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49.白銀の勇者

今日中にもう一話投稿しますので、よかったら読んでください。

ブクマ、ポイントもしていただけると更に嬉しいです!



「すいません、マティスっていう男子生徒を知りませんか?」


放課後。

Aクラスの生徒たちは、やっと1日が終わったと皆して羽を伸ばしていると、見知らぬ少年から声をかけられた。


「はい?マティスさん……ですか?ちょっと聞き覚えはないですけど……」


他校の生徒だろうか?

そう思って入り口近くにいた女子生徒が、対応に当たる。


(何だか、不思議な格好の人だな……)


銀と黒の入り混じった頭髪に、目の色も左右で違っている。

しかも、その少年は顔立ちが中性的なため性別もあまりはっきりとは区別できない。

女子生徒が男だと判断した唯一の理由は、男物の軍服のような黒色服を身に纏っていたからである。


そんな何とも不可思議な少年は、女子生徒の返答に眉根を寄せる。


「あれ、おかしいですね……。確かにこの学園に来るように伝えたはずなのですが……」


「もしかして、他クラスの生徒ですか?そうなると、ちょっと私たちでは把握できませんので……」


この学園は学年がない代わりに、クラスの人数が相当多い。

一番優秀と言われ、ある程度選別しているAクラスですら五十人を超える生徒がクラスに存在している。

B以下のクラスなど、百人以上であることも少なくはない。

例外は、最下位クラスであるEクラスのみである。


そんな事情を知らない少年は、おそらくマティスとかいう知り合いの在籍しているクラスを聞くことなくここまで来てしまったのだろう。


そう考えた女子生徒は、容姿が綺麗な少年の好感度稼ぎも兼ねて人探しを手伝うことを提案した。


「でしたら、ここの内情に詳しい私が、案内しましょうか?」


「いえ、自分で探せるから大丈夫です」


しかし、少年は素気無く断った。

女子生徒の渾身の笑顔に若干のヒビが入る。


「え、えーと……こ、ここは、王国の学園の中でも最も規模が大きいと言われている所なんですよ!探してる人のクラスも知らないような状況で、あなたみたいにここに詳しくない人が勝手に出歩きでもしたら迷子になっちゃうかもーー」


「ーーいえ、結構です。サブストーリーはスキップの方向で」


「……へ?」


「……アルム、探ってくれ」


近くにいる女子生徒にすら聞こえないほど小さな声でポツリと呟くと、腰につけていた銀色の剣がぼんやりと輝いた。


「ふーん、随分変な所にいるんだね」


剣を撫で、少しだけ微笑むと、呆然とした顔で立ち尽くしている女子生徒を後目に、その場を後にした。






「おいおい、これマジで動かなくなっちまったぞ?」


「大丈夫っすよ、ギルバルド様!こんなこともあろうかと、こいつの適性である火属性で攻めさせていただきやしたから!いくら、軟弱でも全身大火傷くらいで済んだと思うっすよ!」


