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47.不満爆発

念願のブクマ100件突破です!ありがとうございます!

この調子で投稿ペースをあまり落とさずに、頑張っていきたいと思いますので、これからも読んでいただけると幸いです。




「へぇー、食事、洗濯、寝る場所だけでなく風呂まで一緒に入っていらっしゃるわけですか……!?」


それのどこがただのクラスメートだよ!と怒鳴りたいところを、キーラは握り拳を作って必死に堪えている様子である。


確かに言葉だけ聞いたら寝食共にしてる感満載だが……少なくとも、風呂は一緒に入ってないし、寝床だって寮が一緒なだけである。

まぁ、間違って一度だけシーフェが風呂に入っているときに乱入してしまったことがあったが、それも一回だけだし……。


何でこんな誤解されるような発言をするんだ、と俺がシーフェに視線を向けると、彼女は顔を俯かせてしまった。


怒りを必死に堪えているキーラ、多少口から出まかせを言ってしまったがためにちょっと気まずい思いをしているシーフェ。

主に口論をしていた二人が沈黙したことで漸く俺の弁解の出番がーー


と、思ったところで、今までほとんど口を開けていなかったアルバから声が出た。


「……対面座位」


「「「えっ……!?」」」


ポツリ、とそう一言だけだったが、その言葉の威力は今までの中で一番爆発力が高かった。


アルバの言葉に一瞬少女達は赤面するも、すぐにその言葉の意味を理解し、青褪める。


言葉の意味上、多感な時期に当たる少女達にとって、対面座位というのは男女のアレに他ならないわけで……。

そんな顔をしたくなる気持ちも分からなくはないのだが……ちょっと、待ってほしい。

それは誤解なんだ。

というか、アルバの言う対面座位ってのはアレだろう?

馬車の御者台で抱き合ったやつだろう?


そんな男女の営み的なやつじゃないんだから、ここは冷静に事情を話せばいい……はずだ。


俺は地雷探知を任された特攻兵の気分で、慎重に言葉を紡いだ。


「い、いや〜……それは、だなぁ。別にお前らが思っているようなことじゃなくて、だな。ちょっとだけアルバが御者のしすぎで疲れたって言うから、労いの気持ちも込めて抱き合っーーじゃなくて、ハグしただけなんだって、な?アルバ」


王国に来るまでの道中、ずっと御者をしてきたアルバに多少の疲れが見えていたことを知っているキーラは、その言葉で少しだけ理解の色を示す。

もちろん、ここまでの俺たちの旅路を知らないシーフェは困惑した表情を浮かべているが……まぁ、彼女は後回しでも大丈夫だろう。


とりあえずは、キーラの怒りから鎮めなければ……。


そういった意味を込めて、アルバに口裏合わせを頼むがーー


「……うん、いっぱい、お尻、揉んでもらった」


「「ーーーッ!?」」


この一言で、火に油を注ぐ結果となってしまった。


最早、何を言っても無駄なのではなかろうか?


そう思った俺は、仏のような顔で事の推移を見守る他なかった。





「ちっ、何なんだよッ、あの野郎!」


「まぁまぁ、落ち着いてくださいギルバルドさん」


「これが落ち着いていられるか!」


怒鳴り声と共に、教室の備品を蹴っ飛ばした金髪の少年に向かって、取り巻き達が必死になだめていた。


「俺が助けてやる、って言ってんだから、素直に言うこと聞けばイイのによぉ!結局、あのEクラスの雑魚のところに行きやがってッ!」


「そ、そうっすねー。こちらはAクラスでも上位と謳われるギルバルド様なのに、態々Eクラスの方に行くなんてバカっすよねー」


「全くだぜ!折角、俺の妾にでもしてやろうと思ってたのに!」


ガジガジと髪を掻きむしって苛立ちを隠せない彼に、一人の少年が近づいてきた。


「おっ、なになに〜ぃ。君たちもぉ、あのEクラスのマティスにぃ、何だかしてやられちゃった感じぃ?」


「ん?おぉ……まぁ、名前までは知らねぇんだけど、さ……。っていうか、お前誰だよ?」


「いやいや〜ぁ、俺のことはどーでもいいからさぁ〜。それよりもぉ、その男をぉ、ボコボコにしてやりたい、感じなんだよねぇー。ちょっと、協力してくんないぃ?」


「……」


「あれあれ〜ぇ、もしかして、そこまでぇ、嫌ってはない感じぃ?」


協力を申し込むと一斉に黙り込んだ彼らを見て、赤髪の少年は困惑の表情を見せる。


「いや、俺たちもそうしたいところは山々なんだが……どうやらEクラスのその男は、勇者様の推薦だって、話でな……」


「出そうにも迂闊に手が出ないっすよ」


勇者の推薦。

それは最早、国王の推薦かそれ以上の重要性を持っている。

魔王討伐を確約してくれている勇者の害になるようなことを行えば、例え貴族であったとしても容赦なく処刑する、と王命にも出ているのだ。

流石に、ムカつくからという理由ぐらいで手を出そうとは思えなかった。


そんな感じで、凹んで見せる彼らに対して、赤髪の少年はニマニマと笑いながら偽造したそれを見せた。


「これ……何だかわかるぅ?」


「こ、これはもしかしてーー」


「あの王族のみが所持できると言われる、王家の紋章……!?」


煌びやかな紋章が描かれた紙を見て、少年達は興奮する。


「も、もしかして、貴方様はーーー」


「そうそうぅ、俺がこの国の王の最有力候補、第一王子ってやつなのよぉ。だからさぁ、ぶっちゃけ勇者ともぉ、知り合いっていうかよぉ。マブダチみてぇなもんだからぁ、多少痛めつけるぐらいはぁ、許してくれるよぉ、俺が言っておくからぁ、テメェらはガンガンやっちゃってくれよぉ」


「えっ!それって本当ですか!?」


「モチのロン、だぜぇ。だから、テメェらは何の気兼ねもなく、魔法で火炙りしちゃってくれぇ。実際、あいつの魔法、超弱えしぃ」


「な、なるほど……。わかりました。では、決闘形式で公式の面前でボコボコにしてやりますよ!」


「おう、頼んだわぁ」


そう言って、その場を去った赤髪の少年の背後では、下卑た笑いが響いていた。







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