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22.強襲

はい、無事に連続投稿ができました。

三話目は……ちょっと無理そうですが、頑張ってみます。



「……お兄様、大丈夫なのでしょうか?」


応接室から出た後、依頼を吟味する気にもなれなかった俺は昨日と同じ依頼書を持ってギルドを後にした。


その道中、今まで全く口を開かなかったキーラが突然漠然とした疑問を口にした。


「何が?」


「ですから、その……貴族に逆らった件についてです」


「あぁ……」


思わず勢いそのままあの部屋を出ていってしまったが、確かにあの態度は悪いかもしれない。

現代日本とは違って未だに封建制が成立している世界だ。

反逆罪だとか名誉毀損だとかで打ち首の刑に処される可能性は十分にあるだろう。


そんな有り得る未来を考えて、キーラは今不安に押し潰されそうになっている。

ちなみに、カイリちゃんは特に何も考えていない。

今も元気に蝶々なのか蛾なのかよくわからない飛行物体を追いかけ回して遊んでいる。


そして、俺もそこまで悲観的になってはいない。


「……なんだ、キーラはあの貴族に仕えたかったのか?」


「え?いえ、別にそんな事はないですけど……」


「だよな」


あいつはどう考えても奴隷をモノ扱いしていた。

エルフの奴隷は現状をどう思っているかは知らないが、少なくともあいつにやってキーラが幸せになるとは思えない。

まぁ、俺が幸せにできるか、というとそういうわけでもないんだが……。


ただ、あいつは何となく前世でいけ好かなかった連中に似ている。

つまりは、あんな奴にキーラみたいな可愛い娘をやるのは癪に障った、ということだ。


「あいつの側に居たくないんだったら、とりあえずは俺の側に居ればいいんじゃね?」


「で、ですが……そうなれば、貴族の怒りを買うことに……」


「大丈夫、大丈夫!なんか危なかったら俺たち(主にカイリちゃん)が守るから!なぁ、カイリ!」


俺が突然呼んだことにびっくりしたのか、尻尾を少し逆立てたが、しばらくして肯定の返事をくれた。


「俺たちはここに長居するつもりはないんだ。もし、問題になったら俺たち三人で獣人国まで逃げればいいんだよ」


「ん?なんだ、マティスはようやく獣人国のよさにきづいたのか、です」


「おう、そのときは道案内よろしくな」


「んっ、しかたないな、ですっ」


俺がキーラの頭を撫でながら、カイリちゃんにそう問うと彼女は元気よく肯定してくれた。


よしよし、これでもし道中に何か問題があったとしてもカイリちゃんが何とかしてくれるだろう。

獣人は嘘を嫌う人種だからな。


道中の安全を確約してもらった俺は、その後もテキトーにキーラを慰めながら森へと向かった。





討伐依頼は、討伐した魔物の数が多ければ多いほど報酬が増える仕組みになっている。

したがって、資金が不足している俺たちは大量に魔物を狩る必要がある。


そう考えた俺たちは、森の魔物たちが凶暴になると言われている夜ギリギリまで討伐を続けることにした。


「そろそろ帰るか?それなりに魔物も討伐できたし……」


そう言って、俺は魔物の討伐部位がたくさん入った麻袋を掲げる。


「そう、ですね……。そろそろ夕刻の鐘が鳴る頃ですし……これ以上森の中にいるのは危険かもしれません」


「ふぅ……そこの黒髪と同じいけんなのは気にいらねぇ、ですが、わたしもちょっとだけつかれたからベッドでねたい、です」


貴族が兵を率いて襲ってくるのでは、と心配していたキーラと蝶々を追いかけ回すぐらい余裕のあったカイリちゃんは、さすがに一日中魔物を討伐して疲れている様子だ。


「そうか……じゃあ、そろそろ引き上げーー」


ーーズシャアアアアッ!


引き上げようか、と口にする前に不可視の斬撃が俺の脇腹を抉った。


「ゴボッ!?」


「「マティス(お兄様)!?」」


鮮血を撒き散らし、無様に地面へと叩きつけられる俺を見て二人が一斉に声をかける。

その瞬間ーー


「ーー(エアリアル・ハンド!!!)」


遠くから声が反響し、透明な腕を象った。


俺の突然の負傷に戸惑っている二人は腕の存在に気付かない。


はやく、はやく俺が声を上げて知らせねばーー


声を出そうと腹に力を込めるが、ドボドボと血が流れるだけで一向に声が出ない。


「きゃあああッ!な、何ですか、コレは!?は、離してください!!!」


「ーー!?」


そうやって地面で這いつくばっているうちに、キーラが捕まった。


やはり彼女が狙いだったか……。

ということは、おそらくこれの首謀者はあの赤髪の男ってことになるが……まさかここまで短絡的な行動に出るとはな。

それとも、こんな人攫いの真似事みたいなことをしても許されるほど権力を持っているってことか?


身体がどう足掻いても動きそうにないので、必死に脳を働かせる。


すると、向こうから声が聞こえてきた。


「ふんっ、黒髪の奴隷は手に入れた。護衛は我についてこい。儀式の準備をするぞ。おい、エルフ!お前はあそこにいる死に損ない共を足止めしておけ。まぁ、もうじき死ぬだろうがなッ!」


ザッザッ、と地面を蹴る音が聞こえ、キーラを連れて奴らは去っていった。

キーラは透明な腕によって口元を閉じられているみたいで、悲鳴がもう聞こえない。


……仕方がないか。


「カイリ、俺は放っておいていいからキーラを連れ戻してきてくれ。俺は今から来るエルフをここで足止めさせておくから」


「で、でも、おまえがーー」


「大丈夫だっての。カイリ、俺の異能見てないのかよ。俺の力があればこんなの簡単に治るんだからさ」


「……」


だったら、何でさっさと治さないんだ。

そんな顔でこっちを見てくるカイリちゃんに対して、俺は何も答えられなかった。


何故なら、あくまでこれはーーー


そう考えたところで白髪のエルフが俺たちの前へと現れた。


「ほら、行けって!俺は何とかこいつを食い止めるからよッ!」


「わ、わかった、です」


俺の勢いに怯んだカイリちゃんは、少しの間逡巡してもう行方もわからなくなった赤髪の男の方へ向かった。

おそらく、キーラの匂いを追っているのだろう。


当然、足止めを命じられたエルフはカイリちゃんの行く手を阻もうと動くがーー


「ーー『金城湯池の施錠(ハードロック)』!!!」


俺は這いつくばりながら、がっしりとエルフの足を掴んだ。





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