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30.自己紹介

本作に出てくるアキトは、サイキック・ブレイバーズの七重秋人とは別人です。



「どうも、今回の護衛兼案内役に任命されたアキト、って言う者です。こんな見た目ではありますけど、それなりに強いとは思うんで、迷惑はかけないと思います」


薄緑色をしたボサボサの髪に手を置きつつ、気怠げな態度で、彼ーーアキトはそう言った。


「こちらの方は、王都の冒険者ギルドの中でもとびきり優秀なAランクの冒険者なんです。す、少し頼りなさげではありますけどーー実力の方は我がギルドが保証致しますっ!」


そんなアキトの様子を見かねてか、クレールさんがまくし立てるように彼のフォローに入る。

いや、フォローにしては結構辛辣な物言いだな。


だが、それも仕方がない、と思うぐらいにはアキトの格好はだらしなかった。

髪の毛は肩あたりでバッサリと切ってはいるものの、手入れを全くしていないと一目で分かるほどボサボサであるし、身体も殆ど鍛えられていないのか、線が細くて如何にも文化系男子、と言った様相である。端的に言えば、もやしだ。

更に頼りなさげなのが、容姿である。

殆ど剃っていない無精髭に、困ったように八の字に曲がっている眉毛。

そして、死んだ魚のように生気を失った眼。

猫背の姿勢と平坦な口調も相まって、どっからどう見ても強そうには見えなかった。


Aランクという言葉を聞かなければ、即刻退場してもらおうと俺が考えるくらいに。


いや、ランクを言われた今でも信じられないくらいなのだが……まぁ、これは冒険者ギルドによる厚意なのだ。

最悪、道案内さえしてくれれば大丈夫だろう。


そう思いながら挨拶に応じた。


「ど、どうも、マティスです。今回は俺たちの騒動に巻き込んでしまってすいません。道案内、よろしくお願いします」


俺がそう言って、頭を下げると、アキトが眼を瞬かせた。


「へー、若いのに結構礼儀正しいんだな。俺が若い頃は、誰彼構わず噛み付いてた、ってーのに……。俄然、やる気になったわ」


「……アキトさん。これは勇者様からのご依頼ですので、それこそ全身全霊で臨んでいただかないと……」


「あぁー、わかってるって。というか、俺が『白銀』に言われて直接来てるんだから、ことの重要性ってのは、それなりに理解してるって。ただのやる気の問題だ。こいつとは、気が合いそうだなー、と思ったのさ」


「……でしたら、構いませんが」


開口一番の敬語はどこにいったのだろう、と思うぐらいのタメ口に思わず面食らってしまう俺だったが、クレールさんはアキトの対応に慣れているのか、特に気にした様子もなく話を進める。


「それと、マティスさんには他にも仲間がいらっしゃいますよね?そちらの方々もギルドに連れてきてもらっていいですか?顔合わせが済み次第、ギルドの馬車でここを発ってもらいますので」


「おっ、なんだ、少年にも仲間がいるのか?どんな奴よーー?」


「えーっと、とりあえず呼んで来ますから、どんな奴かはアキトさんが会って確かめてください」


「りょーかい」


気の抜けるような返事をしながら手を振っているアキトを後目に、俺は三人を呼び出しに応接室を後にした。






数十分後。

やけに警戒するカイリちゃんとキーラを何とかして説得すると、冒険者ギルド前には、立派な馬車が用意されていた。


「おー!遅かったなぁ、少年。仲間の説得にでも手間取ったか?」


まるで俺の行動を見てきたかのようなセリフを口にしつつ、片手を上げてアキトが出入り口で出迎えてくれた。


隣にはクレールさんも居て、アルバ(エルフ)が俺のメンバーにいることに少し怪訝そうな顔をしたが、すぐに微笑を作って俺に声を掛ける。


「お疲れ様です、マティスさん。パーティメンバー、いつの間にかに一人増えてたんですね……。用意しておいた携帯食料では足りないかもしれないので、ちょっと買い出しに行ってきます。その間に顔合わせをお願いします」


「わかりました」


「では、失礼します」


グレディールとの話し合いの場にいたクレールさんからすれば、その奴隷であったはずのエルフが仲間になっていることに疑問の一つや二つ、出てきそうなものだが……。

俺たちの王国行きを優先してか、その言葉を呑み込んでくれたようだ。


俺はクレールさんの心遣いに感謝しつつ、お互いに自己紹介をさせようと口を開いてーー


「ーーはぁ?こんな弱いヤツひつようないッ、です!だいいち、わたしがこのパーティメンバーにいるのだから、ごえいなんていらないッ、です!」


カイリちゃんの一言で、その場の空気が台無しになったのを感じた。





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