」
「姫様、私の近くへお願いします!」
「は、はいっ」
転生してから初の地震、なのか……?
少なくとも震度2とか3は余裕で超すような超大型の地震は、食堂の食器棚やら装飾品やら何もかもを地面に叩きつけ、更なる爆音を生み出している。
俺たちは割れた破片などが自分に当たったりしないように、机の下に蹲み込んで難を凌いだ。
この揺れは、およそ十分程続いた。
◇
「おいおい、マジかよ。あれを防ぎやがったよ……」
人に抗うことすらできない、まさしく天災の如き事象。
自分でやっておいてなんだが、こんなものどうやったって防ぎようがないとオレは思っていたんだが……。
巨大な岩石を支えるように出現したのは、館や城、城下町のあらゆる土地に根を張った巨大な樹木であった。
まるで伝記に出てきた世界樹のように巨大なそれは、空を覆い尽くすほどの莫大な量のある樹葉によってオレの隕石を受け止めていた。
いや、受け止めるなんて生易しいものではない。
葉っぱをクッションにして勢いをほとんど殺した後、隕石を粉々に打ち砕かんとばかりに大量の木の枝が突き刺さっていた。
ひび割れ、ボロボロになった隕石……。
勿論、これをぶち壊すために支えとなった建物の数々も無傷とはいかなかった。
根によってギュッと巻きつかれた建物のほとんどは、壁にひびが入り、ボロボロになってしまっている。
しかしながら、この有様がオレの想定から大きく外れてしまっている時点で、オレの攻撃が完封負けしたも同然である。
「こ、これが魔王の力ってやつか……なるほどなぁ、これは確かに勇者様にでも縋らないとやっていけないわけですわ」
苦し紛れに口をついてでた一言に、勇者はとんでもない言葉を返してきた。
「んー?確か、今代の魔王は闇属性を操るって話だからさ。これは魔王の部下のものじゃないかなぁ?」
「部下ぁ!?」
これが!この有様が!?
こんな国家規模で影響を及ぼすであろう魔法を、部下が行ったって言うのか!?
それがホントだとしたら、マジでヤバいな。
敵方がこの規模の魔法を何発撃てるのかは知らないが……少なくともオレのは一発限り。
後はそれなりに小手先の技術で磨いたショボい初級魔法のみ。
こんな状況で敵陣に乗り込むのはたったの四人。
しかも、そのうち2名はあくまで救出役だから、実際に戦うのはオレと勇者だけ……。
「おいおい、こりゃあとんでもない死地に飛び込んだモンだな、オレは」
まったく、金払いがいいからってこんな無茶苦茶な奴にホイホイついていくんじゃなかったぜ。
もうちょっとまったりと人生を過ごしたかったのによぉ……。
オレが諦観の念を抱きつつ、溜息を吐くと、勇者がニヤニヤしながら一歩を踏み出した。
「大丈夫だよー、おっさん。僕にはこの退魔の聖剣があるからね。ほとんどの魔族は立つことすらままならないさ」
そう言って、勇者は地面に聖剣を突き立てた。




