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60.創造《クリエイト》

連続で投稿できるかは確約できませんが、とりあえず一話投稿。



「……はあ?今、何と言いましたか?」


「いや、魔装はある程度習得できたので、次のやつを教えて欲しいんですけど……」


眉間に皺を寄せ、鋭い目つきで睨みつけてくる侍女長に怯みながらも発言する。


侍女長は数瞬、頭がイカれた可哀想な人を見るような目で俺を見た後、しばらくして口を開いた。


「……では、そこまで言うのであれば当然ここで見せていただけるのでしょう?あなたのその魔装というものを」


「まぁ、出力は全然ですけど形にはなってると思いますが……」


「良いから、はやく見せなさい」


急かす侍女長を横目に、俺は全身に防護服を着るようなイメージで魔装を展開させた。


「…………これは」


「これでも一応、魔装ですよね?」


「…………」


俺の肩に触れて確かめてみる侍女長。

その顔は、癪だけど形にはなっていると確かに俺の魔装を認めてくれている表情だった。


まぁ、侍女長が素手で俺に触れても大丈夫な通り、俺の全身には懐炉程度の暖かさしかない。

点数的に言えば、精々40点ってところだ。


しかし、赤点は超えている。

一応、発現ができている以上、次に進まざるを得ないだろう。


一頻り、俺の身体を触って確かめた侍女長は、少しだけ逡巡するも、次の訓練へと移行するのを許可してくれた。


「……わかりました。とりあえず、付与(エンチャント)は習得したと言って良さそうですので、次の創造(クリエイト)の訓練に移りましょうか。こちらは、付与(エンチャント)ほど難しくもないのですぐ終わると思いますが……」


どこか釈然といかないと思いつつも、侍女長は創造(クリエイト)の訓練に入るための準備を始めた。





創造(クリエイト)の訓練は至って簡単。ただ、虚空に己が属性を表す何らかの魔力を放出するだけのものです。あなたの場合であれば火の玉を出したり、私であれば氷柱を生み出したりと言ったように」


パキパキと侍女長の足元から伸びてくる氷柱を見ながら、俺も手のひらの上に炎が出るようにイメージをする。

すると、学園で魔法を使ったよりもかなり大きな火の玉が出現した。具体的にはボーリング玉ぐらいの大きさ。

これも眷属化の影響というやつか……。


俺が火の玉を発現させたのを見て、侍女長はつまらなさそうに氷柱を蹴り崩すと、話を続けた。


「まぁ……この通り、仮にも魔法学園に通っていたのであれば、この程度は朝飯前というやつです。しかし、こんなにサクサク進んでは私的に面白みがない。そこで、とあるルールを設けることにしました」


「ルール、ですか……」


明らかに私情が混じっている気もするが、つついても藪蛇にしかならないのでここはスルーで。

侍女長は、俺から文句が上がらなかったことに満足そうな笑みを浮かべながら、発言する。


「はい。魔装のときのように何かと不正を働かれては困りますのでね……。あなたがズルできないように、実力重視のテストを用意したんですよ。それがこれです」


トン、と地面を蹴ると、パキパキという音を立てて目の前に巨大な氷壁ができた。


「これは……?」


「今回のテストに使うためのものです。あなたにはこれを壊してもらいます」


「これを壊す!?」


「はい」


目の前にそびえ立つそれは、白い冷気のような放っており、2、3メートル離れている俺でさえ凍えそうな寒さである。

厚さは俺の胴体5個分程。

侍女長が手で叩いたときの鈍い音からしても、鋼鉄並みの硬さを誇っているように感じられる。

こんなのをボーリング玉ぐらいの火の玉しか出せない俺が壊せ、ってのか!?

無理に決まってるだろ!


「ふふっ、何も完全に壊す必要はありません。あなたの発現量的にもそれが土台無理な話であることは、わかりきっている話ですので。条件はこれにわかりやすい傷をつけることです」


「傷、と言いますと?」


「多少、表面を削るぐらいでも構いませんし、焦げ目、数センチの穴、ヒビ……。これの景観を損なうようなものであればどんなことでもいいですよ」


「な、なるほど……」


逆に言えば、それだけこの氷壁に自信を持っているということか。

確かにこのデカさは、全知全能の解鍵(マスター・キー)を使った俺の全力でも壊せるかどうかわからないぐらいに強固に見える。

そのくらいのハンデが妥当な気がする。


「挑戦回数は一回なんですか?それとも何回でも壁に魔導をぶつけて構わないんですか?」


「はい、問題ないですよ。これはあなたの創造(クリエイト)の力を高めるための訓練ですから。何度でも当てて構いません。ただし、あなたの創造(クリエイト)で作ったものでの攻撃限定となりますが」


「……わかりました」


どうせ、お前には傷一つ付けられねーよ、と言わんばかりに余裕の笑みを見せてくる侍女長にちょっとイラッとしながらも、俺は魔導を発現する準備をする。


何回でも当てて良いんだったら、壁に傷の一つや二つぐらい簡単に付けられるだろう。


……そんな俺の想定は、ひどく甘いものであったとこのときの俺は知る由もない。






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