表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/94

5.氣の習得《上》

次話はもうちょっとはやく投稿できるようにします。……できれば午前中ぐらいに。



「ーーーおまえも少しはキをつかえるようになれ、です」


ウルフによって肩に大怪我を負った翌朝、二人で対面するように腰を下ろして黒パンを食していると、開口一番そんなことをカイリちゃんが言い放った。


「ん?なんか配慮が足らない点でもあったか?」


それを言うなら、カイリちゃんだって年頃の男を前にして配慮が足りないんじゃないか?とは口が裂けても言えなかった。

とは言っても、俺の肩に雑菌が入らないようにカイリちゃんの服の一部を利用したとあって、ただでさえ布面積が少なかった貫頭衣っぽい服が、さらに少なくなってしまっている。

具体的に言うならば、下半身の丈が半ズボンからホットパンツぐらいになってる感じ。


それがなくても、カイリちゃんの行動自体無防備なことが多く、男としての欲求を抱いてしまうことが多々あった。

今だって、丈が短い服なのに体操座りなんかしているから白いパンツが丸見えである。


「ち・が・う、ですっ!気、ではなくて氣、です!」


「……氣?」


一体、何ぞや?とばかりに素っ頓狂な顔をしてみせる俺に向かってカイリちゃんが説明をする。


「氣とは、体内エネルギーをそうさすることでおのれの身体能力を活性化させ、ありとあらゆるどうさを強化するすべのこと、です」


カイリちゃん曰く、氣は生きとし生けるもの全てに備わっている力であり、そのエネルギーを潤滑に使用することで莫大な能力を引き出すことができるものらしい。


「よくみてろ、です」


ーーースパンッ!


普段の手刀の構えをとり、一瞬のうちに近くにあった岩を斬ってみせる。


「これは、わたしが獣人というすぐれた種族であるのもりゆうのひとつ、ですが、わたしがじぶんのこぶしに氣を集中させて斬るどうさを強化しているのもそのいったんにある、です」


「へぇ……じゃあ、なにか?俺もその氣っていうのを習えば岩を真っ二つにできるようになるってことか?」


「……それはわからない、です」


「へ?」


てっきり、「そうなの、です!」と自信満々に答えてくれるかと思いきや……。

些か自信のない返答がきて少し驚きである。


「ニンゲンは、獣人とはちがって氣のエネルギーがすくない、です。だから、つかいこなせるようになってもわたしほどつよくなれるとはおもわない、です」


なるほど、適性はあくまで獣人の方が上、というわけか。

氣ってやつはもしかしたら元の身体能力に左右される力なのかもしれないな。


「でも、それじゃあ俺が覚える意味ってあるのか?」


「はなしはさいごまできけ、です。たしかにわたしほどつよくはなれない、ですが、そのかわりにしぶとさもたしょうつく、です」


「しぶとさ?」


「そう、です。氣はちゆ能力もあげる、です」


なるほど……。

つまりは最初から戦力としての俺を求めていたわけじゃなくて、昨日怪我した俺を心配してのことだったんだな。


「きのうはわたしがすぐにケガを治せたからよかった、ですが、こんごはどうなるかわからない、です。だから、さいていでもおまえには練氣をおぼえさせる、です!わかったかッ、です!?」


「は、はい、わかりました!」


というわけで、朝食もそこそこに、俺は早速その練氣なるものを習得をすることにした。





操氣術、と呼ばれるカイリちゃんが使っている力は、獣人国内で連綿と受け継がれている伝統の長い格闘術なのだそうだ。

獣人の子どもは、5歳ぐらいになったら護身術も兼ねてこの力の使い方を教わり、十代のうちにあらかた基本をマスターするのが習わしとなっているらしい。


そんな由緒正しい格闘術を俺みたいなへっぽこ農民Aに勝手に教えていいものか、甚だ疑問でならないが、カイリちゃんの操氣術の師匠から免許皆伝を言い渡されているらしい彼女曰く、


『わたしのゲボクをきたえるのになんでくにの許可がいるのかッ、です』


らしいので、俺はノーコメントでいかせてもらおう。


……ただ、俺が従者から下僕へとランクダウンしていってることについてはツッコミを入れても宜しいでしょうか、カイリちゃん?


まぁ、そんな俺の所感はどうでも良くて……それよりも操氣術の訓練に入ろう。


操氣術は、大体三段階に分けられていて、


一、氣を感じ取れる。

二、氣を動かすことができる。

三、氣を発することができる。


の三つらしい。


これが出来て初めて操氣術の入門終了という感じらしいが、今回俺が挑もうとしているのは二段階目の、氣を動かすことができる、すなわち練氣である。

まぁ、その前に氣を感じ取れるようにならないといけないんだけどな。


「きのう、おまえはわたしからじかに氣を受けとったはず、です。あのときのかんかくをおもい出せば、氣を感じとるのはむずかしくない、です」


「昨日、ねえ……」


そんな事を言われても昨夜は、肩の激痛でほとんど何も感じとれなかったからなぁ。

強いて覚えているものといえばあの謎の酩酊感ぐらいしかーーー


と、考えたところで不意に身体からブワッと湯気みたいなものが溢れているのを感知した。


これは、もしかしてーー


「ん、ちゃんとできたみたいだ、です。そのかんかくがおまえのカラダをおおっている氣、というやつ、です。しっかり覚えろ、です」


「え、あ、うん……わかった」


うん、なんだろうな……。

あんまりにも簡単に習得出来すぎて、ちょっと戸惑っているというかなんというか。


この感じだと、練氣の習得はあっという間に出来そうだ。

そんな俺の予想は、数時間後に覆されることになる。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