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42.Eクラスの寮

次の投稿は日曜になります。



昼食を仲良く二人で食べた後、再び王国語のレクチャーへと入った。

と言っても、教えることは先ほどと一緒。

後は本人がどれだけ覚えられるか、その一点にかかっていると言っていい。


ただの今日だけで子供用の絵本ぐらいは読めるようになってきたので、このペースでいけば二ヶ月ぐらいで学園にある本も読めるようになるのではないかと思う。


ほとんど教えることがなくなった俺は、暇つぶしも兼ねて魔法の詠唱文を眺めながらシーフェの勉強姿を見ていた。





7回目の鐘の音が鳴り、放課後となった。


本来ならばここで、担任の教師からお疲れ様の一言でももらってショートホームルームの流れになるのだが……。

残念ながらこのクラスにはそんな労いの言葉をかけてくれる教師はおらず、二人しかいないからショートホームルームを開く必要もない。

静かな教室に図書館から借りてきた本を片付ける音が響くだけである。

借りた本は一冊だけなので、片付け自体もすぐに終わる。


俺は教室を呆然と見回し、これからどうしようか考える。


この学園は全寮制で、勇者に推薦された俺たちにも当然寮に入る必要がある。

そして、その手続きは既に勇者が済ませてくれているらしいので俺たちは与えられた部屋に向かうだけなのだが……。

俺とAクラスにいった二人は、まだ自分の部屋の鍵を貰っていない。

まぁ、俺の能力があれば部屋の鍵などどうとでもなるのだが……。

できれば、正規の手順で入室したい。

そのため、教務室で受け取る必要がある。


よって、俺はこれから教務室に行かなければならないのだが……。

さすがに一人で教務室には行きたくない。

今まで行動を共にしてきた二人と一緒に行きたいところである。

そうなると、必然的にAクラスの教室に迎えに行くべきなのだが、二人はまだショートホームルーム中だろう。

そんなときに堂々とクラスに入っていける度胸は俺にはない。

だから、Aクラスのショートホームルームが終わるまで時間を潰さないいけないのだが……。


と、そこまで考えていたところで袖を誰かに引っ張られた感触がした。


「……ん?どうした、シーフェ?」


「ぁ、あの……Eクラスの寮に、案内します。ついてきて、ください」


「え……?Eクラスの寮って……ここの寮はクラスごとに分かれているのか?」


「正確には、A〜DとEクラスで分けられてます」


はぁ……ここでも差別かよ。

どうやら良い寮に住みたきゃ、魔法の実力を上げろって事なんだろうな。

まぁ、別に寮がボロくても構いはしないんだが……。

どちらにせよ、俺は鍵を受け取ってないからな。

案内を受けるならそれからだろう。


「俺、まだ寮の鍵を受け取ってないからさ。案内はそれからにしてくれるか?」


「別に、鍵は要らないです」


「……え?それってどういうーー」


「ーーとりあえず、案内します。見てもらえれば、わかると思いますので」


そう言って、シーフェの後をついていくこと約20分。

本当にここは学園の敷地なのか?とツッコミたくなるほどに植物の蔦やら何やらで荒れ果てた土地に、Eクラスの寮はあった。


「これはーー」


「……ここが、Eクラスの寮です。見ての通り、寮というよりも家に近い感じ、ですけど……」


そう、それは決して寮の様相をなしていなかった。

築100年と言われても信じられるほどに古そうな二階建ての木造建築に、窓ガラスや壁にびっしりと絡みついた植物の蔦や葉。

そして、何よりも驚いたのが、蝶番が完全に壊れて開きっぱなしになっていたドアの存在である。


な、なるほど……これならば、確かに鍵なんて必要ないな。


俺が惚けた顔で寮の惨状を眺めていると、シーフェから声をかけられた。


「……部屋は、リビングとか風呂の共有空間を除いて三つあります。一階に二部屋、そして二階に一部屋です。マティスさんは、どこの部屋にしますか?ちなみに、わたしは一階です」


「えっと……じゃあ、二階で」


クラスメイトとはほとんど赤の他人、しかも異性の近くの部屋に住むなど、俺のガラスのハートでは耐えきれそうもなかったので、できるだけ距離が空くだろう部屋を選んだ。

俺は未だに寮に対するショックから立ち直れていなかった。






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