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62.カナちゃん

平日はあんまり余裕がないので、週末に残りの二話を投稿するようにしたいと思います。


追記:センター試験前の投稿は控えるようにと親に言われてしまったので、センター試験が終わるまでは投稿ができません。センターが終わったら好きにしていいと言われたので、終わり次第の投稿になります。度々、予定を変更してしまい申し訳ないです。





ドパァンッ!と何気に呆気ない音が響いた同時、俺の弾丸は氷壁を貫通していった。

更には当たった場所を中心に蜘蛛の巣状のヒビが入り、見るも無残な姿に早変わりである。


「…………なっ!?」


ドガァァンッ、と氷壁を突き抜けてもまだまだ勢いのある弾丸はそのまま庭園の壁に激突。

俺の人差し指が入る程度とは言え、確かに庭園の壁にも穴が空いていた。


さすがに侍女長もこの威力は予想していなかったのか。

穴の方を見つめて呆然としている様を見て、俺は口を開く。


「これで創造(クリエイト)の訓練は終わりですよね?」


「…………ッ」


後は侍女長から承諾の言葉を聞いてこの訓練も終了だーー


「ーー誰じゃあぁぁぁぁあああああッ!!!カナちゃんの!庭園の壁に穴を開ける不届き者はぁぁぁあああああッ!!!」


と、そう思ったところで、突如として俺の目の前に魔族が舞い降りた。


第一印象は緑。

それしか考えられないほどに緑に包まれた少女。

いや、比喩ではなくそのままの意味で、だ。


上半身は蔓と葉っぱを組み合わせて作ったベストのような物を着て、下半身には葉っぱを繋ぎ合わせたスカートのような物を着用している。

緑色の頭髪部分には、子どもが作ったかのような花冠を付けているのだが……これはオシャレのつもりなのだろうか?

エルフであるはずのアルバよりもエルフらしい格好をしている少女は、俺を睨みつけてきた。


「そこのお主!見たことのない顔つきじゃが……もしかして、主がカナちゃんの庭園の壁に傷を付けたのか?」


見た目は少女、いや下手したら幼女にすら見える彼女に威圧感を感じるのはそのやたらと古めかしい言葉遣いのせいだろうか?


兎にも角にも、彼女はカナちゃんだとか言う人が作った庭園を汚したが故にご立腹しているのであろう。

であるならば、その原因である俺は誠心誠意に謝る他ないのではないだろうか。


俺がそう結論付けて謝罪の言葉を口にしようとしたところでーー


「ーーいえ、これは私の責任です」


隣にいた侍女長から口を入れられた。


「訓練の一環で、私が作った氷壁を破壊するように命じたところ、少々威力が高すぎた様でして……。氷壁を貫通して庭園に傷が入ってしまいました」


平身低頭と言った様子で深く頭を下げながら、状況の説明をする侍女長の姿に俺は驚いていた。


「ふぅむ……カナちゃんは、前からここの壁に傷を付けるな、と申しておったろう?それにもかかわらず、主は警戒を怠ったというのであるか?」


「はい。まさか破られるとは思っておりませんでしたので……誠に申し訳ありません」


腕組みをし、頭を深く下げている侍女長を見下ろしている緑色の女の子は、身長的には低いのにえらく大きい存在に見えた。


「訓練とはそこの男のことであるな?」


「はい、そうです」


「ふむ……」


トテトテと歩いて近づいてくると、上目遣いに俺を観察してきた。


「……えーっと、何ですかね?」


「いや、主にラルファの作った壁を貫通させられる程の魔導が行使できるとはとても思えんでのぉ。……悪いが、主。一回、ここでその魔導を見せてはくれんか?」


「はぁ……まぁ良いですけど。でも、また壊しちゃうかもしれないですよ」


「うむ。そこはカナちゃんが何とかしてやるのじゃ」


そう言って少女が地面に手を添えると、ニョキニョキと芽が生えてきて巨大な一本の木へと姿を変えた。


「うむ、これくらいで良かろう。主、これに向けてその魔導を放ってくれ」


「わかりました」


これ、成功率が低いから思い通りにいくか怪しいんだけどな……。


そう思いながらも集中すると、俺の想いに応えてくれたのか、失敗せずに発現することができた。


「今から撃ちますよー!」


「うむ!どんと来いなのじゃー!」


可愛らしい声を合図に、俺は巨木に向けて銃弾を放った。







「いやー!主は凄いのじゃな!」


所変わって食堂。

俺は隣に座っている緑髪の少女、カナちゃんに背中を叩かれながら(超、痛い!)、飯を食べている最中であった。


「まさか魔力を収束することであれほどの威力が出るとはのぅ!」


興奮冷めやらぬ、と言った様子で食堂であるにも関わらずキャッキャと騒いでいるカナちゃんの姿は、年相応に思えて微笑ましい。

ただ、そのユルユルのベスト一枚で動き回るのは止めた方が良いぞ。

胸元がチラチラと見えて、俺が落ち着かないからさ。


そう思ったけど、今ここにはカナちゃんを諌めてくれるはずの侍女長も居ないので、俺は大人しくコック長が作ってくれたスープの味を楽しむことにする。


……え?侍女長?

彼女ならカナちゃんに命じられて庭園の壁の補修に向かったよ。

文句の一つも言わずに粛々と従っている侍女長の姿を見て、俺は改めて隣に座っている魔族が偉い地位にいるのを察したが、藪蛇なので何も言わない。

ここは知らなかったふりをするべきなのだ。


「くくっ、カナちゃんも久しぶりに魔導の勉強になったぞ!主には感謝する!」


「いえいえ……」


ちなみにこのカナちゃんというのは、どうやら俺や私みたいな一人称らしい。

自分の名前にちゃん付けて……とは思ったが、口には出さない。出してはならない。


「うーむ……それにしても、久しぶりに食堂に来てみたが、やはりここは閑散としておるのう」


「……そうっすね」


先程までは、大学の食堂ぐらい人がたくさん居たのだが……カナちゃんの姿を見た途端に全員が全員、蜘蛛の子を散らすような勢いで何処へともなく逃げていった。


わーい、食堂が空いて席に座りやすくなったな(棒読み)


「むっ、この肉はやけに切りづらいのう……マティス、カナちゃんの食べやすいように、これを切ってはくれんか?」


「はいはい、わかりましたよ、カナちゃん」


見た目は、どう見ても可愛らしい容姿をしているカナちゃん。

それなのにも関わらず、あの恐れられよう……一体この娘は何をしたって言うんだ……?

しかし、それを聞いては二度と普通に接することができなくなるかもしれない。

とにかく、ここは黙ってカナちゃんの言う通りにしておこう。


あ、ちなみにこの「カナちゃん」っていう呼称も無理やり言わされました。

『カナちゃんのことは、親しげにカナちゃん!と呼んで欲しいのじゃ』と言われては断ることはできなかった。


「うむ、ありがとうなのじゃ!」


「どういたしまして」


カチャカチャとナイフを鳴らせながら、お礼を言ってくるカナちゃんに、できるだけ笑顔を見せながら返答すると、和やかな食事を続ける。


俺が失礼をしない為にも、というか、この危険そうな女の子から一刻も早く離れる為にも、はやく侍女長が帰ってこないかな……。

と、珍しくも侍女長が恋しくなる俺であった。




追記:12月18日の分は、20日に延期します。


更に追記:12月19日の分は21日に延期します。予定変更が多くてすいません。

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