「ははっ、そりゃ違いねぇな!」


自身の適性の魔法は、ある程度耐性を持っているため比較的軽傷で済みやすいが……。


取り巻き達に息つく暇も与えられずに火球を喰らいまくったマティスの身体は、遠目から見ても重症であり、身に纏っていた衣服に至っては炭化して黒ずんでしまっている。


更に、彼らが決闘承諾の言葉を吐かせようと暴行を加えていたものだから、いくら操氣術を使えるマティスと言えど、外傷が凄まじいことになっていた。


しかし、ここまで痛めつけても彼らは満足していない。


何故なら、本来の目的であるキーラの所有権を我が物とできていないためだ。


「んー、中々、うんとは言わないっすねー、こいつ」


「チッ、雑魚のくせに梃子摺らせやがって……いっそのこと、殺しちまうか?そうすれば、主人のいない奴隷が一匹できることだし……」


「ぎ、ギルバルドさんっ!さすがに第一王子が勇者に融通がきくって言っても、殺したら……」


「……と、なると、やはりこいつの口から直接言わせるしかないのか。ーーオラッ!さっさと所有権を俺に渡すって言えよ!言ったら、楽にしてやるぜ!!」


乱暴に首を持ち上げ、地面に何度も叩き落とすが、マティスからは呻き声しか上がってこない。


「うーん、もしかしてこいつ、ボロボロになりすぎて喋れないんじゃ……」


「チッ!何だよ、手間かけさせやがって!シトク!もういっちょ、ヒール頼むわッ」


「オーライ!ーーー『水の癒し(ウォーター・ヒール)』」


取り巻きの魔法により、少しだけ外傷が減るがそんなものはまさに焼け石に水であった。


マティスは相変わらずゾンビのようにウーウー、と呻き声を上げるのみである。


「クソッ、さっさと言えや!ボケッ!!」


自分の思い通りにいかないことで苛立ちがマックスになったギルバルドは、マティスをサッカーボールのように蹴り飛ばした。


ーーもうこのまま殺してやろうか。


死体なら完全に燃やし尽くせば、誰が誰だかわからなくなるし、こっちには第一王子が付いている。

いざとなれば、彼がそれなりに助けてくれるだろう。

第一、このリンチの現場を誰にも見られていないのだ。

犯人として検挙される証拠もないーー


と、そこまで考えた所で、ザッと地面を踏みしめる音が背後から聞こえた。


「ーーねぇ、君たち何してんの?」


「「「ーーーッ!?」」」


声をかけられると同時、彼らは一斉に冷や汗をかいた。






「へー、随分とボロボロになっちゃってまあ。これ、生きてるのかな」


「……ははっ、ちょっと魔法の練習で熱中しすぎて、さ。興奮して俺の火球を当てちまったみたいだ」


一般人に見られてしまったことで、ギルバルドは即座に言い訳を用意することとなった。

決して、相手に集団リンチしていたことがバレないよう、細心の注意を払ってーー


「ふーん、そうなんだ。その割には何度も火球が当たったような痕がある気がするけど……。まぁ、良いや。今はそんなことどうでもいいからね」


「……」


その言い訳の甲斐あってか、相手に多少疑問を感じさせるも、特に気にした様子もなくこの話題を取り下げた。


良かった……これで、何とか誤魔化せたようだ。


ニヤニヤと半笑いを浮かべる銀と黒の混じった少年に若干の薄気味悪さを感じつつも、思わず内心で安堵のため息を吐く。


しかし、続いて告げられる言葉にギルバルドは困惑を露わにする。


「じゃあさーー僕と魔法の練習してよ」


「……へ?魔法の練習……?」


「うん、だって君たちこんな校舎裏で魔法の練習をするほど、魔法に熱心な方々なんだろう?最近、魔法で行き詰まってる僕が君たちと練習すれば、成長のきっかけになるかもしれないじゃないか」


「あ、あぁ……そうか……し、しかし、俺たちもそこで倒れているやつとの練習で疲れてるからな……」


何故か。

対峙する少年からは敵意や殺意の類が全くと言っていいほど感じ取れないにも関わらず、ギルバルドは少年の恐怖を感じた。


迂闊な一言で死に繋がるーー


そう直感した彼は、知らず知らずのうちに少年との練習(死合い)を避ける方向で言葉を紡ぐ。


ーーが。


「グアァァああああッッッッ!!!?」


少年との練習を断った瞬間、後ろにいた取り巻き一人の右腕が、胴体から切り離された。


「オルド!?どうした、オルド!!!」


「一体、何が起こったんだ!?」「それよりもシトク!早く、オルドにヒールを!」「ーーー『水の癒し《ウォーター・ヒール》』!!!」


後ろで取り巻き達が騒ぐ中、ただ一人ギルバルドだけがはっきりと見えていた。

目の前の少年が凄まじいスピードで指先から白い稲妻を弾き出すところをーー


「て、テメェ……何者だ?少なくとも、ここの学園の生徒じゃねぇ……。お、俺たちに手を出す、ってことがどういうことかわかってーー」


「ーーそれよりも、さっきの頼み事の続きだよ。……ねぇ、僕と練習してくれない?僕、相手がいなくて腕が鈍ってしまうかもしれないんだ」


「し、し、知らねぇよ、んなこと!ひ、一人で練習しておけばーー」


「ーーそう。だったら、さぁーーー」


ザッ、と土を踏みしめてゆっくりとギルバルドへと歩み寄ってくる。

ギルバルドは恐怖のあまり腰を抜かして、動くことができない。

そして、一歩、一歩、と距離を詰めーーー



「ーーー君の仲間で、試し切りさせてもらうことにするよ」


「ひぃいいいいいいいいッッッ!?」



少年は、残酷にそう宣言すると、右手をゆっくりと振り上げ、それを振り下ろした。






「キヒッ!アヒッ!!あひゃひゃひゃひゃッッッ!!!いやー、イイね、イイね、ユカイだね!?これだから、クズの試し切りはやめられないよ!」


鮮血による真っ赤に染まった地面の上で、赤黒い軍服を着た少年の姿は、正しく狂気の様相であった。


アヒッ、アヒッ、と短く笑みを零しながら、血に染まった顔をゆっくりとマティスへと向けた。


「あーあー、全くNPCに何やってるんだか……。こんな雑魚相手に負けるなんて、よっぽど縛りプレイが好きなんだね」


「ゔぁ……?」


「あー、いーよ、いーよ。無理して喋らなくても大丈夫だからさぁ。僕は君と同じくプレイヤーなんだ。大体の事情は理解しているよ。察するに、神の制約だろう?僕もそれで苦労していてね。ちょっとだけ困ったことになってたりしてるんだぁ。だから、新たなプレイヤーの君に力を貸してもらおうとここまで来たんだけど……って、話聞いてるー?」


全身大火傷を負って、更には蹴る殴るの暴行までされていたマティスの身体は既に限界であった。

それこそ、目の前にいる少年の言葉が耳に入らない程に……。


ゆっくり、ゆっくりと瞼が閉じていく様を見て、少年もマティスが自分の話を聞いていないことに気付く。


「えー、君には色々としてもらいたいことがあるのになー、まったく誰の許しを得て寝ようとしているんだい?」


グイグイと血生臭い手で閉じかけた瞼を無理やりこじ空けるも、マティスは完全に気を失っていた。


「はぁー、ここまでさせておいて成果ゼロとかー。さすがに僕の心情的にそれは許せないっていうか、何だか無駄骨すぎるというかー……。うーん、仕方ないし彼を王城まで持ってちゃうか。同じプレイヤー同士助け合いも必要だろうし、アキトのおっさんと違って好みのタイプだしー。よーし、そーと決まればちゃっちゃと持ってっちゃいますか」


よっこらせ、っと背中にマティスを背負いあげると、ゆったりとした足取りでその場を後にしようとしてーーー


「ーーーま、マティスさんを、返せッ、白銀の勇者!」


「んー?」


呼び止められ、振り返ると、そこにはシーフェの姿があった。





主人公、ただのモブキャラにやられるという、ね……。

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