18.ビッグラビット狩り競争
「ーーそれで?こんなところでなにをしてたのか?です」
今まで別行動をしていたカイリちゃんの疑問に、俺が掻い摘んで現状の説明をした。
「ふーん……なるほど、です。なら、このちかくにひそんでるビッグラビットから狩る、です」
そう言うと、草むらに向けて手刀を放った。
「えっ、いきなり何してーー」
ーーギュアッ!
俺が尋ねるよりもはやく、草ごと断ち切られた獣の悲鳴が鳴り響いた。
……ビッグラビットの悲鳴だった。
「……え?何でそこにビッグラビットが居るって分かったんだ?」
「ふんっ……おまえとはねんきがちがう!です」
「な、なるほど……」
不愉快とでも言わんばかりに鼻を鳴らすカイリちゃん。
お前の基準で物事を図るな、と先輩に怒られた前世を彷彿とさせた。
そんなカイリちゃんに態度にイラっときたのか、キーラが張り合うように声を上げる。
「別に貴方に言われるまでもなくビッグラビットがそこに潜んでいたのはわかっていました。むしろ、貴方が物音を立てながら狩ったおかげで近くにいた他のビッグラビットが逃げ出して手間になっているぐらいです」
だから、貴方の行動は有り難迷惑もいいところ、と言わんばかりにキーラはカイリちゃんの行動を批判する。
いや、まぁキーラからすれば自分を見捨てようとしていた奴だからあんまり好感度が高くないのはわかるけどさ……。
もうちょっと穏便に発言できなかったのか?
おかげでカイリちゃんのコメカミが引きつってるよ。
「ふぅーん、ニンゲンのくせにくちだけはまわるようだ、です。そんなにビッグラビットを狩るのがヘタならわたしにこんがんしろ、です。わたしが寛大なこころでかってきてやる、ですよ」
「貴方みたいに目上を敬うこともできないような人よりは私の方が弁舌巧みなのは当然です。貴方こそ狩りをするよりも先に言葉遣いの練習をした方が宜しいのでは?そうすれば、少しはその下手くそな敬語もマシになると思いますけど?」
カイリちゃんのストレートな煽りに対して、キーラの言動は回りくどいがその分ネチネチして嫌らしい物言いだ。ヘイトの稼ぎで言ったらキーラの方が若干上。
口喧嘩ではキーラに分がありそうな気がする。
カイリちゃんもそう思ったのか、口喧嘩を取りやめて行動で示すことにしたようだ。
「……くちではなんとでもいえる、です。せいかが伴っていなければただの妄言なのです。ちょうどいい機会だからおしえてやる、です。わたしとおまえのどちらがよりゆうのうなのかを、です」
「ふふっ、そんなあからさまに言論から避けるような真似をして……知能の低さが透けてみえます。……が、良いでしょう。どちらがお兄様のお役に立てるか白黒つけるべきだと私も思いますので」
「エモノはビッグラビット、です。時間はひが暮れるまでとする、です。マティス!おまえはさきにラージワームを狩れ、です」
「申し訳ありません、お兄様。私も少々この場を離れることになりますので、もう一つの依頼についてはお願いします」
言い方は違えど、どちらも言っている内容は同じ。
つまりは俺一人でラージワームを倒せ、ということだ。
まぁ、せっかく三人もいるんだし……手分けして討伐に向かった方が色々と効率的なのは確かだよな。
「わかった。集合場所は、ギルド近くにある広場にしよう。二人とも気をつけてな」
「……わかってる、です」
「承知しました、お兄様」
各々、返事をした後討伐部位を持ち歩くための麻袋を持って森の奥へと走り去っていった。